顧客が「情報収集するタイミング」に注目 「なぜ、今」を解き明かす営業の質問戦略

「せっかくアポイントが取れたのに、お客様から開口一番、『今日はとりあえず情報収集だけなんで』と言われてしまった…」

多くの経営者や営業マネジャーが、部下からの報告で一度は聞いたことのある、あの脱力する一言。

やっとの思いで漕ぎ着けた商談の場で、いきなり分厚い壁を作られてしまう。これでは、目標とする売上達成など夢のまた夢。営業担当者のモチベーションは下がり、会社の雰囲気も停滞してしまう…。

この記事は、そんな「情報収集」という名の鉄壁を前に、なすすべなく敗退していく営業チームの現状を憂う、すべての経営者のために書きました。

この記事を最後まで読めば、なぜ多くの営業が「情報収集客」を前に空回りするのかが分かり、その状況を一変させ、むしろ大型の契約に繋げるための、極めて具体的で、明日からすぐに使えるヒアリングの技術が手に入ります。

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目次

お客様の「今日は情報収集で…」に対する、2つの失敗パターン

商談の席に着くなり、お客様が口にする「今日は情報収集だけなので、手短にお願いします」。この一言が、多くの営業担当者を思考停止に陥らせます。そして、良かれと思って取った行動が、ことごとく裏目に出てしまうのです。

よくある失敗は、大きく分けて2つあります。

一つ目は、「言われるがままの“御用聞き”になってしまう」パターン

お客様の「情報収集だけ」という言葉を真に受け、気を遣ってしまい、「では、要点だけ…」と、用意してきた資料を駆け足で説明し、早々に退散してしまう。お客様の忙しそうな雰囲気に圧倒され、「これ以上踏み込んではいけない」と、自らチャンスを放棄してしまうのです。

これでは、ただのパンフレット配達人と何ら変わりません。貴重な時間と交通費をかけて、一体何をしに行ったのか。これでは売上は生まれません。

二つ目は、その逆。「ムキになって“売り込み”をかけてしまう」パターン

「情報収集だなんて言わせない!」とばかりに、堰を切ったように自社の製品やサービスの魅力をまくしたてる。「とは言いましても、御社にはこれが必要なはずです!」「何とかご提案させていただけませんか!」と熱意をぶつけるものの、お客様の目はどんどん冷めていく…。

結果、「グイグイくるな、この営業は…」と警戒され、二度と連絡が来ることはありません。

どちらのパターンも、結局は「では、いただいた情報をもとに検討して、必要ならまたご連絡します」という、お決まりのセリフで締めくくられることになります。

これこそが、永遠に受注に繋がらない繰り返しの営業。あなたの会社の貴重なリソースが、日々このループの中で浪費されているとしたら、経営者として看過できる問題ではないはずです。

「情報収集客」を優良顧客に変える、たった3つの質問戦略

では、どうすればこのループから抜け出せるのでしょうか。答えは、驚くほどシンプルです。それは、お客様が「なぜ、今、この時間を使っているのか」という本当の理由を掘り下げることに他なりません。

「情報収集」という言葉の裏には、必ず何かしらの「背景」や「動機」が隠されています。それを巧みに引き出すための、3つの戦略的アプローチをご紹介しましょう。

戦略①:「外から見ると順調そうに見えますが…」と切り出す

多くの営業は、会社紹介もそこそこに「何かお困りごとはありませんか?」と聞いてしまいます。これでは、「いえ、特にありません。情報収集ですから」と返されて終わりです。

そうではなく、こう切り出すのです。

「本日お時間をいただきありがとうございます。事前に御社のことを拝見しましたが、〇〇の分野で素晴らしい実績をお持ちですよね。
正直、外から見ている限りでは、弊社のようなサービスは必要ないほど、とても順調そうにお見受けします(まずはお客様の実績を褒める)。にもかかわらず、なぜ今回、わざわざお時間をいただけたのでしょうか?」

こう言われると、相手はどう感じるでしょうか。特に日本人であれば、高い確率で「いやいや、そんなことないですよ!」と謙遜の言葉が返ってきます。そして、その後に続くのは、「実は、〇〇の点で少し課題がありまして…」という、今まで隠されていた本音なのです。

この質問のすごいところは、うまくいけば商談開始わずか3分で、相手の深い課題のヒアリングに入れてしまう点です。

「会社概要ですが…」「弊社のサービスは…」といった、お客様が聞き飽きた前置きをすべてすっ飛ばし、いきなり本丸に迫ることができる。これができるかどうかで、その後の商談の質は天と地ほど変わってきます。

戦略②:課題の“中身”ではなく“時間軸”を掴

課題の本音を引き出せたとしても、焦ってその「中身」に踏み込みすぎるのは悪手です。「その課題について、もっと詳しく教えてください!」と前のめりになっても、お客様はうまく説明できません。

お客様自身も、自分の会社の課題の全容をうまく言語化できていないケースがほとんどです。そんな手探りの状態で的確な提案などできるはずもなく、結果として見当違いなアピールに終始してしまいます。

僕がここで注目すべきだと考えているのは、課題の「中身」ではなく、「時間軸」です。「いつからその状態なのか」という時間軸は、紛れもない事実として存在します。

課題をヒアリングする際には、次の2つのどちらに当てはまるのかを特定するだけで十分なのです。

  1. ずっと前から、その課題で困っているのか
  2. ごく最近になって、その課題に困り始めたのか

たったこれだけです。しかし、この違いを理解するだけで、その後のアプローチは劇的に変わります。なぜなら、課題の発生時期によって、その背景にある「構造」が全く異なるからです。

課題という“魚”を釣りたいのであれば、まずその魚が「ずっと昔からその川に住んでいるのか」、それとも「最近になって別の川から流れてきたのか」を知るべきだ、ということです。

戦略③:「時間軸」で場合分けし、最適な処方箋を提示せよ

時間軸を特定できたら、いよいよ案件化に向けた具体的なアプローチに入ります。ここからは、冷静に状況を分析し、最適な一手を打っていきます。

ケースA:「ずっと前から困っていた」場合

この場合は、さらに2つの可能性に分かれます。「過去に対策を打ったことがあるか、ないか」です。

A-1:過去に何らかの対策を試したが、うまくいかなかった

このお客様は、課題解決への意欲は高いものの、過去の失敗経験から新しい提案に懐疑的かもしれません。

ここで重要なのは、過去のやり方を絶対に否定しないことです。目の前の担当者が、その失敗した施策の推進者だった可能性があるからです。

「そのやり方をなぜ採用されたのですか?」「どういう点が良かったですか?」と、まずは肯定的に話を聞きます。その上で、「逆に、どの点がうまくいかなかったのでしょうか?」と深掘りする。

その「うまくいかなかった理由」こそが、我々が提案すべき核心部分です。「過去の良かった点はそのままに、うまくいかなかった部分を弊社ならこう解決できます」と伝えれば、お客様が話を聞いてみようという気持ちになるのは、当然の流れと言えるでしょう。

A-2:ずっと困っていたが、対策を打てていなかった

このケースの背景には、ほぼ間違いなく「リソース不足」か「ノウハウ不足」があります。つまり、やりたい気持ちはあっても、「人や時間が足りない」か「そもそもやり方が分からない」のです。まずはどちらの要因が強いのかを探りましょう。

リソース不足であれば、「その面倒な部分は、まるっと弊社にお任せいただけますよ」という提案が響きます。ノウハウ不足であれば、「弊社にはその課題を解決するための専門知識と実績があります」と伝えることで、一気に案件化の道が開けます。

営業として、お客様の「できない理由」を取り除いてあげるのです。

ケースB:「ごく最近になって困り始めた」場合

最近発生した課題は、その「発生源」がどこにあるのかを探ることが重要です。

B-1:上層部や他部署からの指示で動き出した(トップダウン)

「社長から言われまして…」「役員からの特命で…」といったケースです。これは営業にとっては非常に追い風です。なぜなら、目の前の担当者には上司への「報告責任」があるからです。彼らは、何かしらのアクションを起こし、その結果を報告しなくてはならない立場にあります。

ですから、我々はその「報告書に書ける材料」を提供してあげればいいのです。「弊社の提案を、ぜひ報告の材料としてご活用ください」というスタンスで進めることで、スムーズに検討の土台に乗せることができます。

B-2:目の前の担当者自身の問題意識で動き出した(ボトムアップ)

実は、これが最も難しいケースです。担当者個人の問題意識から始まっているため、会社としての緊急性は低い。「今すぐ解決しなくても、誰にも怒られない」からです(いわゆるNice to have)。 ここで焦って売り込んでも、まず受注には至りません。

この場合に営業が取るべき唯一の道は、その問題について、一緒に考えてくれるパートナーになる」ことです。

本人の問題意識をとことん深く聞き、共感し、「その課題、放っておくと将来大変なことになりますね。私と一緒に解決策を探りませんか?」と、伴走者としてのポジションを確立する。この信頼関係こそが、未来の契約への唯一の架け橋となります。

まずは「そのお悩みはいつからですか?」と聞いてみる

リアクションの薄いお客様に対する、新しいアプローチのヒントは掴めたでしょうか?

大切なのは、知識として知ることではなく、実際の現場で試してみることです。とはいえ、いきなり全てを実践するのは難しいかもしれません。

でしたら、まずは、たった一つの、しかし最も重要なことから始めてみませんか。

次に、お客様との商談で、「情報収集です」と言われたら、あるいは課題の話になったら、慌てて製品説明を始めるのではなく、こう問いかけてみてください。

「ちなみに、そのお悩みは、いつからですか?」

この、たった一言の「時間軸を問う」という小さな勇気。それが、一方通行だったコミュニケーションの流れを変え、お客様の心の奥底に眠る、本当の物語を引き出す、大きなきっかけになるはずです。

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あなたの会社の営業担当者は、おしゃべりで分かりやすいお客様とだけでなく、物静かで、「情報収集」という壁を作るお客様とも、冷静かつ効果的に対話し、信頼関係を築くことができているでしょうか?

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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