「うちには昔から付き合いのある会社が」と言うお客様から、提案の機会を頂く方法

「うちはもう、昔から付き合っている会社があるから…」

新規開拓の営業現場で、この鉄壁の一言に心を折られていませんか? 長年の信頼関係という見えない壁を前に、すごすごと引き下がるしかない。そんな悔しい思いを、あなたやあなたの会社の営業担当者は、何度も経験してきたかもしれません。

しかし、もしその鉄壁に見える関係性に、実は「隙間」があり、その隙間を見つけ出す簡単な質問があるとしたら…?

この記事は、そんな難攻不落に見える顧客との契約を掴み取り、会社の売上を劇的に変えたいと願う、すべての経営者と営業マネジャーのために書きました。

この記事を読めば、競合他社との「長年の付き合い」という言葉を、むしろ大きなチャンスに変えるための、具体的かつ実践的なアプローチが分かります。

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目次

心が折れる瞬間…「長年の付き合い」という名の絶望の壁

商談ルームの空気は、決して悪くない。むしろ、和やかですらある。あなたは、目の前の担当者と笑顔で言葉を交わし、自社サービスの魅力について、手応えを感じながら説明を進めています。

「これは、いい感触だ。きっと前向きに検討してもらえるはず…!」

確かな手応えを感じ、クロージングへの道筋が見え始めた、その瞬間。担当者は、申し訳なさそうな、しかし、どこか揺るぎない表情で、こう口を開きます。

「いやあ、素晴らしいサービスですね。よく分かりました。ただ…うちはもう、10年以上付き合っている会社さんがありましてね。そことの関係もあるので、すぐに切り替えるというのは、ちょっと難しいんですよ」

この一言が飛び出した瞬間、あれほど明るかった商談ルームの空気が、一瞬で凍りつきます。さっきまでの手応えは蜃気楼だったかのように消え去り、目の前には「10年」という、あまりにも高く、分厚い壁がそびえ立っている。

焦ったあなたは、「いえ、切り替えていただかなくても、まずはセカンドオピニオンとしてでも…」「当社のサービスには、既存の会社にはない、こういうメリットが…」と、矢継ぎ早に言葉を重ねます。

しかし、話せば話すほど、相手の表情は曇り、「まあ、資料だけ頂いておきますね」という、事実上の「お断り」の言葉を引き出すだけ…。

会社に戻り、上司に報告する際の、あの気まずい空気。「長年の付き合い、か…それじゃあ仕方ないな」。その言葉は慰めでありながら、同時にあなたの無力さを突きつけてきます。

こんなことが続けば、目標とする売上の達成など夢のまた夢。営業担当者の自信とモチベーションは、音を立てて崩れ去っていくのです。

「長年の付き合い」という鉄壁を突き抜ける、4つの戦略的ステップ

しかし、諦める必要は全くありません。そもそも、考えてみてください。今の取引先に完全に満足しているのであれば、お客様は、わざわざあなたと会う時間を作るでしょうか?

「話を聞いてみよう」と思った時点で、そこには必ず何らかの「理由」が存在するのです。その理由を炙り出し、受注へと繋げるための4つのステップをご紹介します。

1.「ファン心理」を徹底的に学び、懐に入る

多くの営業担当者は、競合の存在を知ると、すぐに「自社の方が優れている点」をアピールしようと躍起になります。しかし、これは最悪の一手です。

長年付き合っている会社がある、ということは、お客様はその会社の「ファン」である可能性が高い。ファンの前で、その対象を批判したり、比較して優劣をつけようとしたりすれば、どうなるかは火を見るより明らかでしょう。

「そんなに競合のメリットを聞いたら、後から入り込みにくくなるのでは?」

若手の営業担当者なら、そう不安に思うかもしれません。気持ちは分かります。しかし、目的は「論破」することではありません。「理解」することです。

「〇〇社さんとは、いつ頃からお付き合いが始まったのですか?」 「10年以上も関係が続くというのは、本当にすごいことですね。差し支えなければ、どういった点が良いと感じて、使い続けていらっしゃるのか、ぜひ教えていただけませんか?」

このように、相手の選択を尊重し、「あなたの会社のロイヤルカスタマー戦略を学びたい」という姿勢で、純粋な興味として質問を重ねていくのです。お客様は、自分の選択(取引先の選定)が正しかったと認められたいもの。嬉々として、その理由を語り始めてくれるはずです。

このヒアリングは、競合の強みを知る絶好の機会であると同時に、お客様との心理的な距離をぐっと縮めるための、極めて重要なプロセスなのです。

2.「満足度」を数字で聞き出し、“減点ポイント”を特定する

「ちなみに、今の会社さんに対する満足度は、100点満点で言うと何点くらいですか?」

競合の好きなところを気持ちよく語ってもらった後、少しだけ間を置いて、この質問を投げかけてみてください。多くのお客様は、少し考えた後、「うーん、そうだなあ…80点とか、85点くらいかな」といった答えを返してくれます。

抽象的な満足度を具体的な数字にすることで、議論の土台が生まれ、お客様自身も課題を言語化しやすくなります。80点台であれば、十分すぎるほどのチャンスがあります。

もしここで「98点!」とか「100点満点だよ!」という答えが返ってきたら、残念ながら、今回は潔く諦めた方が賢明かもしれません。しかし、私の経験上、ほとんどのケースで80点台の答えが返ってきます。

考えてみれば当然です。100点満点なら、わざわざ他社の話を聞く必要がないのですから。

「85点ですか!非常に高い評価ですね。その85点の理由が、先ほどお話しいただいた〇〇や△△といった点なのですね」

まずは、点数の高さ(=良い部分)を改めて肯定し、相手に敬意を示します。その上で、本題に入ります。

「ありがとうございます。ちなみに、満点の100点に足りない“15点”というのは、具体的にどういった部分になるのでしょうか?」

この質問こそが、鉄壁に見えた壁の「隙間」をこじ開ける、強力なドリルになるのです。

お客様は、この質問をされることで、今まで漠然と感じていた「何か物足りない部分」や「ちょっとした不満」を、初めて言語化しようと試みます。そして、その足りない15点こそが、あなたの会社が提案すべき、最大のチャンスとなるのです。

3.魔法の質問で、顧客と競合の「本当の関係性」を暴く

「その“足りない15点”について、今お付き合いされている会社に伝えたことはありますか?」

と質問しましょう。これは、このアプローチにおける、最も重要な「キークエスチョン」です。この質問に対するお客様の答えは、大きく2つのパターンに分かれます。そして、そのどちらに転んでも、あなたにとってはチャンスしかありません。

この質問への回答一つで、お客様と競合の関係性の「本当の深さ」が分かり、自社が取るべき営業戦略が明確になるからです。

パターンA:「伝えました。伝えたんですけど、なかなか改善されなくて…」

これは、最大のチャンスです。不満を伝えているにもかかわらず、それが叶えられていない。その理由は、競合のサービス仕様の問題かもしれませんし、単に対応力や技術力が不足しているのかもしれません。

いずれにせよ、お客様のニーズと、競合が提供できる価値の間に、明確なギャップが生まれている証拠です。

「そうだったのですね。その点、当社であれば〇〇という形でお力になれるかもしれません。一度、ご提案の機会を頂けませんか?」

このように、課題解決者として、堂々と提案の機会を要求することができます。

パターンB:「いや…まだ、そこまでは伝えていないんですよね」

一見すると、関係性が良好だからこそ、不満を言っていないように聞こえるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか?

本当に信頼し、パートナーとして認めている相手であれば、「もっとこうしてくれたら嬉しいんだけど」と、率直な改善要望を伝えるはずです。

それを伝えていないということは、裏を返せば「言っても無駄だと思っている」「そもそも、そこまで深い関係性を築けていない」ということの現れなのです。

「長年の付き合い」という言葉とは裏腹に、両者の間には、まだ遠慮や諦めといった壁が存在しています。であれば、あなたがその壁を壊し、お客様が本当に望んでいることを実現するパートナーになれる可能性が、十分に残されているのです。

4.「できない約束」はしない。「代替案」こそが誠実さの証

お客様が口にする「足りない15点」が、時として、あなたの会社にとっても実現が難しい「高望み」であるケースは少なくありません。

ここで多くの営業担当者は、2つの過ちを犯します。受注したいがために、つい「できます!」とできない約束をしてしまうか、「社内で確認します」と言ったきり、音沙汰がなくなるか、です。お客様は、こうした不誠実な営業に心底うんざりしています。

経営者の皆様にこそ、知っていただきたい。お客様が営業担当者に求めている「誠実さ」のハードルは、実はそれほど高くありません。

無理な要望に対して、正直に「現状では難しいです」と伝え、その上で

「ただ、もしよろしければ、お客様の課題を解決するために、別の角度からこういうアプローチはいかがでしょうか?」

と、真剣に代替案を考えてくれる。たったこれだけで、お客様は「この人は信頼できる」と感じてくれるのです。すぐに「できます」と言うのではなく、

「まずは、御社のその課題をひっくり返すところから、真剣に考えさせていただけませんか?」

と、お客様の課題に深く向き合う姿勢を見せること。それこそが、競合との10年の付き合いよりも、はるかに強い信頼関係を、たった一度の商談で築き上げるための秘訣なのです。

まずは「100点満点で何点ですか?」の質問から

さて、競合の牙城を崩すための新しい視点は見つかったでしょうか?

大切なのは、知識として知ることではなく、実際の現場で試してみることです。とはいえ、いきなり全てを実践するのは難しいかもしれません。

でしたら、まずは、たった一つの、しかし最も効果的なことから始めてみませんか。

次に「長年の付き合いがある」というお客様に出会ったら、勇気を出して、こう聞いてみてください。

「ちなみに、その会社さんへの満足度は、100点満点で何点ですか?」

その一言が、鉄壁だと思っていた壁に、最初の小さな穴を開ける一撃になるはずです。そして、その穴から見える景色こそが、あなたの会社の新しい売上と未来に繋がっているのです。

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どんな相手からも選ばれる、本物の営業力とは

あなたの会社の営業担当者は、「長年の付き合い」という言葉に怯えることなく、どんな状況からでも契約を勝ち取るための本質的な戦略を持っているでしょうか?

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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