激務は経験すべきか? ~営業職としての視点から考察~

【激務】と聞くと、「休日なし」「ブラック企業」「やりがい搾取」などネガティブな言葉が頭をよぎります。

「激務は経験した方がいいのか」「激務を経験するメリットとデメリットは何か」の一つの答えを、営業職として十数年間、その中でもブラックベンチャー企業2社で勤務した経験からお話しします。

この記事を読んでいる方の中には、「激務」という言葉を聞いただけでめまいがしそうになる方もいるかもしれません。

トレテク    久保埜

人によって激務のイメージは異なります

目次

組織における「激務」の変化

2010年代後半から働き方改革が浸透しており、今の時代は昔のような激務の職場環境はだんだん少なくなってきています。激務を経験した経験のある人は、おそらく少なくなってきていると思います。

組織内の先輩、上司、経営者もうかつに激務につながることを指示できません。

そのように、周りからきつい仕事の指示がなくなった代わりに登場してきたのが、「セルフ激務」という新しい形態です。

「セルフ激務」とは、自分で家に帰った後も深夜まで仕事をしたり、休日も仕事をしたりと、自分自身で激務の環境を作り出すことです。

一方、30代・40代の世代が経験した激務は「やらされ激務」といえるでしょう。死ぬほど働かされて、結果を出せなければ厳しく叱責されるような環境です。

この「セルフ激務」と「やらされ激務」は本質的に異なります。

本当の激務とは、「やらされ激務」のように、自分の意志では統制できないものです。

ベンチャー企業で訳がわからないまま営業していた1年目、2年目のことを思い返すと、あのレベルの業務量と精神的プレッシャーは、自分の意欲だけで乗り切れるものではなく、常にどやされる覚悟で臨んでいました。

セルフ激務は、自分の将来のために頑張るという点では尊いことですが、あくまで自分のペースで行っているという点で、本当の意味での激務とは言えないでしょう。

激務のメリットとデメリット

激務の意味を考える上で、私は二つの側面から分けて考えるべきだと思っています:

  • マインド面(精神面)
  • 能力・スキル面

マインド面(精神面)について

マインド面とは、20代で社会人になったばかりの頃、会社や仕事ができるかできないかの競争にさらされる中で感じる「不安」「恐怖」「焦り」「プレッシャー」などの感情に関する部分です。

お客様が怒っているときの対応方法など、社会を生き抜くために必要なメンタル面のことを指します。

激務の最大のメリットは、このマインド面での成長です。

簡単に言うと、若い時に激務を経験した人は、恐怖が薄れていきます。自分の意志ではできないレベルの「やらされ激務」を経験することで、外圧への耐性が上がるのです。

例えば転職時の面接で「うちは厳しいよ」と言われても、「全然大丈夫です」と思えるようになります。

つまり、能力やスキルがなくても、「なんとかやっていけるだろう」という自信が身につくのです。

どんな相手が来ようが、何を言われようが、どんな厳しい環境でも耐えられるという強さが生まれます。

能力・スキル面について

一方で、激務が能力やスキルの向上につながるかというと、私はあまり意味がないと考えています

なぜなら、激務の状態では、体力的にも精神的にもギリギリの状態で、頭がオーバーヒートしているような状態になります。そんな状況では、自分で考える余地がなく、ただ「やらされて」「やらなければならない」という状態に陥りがちです。

能力やスキルを向上させるには、少し余裕がある状態で働き、「昨日のアポイントメントはこうだったな」と振り返ったり、今後の自分の能力向上について考えたりする時間が必要です。激務の中ではそんな余裕はありません。

例えば、私が人材系ベンチャー企業で営業職として4年間働いた経験を持っていますが、この企業を辞めた人に「働いて良かったことは何ですか?」と聞いても、「人材系の深い専門的な知識や、営業手法としての切り返しのトークと営業の攻め方の幅を学びました」とは誰も答えないでしょう。

代わりに、「つらくてくじけそうだったけど、おかげで怖いものがあまりなくなった」という言葉をもらいます。

40〜60歳代が言う「激務はやった方がいい」の真意

今の40〜60歳代の方々が「若いうちに激務を経験しておかないと、仕事ができるようにならない」と言うことがありますが、これは少し乱暴な意見です。

激務を経験したからといって、必ずしも仕事ができるようになるわけではありません。

むしろ、激務経験によって得られるのは、マインド面でのつまずきにくさです。

世の中には、能力やスキルはあるのに、不安や恐怖でつまずいてしまう人がたくさんいます。「ここが怖いから行けない」という理由で、自分の可能性を狭めてしまうのです。

外圧耐性が弱すぎると、マインドやメンタルの部分でつまずいてしまい、迂回ルートしか歩めなくなります。しかも、当人はそれが迂回ルートだとすら気づいていないことがあります。

営業で例えるなら、飛び込み営業という手段をあえて考えないようにし、引き合い営業をこなしているだけで「もう他に売り上げを取ってくる方法がない」と思い込んでしまうようなものです。

意味のない激務もある

私は新卒時代から様々な種類の激務を経験してきましたが、後々の人生に繋がったものもあれば、「時間返せ」と思うほど意味のないものもありました。

激務を「長時間、厳しいプレッシャーのかかる状態で何かをやる」と一括りにするのではなく、「意味のある激務」と「意味のない激務」を区別することが大切です。

私が経験した「意味のない激務」の例を紹介すると、

「あの課長に怒られないようにこの日報をこう書いて…」

「この社内資料には〇〇さん他10名への感謝の部分を厚めに書いて…」

というような、結果的に激務になっているケースです。こういった激務は本当に時間の無駄で、後々振り返っても呆れるばかりです。

適切な目的を持った激務であれば意味がありますが、このような意味のない激務は、激務の本来のメリットである「恐怖がなくなる」という効果にも繋がりません。注意が必要です。

ですから、激務賛成派の中年でも、適切な激務を経験して恐怖がなくなった人と、意味のない狭い範囲での激務を経験した人では、激務に対する考え方が異なるのは当然です。

マインドで開拓していくタイプの人

もう一つ、激務賛成派に多いパターンとして、「マインドで開拓していく」タイプの人がいます。

先述した通り、激務は能力やスキルを身につけるためには向いていないと思います。しかし一方で激務時代に培った「外圧耐性」や「恐怖がなくなる」というマインドを使って、自分の道を切り開いていくことは可能です。

このルートで成功した人は、「あの激務の経験が今に繋がっている」と肌で感じているでしょう。私自身も、全く未経験の営業職への転職や個人事業など、能力やスキルだけでなく、マインドで開拓していく道を選んできました。

だからこそ、激務には「恐怖がなくなる」という非常に大きなメリットがあると感じています。私は結構激務賛成派に近いかもしれません。

世の中には様々な選択肢がありますが、能力やスキルだけでなく、恐怖を感じないことが選択肢を広げる上で重要だと経験から感じています。

激務を肯定する人は、このようなルートで生きてきた人が多いのではないでしょうか。

経営者としての視点からみた激務の価値

経営者として見ると、激務経験の価値はさらに明確になります。

会社を経営する上では、日々予期せぬ困難や課題に直面します。売上が急落したり、重要な取引先が離れたり、優秀な従業員が退職したりと、常にプレッシャーと不確実性の中で決断を下さなければなりません。

若い頃に激務を経験していると、このような状況に直面しても「なんとかなる」という基本的な自信があります。これは、営業の世界でも同様です。

トップセールスパーソンの多くは、かつての厳しい営業経験から学んだ「どんな状況でも前に進む力」を持っています。

ただし、企業を成長させるためには、単なる精神力だけでなく、適切な戦略的思考や分析力も必要です。

ここで重要なのが、激務経験から得た「恐れない心」と、余裕のある環境で培った「戦略的思考力」のバランスです。

まとめ:激務経験の活かし方

激務は経験すべきか?この問いに対する答えは、個人の目標やキャリアパスによって異なります。

私の経験から言えることは、以下の点です:

  1. 激務経験の本当の価値は「マインド面での成長」にある
  2. 能力やスキルを伸ばすためには、少し余裕のある環境の方が適している
  3. すべての激務に意味があるわけではなく、目的のない激務は避けるべき
  4. 激務で培った「恐れない心」は、営業職や経営者として道を切り開く上で大きな武器になる

最終的には、激務か否かという二択ではなく、自分のキャリアのどの段階で、どのような激務を経験し、そこから何を学ぶかが重要です。

営業として、もしくは経営者として成功するためには、時に激務を恐れず受け入れる勇気と、その経験から適切に学ぶ知恵が必要なのかもしれません。

トレテク    久保埜

皆さんも自分のキャリアを振り返り、もし激務を経験していたの
でしたら、それをどう活かせるか考えてみてはいかがでしょうか。

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トレテク 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

外資系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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特に、商談やプレゼンテーションという交渉の改善に重点を置く。

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