仕事のつまらなさが理由でモチベーションが下がるメンバーを、自燃型にする動機づけの方法

「最近、仕事がどうも楽しくなくて…」
あなたの会社の若手エース候補から、ふとこんな言葉を漏らされ、言葉に詰まってしまった経験はありませんか?
こちらは良い給料と働きやすい環境を提供しているつもりなのに、どうも社員の心に火がついていない。営業成績は悪くないものの、どこか情熱が感じられない…。
この記事は、そんな社員のモチベーションという、目に見えず、つかみどころのない問題に頭を悩ませる、すべての経営者・マネジャーの方々のために書きました。
この記事を読めば、巷でささやかれる「好きを仕事に」という呪いの言葉からあなたの会社を解放し、社員が自らの意思で燃え上がり、長期的に売上を伸ばし続けるための、たった一つの、しかし決定的に重要な「動機付け」の方法が分かります。
「仕事が楽しくない」の言葉に、ハテナが浮かぶ理由
率直に言って、私は「仕事が楽しくありません」という言葉を聞くと、頭の中に大きな「?」が浮かびます。おそらく、この言葉を口にする人は、「楽しさ」の種類を一つしか知らないのではないでしょうか。
実は、仕事における「楽しさ」には、大きく分けて2つの種類があります。
- 「行為」そのものが楽しい
これは、ボウリングでストライクを取った瞬間の高揚感や、バッティングセンターで快音を響かせた時の爽快感と同じ種類の楽しさです。
仕事で言えば、「顧客との商談そのものがスリリングで楽しい」「カメラの前で自分の考えを話すのが楽しい」といった、瞬間的な快楽や喜びを指します。 - ”人参”を追いかけるのが楽しい
もう一つは、目の前にぶら下がった”人参”を、必死に追いかける楽しさです。
この”人参”は人それぞれ。ある人にとっては「お金」かもしれませんし、ある人にとっては「役職や名誉」かもしれません。あるいは、「顧客からの“ありがとう”という言葉」や、「積み上がっていく営業数字のグラフ」そのものが人参だという人もいるでしょう。
重要なのは、行為そのものが今、快感かどうかではなく、自分自身で定めた目標(”人参”)に向かって邁進する、そのプロセス全体を楽しんでいる状態だということです。
この2つの「楽しさ」を混同してしまうことこそが、モチベーション問題の根源なのです。そして、はっきり言ってしまいますが、経営者やビジネスパーソンが本気で向き合うべきは、後者の「”人参”を追いかける楽しさ」だけです。
「好きを仕事に」が、社員の心を殺す
世の中には「好きを仕事に」という、耳障りの良い言葉が溢れています。しかし、私はこの言葉を聞くたび疑問符が浮かんでしまいます。
なぜなら、この言葉は、ほぼ間違いなく前者の「行為の楽しさ」をベースに語られているからです。まるで、365日、毎日がお祭りのような、楽しくてハッピーなことだけが続くかのような幻想を振りまいている。
しかし、考えてみてください。30年、40年と続く長い職業人生において、「行為の楽しさ」だけで走り続けられる人間など、存在するのでしょうか。
どんなに好きな仕事でも、必ず面倒な事務作業はあります。理不尽なクレームに頭を下げる日もあります。
営業という仕事は、顧客との会話という「楽しい行為」だけでなく、そのための膨大な準備、退屈なデータ入力、そして契約に至らなかった無数の敗北の上に成り立っています。
「行為の楽しさ」だけを求めて仕事を選んだ人間は、その行為に飽きた時、あるいは仕事の厳しい現実に直面した時、いとも簡単に「この仕事は楽しくない」と言って、燃え尽きてしまうのです。
「好きを仕事に」という言葉は、長期的な視点で見れば、むしろ社員から本当の働く喜びを奪う、危険な麻薬ですらあるのです。
部下に火をつける、たった一つの動機付け「マイ・”人参”」の作り方
では、どうすれば社員の心に火をつけ、長期的に売上を伸ばし続ける強い組織を作れるのでしょうか。
その答えは、社員一人ひとりに、自分だけの”人参”を見つけさせ、追いかけさせることに尽きます。
ステップ1:「行為の楽しさ」という幻想を、まず経営者が捨てる
まず、経営者であるあなた自身が、「行為の楽しさ」という幻想から目覚める必要があります。
「なんやかんや、仕事が一番楽しい」と語る経営者は、決して仕事の「行為」そのものを楽しんでいるわけではありません。
彼らは、会社の成長や社会への貢献といった、自らが設定した壮大な”人参”を追いかける、そのRPGのようなプロセス全体を「楽しい」と表現しているのです。
この感覚を、まずはリーダーであるあなたが理解することが出発点です。
ステップ2:社員一人ひとりに「あなたの“人参”は何?」と問いかける
”人参”は、会社が一方的に与えるものではありません。社員が自らの内面と向き合い、見つけ出すものです。
それは、「圧倒的な営業スキルを身につけ、市場価値の高い人間になる」ことかもしれませんし、「チームの売上目標を達成し、仲間と共に喜びを分かち合う」ことかもしれません。あるいは、もっとシンプルに「大きな契約をまとめて、家族に良い暮らしをさせる」ことでもいいのです。
経営者やマネージャーの役割は、こうした彼らの「個人的な”人参”」を、対話を通じて引き出し、明確に言語化させ、そして、会社の目標と結びつけてあげることです。
「君がその”人参”を手に入れるためには、会社のこの目標を達成することが近道になるよ」と、道筋を示してあげるのです。
ステップ3:”人参”を持つ者は、失敗を恐れないという事実を教える
「起業して失敗したらどうするんですか?」「この営業手法でうまくいかなかったら、時間が無駄になりませんか?」 こうした不安を口にする社員がいます。
しかし、これは彼らの勇気や精神力が弱いからではありません。ただ、心の底から欲しいと思える「人参」がないだけなのです。
考えてみてください。本気でプロ野球選手を目指す高校球児が、「プロになれなかったら、これまでの練習が無駄になる」などと考えるでしょうか。考えません。
なぜなら、リスクやコストを計算する前に、「プロ野球選手になる」という”人参”が、欲しくて欲しくてたまらないからです。
明確で強力な”人参”を持つ社員は、失敗を恐れません。彼らにとって失敗とは、終着点ではなく、”人参”を手に入れるための貴重なデータ収集の一環に過ぎないのです。
まずは「あなたの“人参”は何?」と問いかける勇気を
先日、飲食店の経営で成功し、悠々自適のゴルフ生活を送っていたところ、うつ病になってしまったという方の話を聞きました。
彼は、店舗展開という”人参”を追いかけている間は、どんなに辛くても楽しかった。しかし、その人参を手に入れ、やることがゴルフという「行為の楽しさ」だけになった途端、心のバランスを崩してしまったのです。
この話は、人間の本質を突いています。私たちを本当に動かすのは、瞬間的な快楽ではなく、未来にある目標へと向かう物語なのです。
まずは、あなた自身に問いかけてみてください。
「私が今、この会社で追いかけている“人参”は、一体何だろうか?」
そして、その答えが見つかったら、次にあなたの部下に、同じ質問を投げかけてみてください。その対話こそが、あなたの会社に本物の活気を取り戻す、最初の、そして最も重要な一歩となるはずです。
「物語」で動く組織は、かくして最強になる
あなたの会社は、目先の「楽しさ」で社員の機嫌を取る組織ですか?それとも、一人ひとりが自分自身の「物語(=人参を追いかけるプロセス)」を生きる、最強の集団ですか?
社員一人ひとりが、自分だけの”人参”を追い求め、そのプロセスに熱中する。そんな組織は、多少の困難や不況にも揺らぎません。なぜなら、彼らは自らの意思で走り続けているからです。
もし、
- 社員の「やらされ仕事」感をなくし、自燃する組織文化を構築したい…
- 目先のインセンティブに頼らない、本質的なモチベーション向上策を知りたい…
- 会社のビジョンと個人の「人参」を繋げ、圧倒的な営業力を持つチームを作りたい…
と本気でお考えの経営者の方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。 私たちは、あなたの会社の売上と利益に直結する、本質的な組織開発と人材育成の仕組み作りをサポートします。
まずは、60分間の無料オンライン相談で、貴社が抱える組織の課題や、理想の未来像について、気軽にお話しいただければと思います。もちろん、無理な勧誘は一切いたしません。
また、日々の営業活動やマネジメントのヒントを、Instagramでも発信しています。よろしければ、こちらもフォローしていただけると嬉しいです。
あなたの会社が、一人ひとりの物語で輝く舞台になることを、心から楽しみにしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。