営業における「クロージングが苦手」…が、逆に最強の武器になる思考法

「…いかがでしょうか?」
お客様に最後の決断を迫る、営業のクロージング。この瞬間が、どうにも苦手だ…そう感じている営業職の方、そしてそんな部下を持つ経営者や営業マネジャーの方は、少なくないのではないでしょうか?
「買ってください」と強く言うことに抵抗がある。「押し売りだと思われたくない」という気持ちが先に立つ。 お客様にとってのリスクを考えると、どうしても言葉が濁ってしまう…。
分かります。なぜなら、私自身も、性格的にはクロージングが得意なタイプではなかったからです。「自信を持って!」と頭では分かっていても、心情的に「迫る」ことに躊躇(ちゅうちょ)してしまう。
しかし、もし、その「苦手意識」こそが、お客様との間に揺るぎない信頼関係を築き、長期的な成功をもたらす「最強の武器」になり得るとしたら?
このコラムを読めば、あなたは「クロージングが苦手」という弱みを、お客様から深く信頼される強みへと転換させる、具体的な思考法とテクニックを学ぶことができます。もう、最後のひと押しに悩む必要はありません。
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「押し売りしたくない」その気持ち、実は“才能”です。
よく、「営業たるもの、自社の商品に自信を持て!クロージングはお客様のためだ!」と言われます。これは全くの正論ですし、私も心からそう思います。商品やサービスがお客様の役に立つと信じているからこそ、私たちは営業活動をしているわけですから。
しかし、問題はそこではありません。頭で「役に立つ」と分かっていても、心情的に「強く迫るのが苦手」という現実は、確かにあるのです。「自信を持て!」という精神論だけでは、この根深い感情はなかなか解消されません。
では、なぜ私たちはクロージングに苦手意識を感じるのでしょうか? 多くの場合、その根底には「相手に嫌われたくない」「押し売りだと思われたくない」「無理強いして、お客様に損をさせたくない」という、ある種の「恐れ」があります。
そして、この「恐れ」は、しばしば「お客様にとってのリスク要因や懸念要因」を、無意識のうちに考えてしまうことから生まれます。
• 「本当に投資対効果を出せるだろうか?」
• 「ちゃんと使いこなしていただけるだろうか?」
• 「約束した機能が、お客様の環境でちゃんと実現できるだろうか?」
• 「(ものづくりなら)納期通りに、ちゃんと納品できるだろうか?」
こうした懸念に対して、「100%大丈夫です!ご安心ください!」と、何の曇りもなく言い切れるのが、いわゆる「強い営業」なのかもしれません。
しかし、未来のことは誰にも分かりませんし、自分が直接関与できない部分(例えば、開発部門の都合や、お客様自身の活用努力など)だってあります。そんな中で、「絶対大丈夫」と安易に言うことに、誠実さの観点から抵抗を感じてしまう…。
ただ、これって見方を変えれば、「お客様の立場に立って、真剣に物事を考えることができる」という、非常に素晴らしい特質だとは思いませんか?
自分の売上目標や都合のためだけに「買ってください」と言うのではなく、「本当にお客様のためになるだろうか?」という問いを、ギリギリまで突き詰めて考えてしまう。それは、一見すると「優柔不断」「押しが弱い」と見えるかもしれません。
しかし、別の側面から見れば、「お客様のことを、とことんまで真剣に考える、誠実な営業」と呼ぶことができるはずです。そして、この「誠実さ」こそが、今の時代、お客様から最も求められている資質なのではないでしょうか。
「苦手」を「武器」に変える、逆転の発想と具体策
では、この「お客様のことを真剣に考える」という素晴らしい特質、言い換えれば「クロージングが苦手」という性質を、どうすれば営業の武器に変えることができるのでしょうか?
答えは、「正直さ」と「共創」にあります。
解決策の要点①:「懸念」を隠さず、共有し、一緒に考える
• 結論: お客様が抱えるであろう懸念やリスクを無理に隠したり、「大丈夫」と安易に言い切ったりせず、「正直、こういう点は少し気になりますよね」とオープンにし、お客様と一緒に解決策を考える姿勢を示しましょう。
• 理由: 懸念点を正直に共有することで、お客様は「この人は誠実だ」「自分のことを本当に考えてくれている」と感じ、深い信頼を寄せるようになります。「大丈夫です!」一辺倒よりも、よほど信用されるのです。
• はじめの一歩: 次回のクロージング場面で、お客様にとってのリスクや懸念が頭をよぎったら、「〇〇という点は、正直少し気になりますよね。この点について、一緒にクリアにしていきませんか?」と投げかけてみましょう。
考えてみてください。あなたがお客様の立場で、何か高額な商品やサービスを検討しているとします。
A:「大丈夫です!任せてください!絶対にうまくいきますから!」と、自信満々に言い切る営業マン。
B:「ありがとうございます。ただ、正直に申し上げて、〇〇の点は、実際にやってみないと分からない部分もあります。そこがご懸念ですよね。もしよろしければ、そのリスクを最小限にするために、こういう対策を一緒に考えていきませんか?」と、慎重ながらも誠実に提案してくる営業マン。
あなたは、どちらの営業マンをより信頼し、「この人に任せたい」と思うでしょうか?
多くの場合、Bではないでしょうか。安易な「大丈夫」は、時に無責任に聞こえます。むしろ、リスクや懸念を正直に認め、それをどう乗り越えていくかを一緒に考えてくれる姿勢にこそ、人は誠実さを感じ、信頼を寄せるものです。
クロージングが苦手なあなたは、もともとお客様の懸念に気づきやすい、という強みを持っています。その強みを活かし、「懸念点を丁寧に解消していくプロセス自体を、お客様に価値として感じてもらう」というアプローチを取るのです。
これは、自信満々なクロージングが得意な営業には、なかなか真似できない芸当かもしれません。
解決策の要点②:「藪蛇(やぶへび)にならない」懸念の引き出し方
• 結論: いきなり「ここが不安ですよね?」と切り出すのではなく、まず「〇〇様ご自身の、個人的なご感触としては、いかがですか?」と、相手の個人的な印象や意向を尋ねてみましょう。その後に共創プロセスへとスムーズに移行します。
• 理由: まず肯定的な感触を引き出すことで、その後に「ただ、懸念としては…」と、お客様が自ら不安点を話しやすい流れを作ることができます。営業側から一方的に不安を煽(あお)る形にならないため、お客様も安心して本音を話せます。
• 最初のアクション: 最終決断を迫る前に、「会社としての正式なご判断は別として、〇〇様ご自身の『感触』を、まずはお聞かせいただけますか?」という質問を挟んでみましょう。
要点①をうけて、「懸念を正直に共有しましょう」と言うと、「そんなことを自分から言って、わざわざお客様の不安を煽(あお)り、契約が遠のいてしまったらどうするんだ? まさに『藪(やぶ)をつついて蛇(へび)を出す』ことにならないか?」と心配される方がいらっしゃるかもしれません。
ごもっともな懸念です。確かに、いきなり営業側から「ここが不安ですよね?」「ここがリスクですよ!」と切り出せば、お客様は「えっ、そんなに危ない話なのか?」と、かえって不安になってしまうでしょう。
そこで、少しテクニカルな話になりますが、懸念点を引き出す順番が重要になります。 いきなり核心の懸念点に触れるのではなく、ワンクッション置くのです。具体的には、会社としての正式な意思決定を求める手前の段階で、こう尋ねてみます。
「会社としての正式なご決定はもちろんこれからかと存じますが、その手前の段階にある、〇〇様ご自身の、現時点での『ご感触』としては、いかがでしょうか?」
ポイントは、「会社としての決定」ではなく、「あなた個人の感触」を聞く、という点です。
こう聞かれると、もしお客様が個人的には前向きに感じてくれている場合、「そうですね、私個人としては、非常に良いと思っていますよ」と、まずはポジティブな感触を表明しやすくなります。そして、多くの場合、その後に「…ただ、」と、接続詞が続くのです。
「私個人としては良いと思うんですが、ただ、やはり費用対効果の部分が、上司を説得する上でネックになりそうで…」
「ええ、機能自体は魅力的だと感じています。ただ、うちの社員たちが、ちゃんと使いこなせるかどうかが、少し心配で…」
このように、まず肯定的な感触を表明してもらうことで、お客様は自ら、自然な流れで、懸念点や不安点を口にしやすくなるのです。営業側から無理やり引き出すのではなく、お客様自身の言葉として出てくる。この形が理想的です。
そして、お客様から懸念点が表明されたら、すかさず
「なるほど、その点がご懸念なのですね。ありがとうございます。では、その点をクリアにするために、具体的にどうすれば良いか、一緒に検討させていただけますでしょうか?」
と、解決に向けた共創(きょうそう)プロセスへと、スムーズに移行することができるのです。
この「個人的な感触を先に聞く」というワンクッションを置くことで、「藪蛇(やぶへび)になる」リスクを最小限に抑えつつ、お客様の本音の懸念を引き出し、それを解消していくという、誠実で建設的なクロージングプロセスを実現することができます。
あなたが明日からできる「小さな一歩」
「クロージングが苦手」と感じているあなたへ。 もう、無理に「強い営業」を演じる必要はありません。あなたのその「苦手意識」は、お客様のことを深く考えられる、素晴らしい「才能」なのですから。
ぜひ、明日からの営業活動で、この「小さな一歩」を試してみてください。 クロージングが近づいてきたら、決断を迫る前に、まず一言、「〇〇様ご自身の、現時点での『ご感触』はいかがでしょうか?」と、相手の個人的な気持ちを尋ねてみる。
もし、そこで懸念点が表明されたら、チャンスです。「ありがとうございます。その点、私も気になっていました。一緒に解決策を考えさせていただけませんか?」と、誠実に、そして前向きに、協創のプロセスへと進んでいきましょう。
まとめ:「弱み」を「武器」に変え、信頼される営業へ
クロージングが苦手な営業が、その弱みを逆に武器に変えるための思考法とテクニック、ご理解いただけたでしょうか?
• 「押し売りしたくない」という気持ちは、「お客様のことを真剣に考える誠実さ」の表れであると捉え直す。
• お客様の懸念やリスクを隠さず、正直に共有し、「一緒に」解決策を考える姿勢を示す。
• いきなり懸念点に触れず、まず「個人的な感触」を尋ねることで、お客様が安心して本音を話せる流れを作る。
このアプローチは、短期的な売上だけを追い求めるセールスとは一線を画します。お客様との間に長期的な信頼関係を築き、結果として、より大きな、そして持続的な成果をもたらしてくれるはずです。
経営者や営業マネジャーの皆さんも、部下の「クロージングが苦手」という側面を、単なる弱点として捉えるのではなく、その裏にある「誠実さ」や「顧客思考」という強みを見出し、それを伸ばしていくような指導・育成を心がけてみてはいかがでしょうか。
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