「新規開拓」と「既存顧客」の営業スタイルは全く異なる【新規開拓概要編】

「佐藤君、来期から新規開拓チームのリーダーを頼む。君しかいないんだ」
経営者であるあなたは、社内でもトップクラスの成績を誇る20年目のベテラン、佐藤にそう告げました。彼は、既存のお客様からの信頼がとにかく厚い。どんなに難しい要望にも誠実に応え、長年の付き合いの中から大型の契約を何度もまとめてきた、まさに「エース」と呼ぶにふさわしい人材です。
会社の持続的な成長のためには、新規開拓による売上拡大が不可欠。その重要なミッションを、最も信頼する彼に託したのです。あなたも、そして佐藤自身も、きっとうまくいくと信じていました。
しかし、3ヶ月後、あなたの耳に入ってきたのは、信じられないような報告でした。 「佐藤さん、今月も新規の受注、ゼロです…」
あれほど顧客の心を掴むのがうまかった佐藤が、新規の見込み客には面白いように断られている。得意だったはずの人間関係づくりも空回りし、商談は2回と続かない。会議室で見る彼の背中は、以前よりもずっと小さく見えました。
「なぜだ…? あんなに『できる営業』だった彼が、どうして…?」
この記事は、まさに今、このような壁にぶつかっているすべての経営者とマネージャーのために書きました。この記事を読めば、その原因が、彼の能力ややる気の問題では決してない、という残酷な真実がわかります。
そして、あなたの会社が「新規開拓」という新しい市場で勝利を掴むために、まず何をすべきかが明確になるはずです。
エースのプライドが砕け散る瞬間 ~「誠実さ」が通用しない世界
少し、心を折られたエース営業・佐藤さんの頭の中を覗いてみましょう。
彼は、これまでと同じように、誠実に、真摯に、新規の見込み客と向き合おうとしました。まずは自分という人間を知ってもらおうと、何度も足を運び、丁寧に会社の紹介をします。関係性ができれば、きっと道は開ける。20年間、彼が信じてきた成功法則です。
しかし、新規の顧客は、そんな彼に冷たい言葉を浴びせます。 「何度も来ていただかなくて結構です。で、御社は私たちの課題をどう解決してくれるんですか?」「あなたの人柄は分かりましたが、それとこれとは話が別でして」「結論からお願いします。お忙しいので」
2回、3回と会うことすら叶わない。やっと掴んだ商談の席では、「第一印象」だけで値踏みされ、論理的な提案ができないと見なされると、すぐに扉を閉ざされてしまう。これまで彼が武器にしてきた「時間をかけた信頼構築」や「泥臭いけれど誠実な対応」は、全く評価されません。
「俺のやり方は、もう古いんだろうか…」
長年培ってきた自信とプライドは、ガラスのように砕け散ります。この状況を見て、経営者であるあなたは、「最近の若い顧客はドライだからな…」と嘆くかもしれません。しかし、問題の本質はそこにはありません。
私たちは、根本的な勘違いをしています。それは、「営業」という仕事を、ひとつの競技だと捉えてしまっていることです。しかし、真実は違います。
既存顧客への営業と、新規開拓営業は、例えるならマラソンと短距離走ほど、”全く型の異なるスポーツ”なのです。
新規開拓で勝つために知るべき「3つのルールの違い」
マラソンの名ランナーにに、いきなり100m走をやれと言っても、活躍できるはずがありません。彼が無能なのではなく、ルールと求められるスキルが全く違うからです。あなたの会社で起きているのも、全く同じことです。では、具体的に何が違うのか、見ていきましょう。
1. 戦う場所が違う:「関係性の土俵」と「提案力のリング」
既存顧客は、あなたの会社や担当者と、すでに長い歴史を共有しています。「〇〇社の佐藤さん」というだけで、ある程度の信頼があります。少々説明が下手でも、「まあ、あの人が言うなら」と話を聞いてくれる土壌があるのです。これは、いわばホームグラウンドでの戦いです。
一方、新規開拓は完全なアウェイです。相手はあなたのことなど全く知りませんし、興味もありません。そんな相手に「まずは関係性から…」は通用しません。
「この会社(この人)は、我が社の問題を解決してくれるのか?」という一点だけでシビアに判断されます。ここで求められるのは、人柄の良さよりも、課題を的確に射抜き、解決策を論理的に提示する「提案力」なのです。
2. 時間の流れが違う:「マラソン」と「100m走」
既存顧客との取引は、まさにマラソンのようなものです。半年、1年という長いスパンで関係を深め、少しずつ信頼を勝ち取り、大きな契約に繋げていきます。焦る必要はありません。
しかし、新規開拓は100m走です。用意ドン、の号砲と共に、最初の数秒で勝負が決まります。銀行や証券、複合機メーカーの営業がなぜあれほどまでに強いと言われるのか。それは、彼らがこの短期決戦に特化したプロフェッショナルだからです。
限られた時間の中で、相手の課題を的確にヒアリングし、最適な提案を行い、決断を促す。そこには、ある種の「押しの強さ」すら求められます。悠長に構えている暇などないのです。
3. 評価される人間性が違う:「第三印象の誠実さ」と「第一印象のキレ」
「あの人は口下手で不器用だけど、何かあるとすぐに飛んできてくれるし、本当に誠実でいい人だよ」。これは、既存顧客との関係性の中で最高の褒め言葉です。
これは「第三印象」と呼べるものだと考えます。数ヶ月、数年と付き合う中で、じわじわと伝わる人間的な魅力のことです。
しかし、新規開拓の現場では、この第三印象が伝わる前に勝負が終わってしまいます。ここで重要なのは、パッと見た瞬間の「第一印象」です。
パリッとしたスーツ、自信に満ちた表情、淀みない話し方。「この人は、デキるな」と相手に一瞬で思わせる“切れ者感”こそが、相手の心を開く鍵になります。悲しいかな、「人は見た目が9割」という言葉が、最もシビアに適用される世界なのです。
あなたの会社のエースは、「マラソンランナー」ですか?「100mランナー」ですか?
ここまでお読みいただき、あなたの会社のエース・佐藤さんがなぜ苦しんでいたのか、その理由が見えてきたのではないでしょうか。
彼は、マラソンの名ランナーでした。しかし、会社は彼に100m走の型を渡すことなく、「とにかく1位を取ってこい」と、いきなりの100mのフィールドに放り込んでしまったのです。これでは、結果が出るはずがありません。
経営者である、あなたの最初の一歩。それは、決して「気合が足りない!」と叱咤激励することではありません。まずは、あなたの会社の営業担当者一人ひとりが、本当はどちらの型の選手なのかを見極めることです。
マラソン選手に、100m走で自己ベストを出せと要求するのは、ただの無策です。 新規開拓という新しい競技に挑むのであれば、それに合った新しいルールを教え、新しいスキルを身につけさせるトレーニングが不可欠なのです。
「既存のエース」を「新規開拓のエース」に進化させるために
「競技が違うことは分かった。では、具体的にどうすればいいんだ?」 「既存顧客で実績を上げてきた、うちのベテランたちを、どうやって新規開拓ができるチームに変えていけばいいのか?」
そのように思われた経営者の方も多いでしょう。 野球選手をサッカー選手に育てるためには、走り込みの仕方から、ボールの蹴り方、戦術の理解まで、全てをゼロから教え直す必要があります。営業も全く同じです。
- 第一印象で信頼を勝ち取るための「見た目」の作り方
- わずか2回の商談で、相手の懐に飛び込むためのヒアリング術
- 相手に「この提案しかない」と思わせる、論理的なプレゼンテーションの構成法
- 相手の決断を後押しする、心理学に基づいたクロージングテクニック
これらはすべて、既存顧客メインの営業とは全く異なる、新規開拓に特化した「技術」です。
もし、あなたの会社が本気で新規開拓に取り組み、未来の売上の柱を築きたいとお考えであれば、ぜひ一度ご相談ください。私たちは、貴社のエースを“畑違い”の競技で苦しませるのではなく、新しい競技のトッププレイヤーへと進化させるための、具体的な戦略とトレーニングプログラムをご提供します。
まずは、60分間の無料オンライン相談で、貴社の現状の課題と、目指したい未来について、お聞かせください。
また、日々の営業活動のヒントや、コンサルティングの現場からの気づきなどを、Instagramでも発信しています。こちらも、ぜひあなたのチーム育成の参考にしてください。
あなたの会社が、新しい競技の王者になる。そのための挑戦を、私たちが全力でサポートします。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。