「誰が決めるかわからない」というお客様に、購入を決断してもらうには?

「いい提案だね」と言われるのに契約に至らない。「最終的に誰が決めるんですか?」と聞いても答えが曖昧。こうした商談に悩む中小企業の経営者・営業マネジャーは少なくありません。
本記事では、1万人規模の購買調査から見えた事実と、曖昧な商談を確実に受注へ導く「判断基準の作り方」を、明日から使える型として解説します。読み終えたとき、メンバーへの指導法と会社の勝ち筋が変わっているはずです。
決定権が曖昧なのは、実は当たり前
「社内で検討します」と言われたきり連絡が途絶える。営業担当者としては「決裁者は誰なのか」と焦るものです。しかし今の時代、そもそも決定権が誰にあるのか明確に決まっていない商談は、全体の半数以上はあると考えた方が良い。
2件に1件以上の商談では、お客様自身も「誰が、どうやって決めるのか」をはっきりさせていない可能性があります。
ここで「お客様の準備不足だ」と切り捨てるのは、思考停止の証拠です。今の時代の営業において、決定権が曖昧なのは「例外」ではなく「当たり前のスタート地点」。この前提を持てるかどうかで、営業成績は大きく変わります。
なぜ「BANT」が通用しなくなっているのか
多くの営業現場では、今でもBANT(予算・権限・必要性・時期)やMEDDICといった古典的なヒアリング手法が教えられています。しかし、決定権が曖昧な商談で「今回の決裁者はどなたですか?」とストレートに聞いても、ほとんど意味がありません。
なぜなら、組織は「人」が集まった生き物だからです。企業の購買活動では、次のような流動的な要素が絡み合っています。
- 役員の誰かが賛成しても、現場の反対で流れる
- ロジカルには正しくても、会社のカルチャーに合わず見送られる
- 担当者同士の相性やタイミングという「化学反応」で結論が変わる
お客様自身も「どう決めたらいいか」に頭を悩ませているのが本音です。存在しない答えを聞き出そうとするから、商談が止まるのです。
決定権は「探す」のではなく「作る」もの
では、曖昧な商談をどう進めれば確実に契約を勝ち取れるのか。私が提案したいのは、営業スタイルの根本的な転換です。
「お客様の中にある判断基準を聞き出す」のではなく、「営業がお客様と一緒に判断基準を作っていく」という考え方にシフトすること。社内に明確なルールがないなら、こちらが「成功のためのモノサシ」を提案してあげればいいのです。これは才能でもセンスでもなく、再現できる「型」です。
1. 「判断基準」は流動的だと心得る
結論:判断基準は、商談のプロセスの中で常に動き続けています。一度聞いた「条件」を固定的なものだと思い込むと、営業は失敗します。
お客様の意見は、社内の会議や状況の変化でコロコロ変わります。これは悪いことではありません。むしろ、営業が関与して「自分たちに都合の良い方向」に動かせるチャンスです。商談のたびに、お客様の今の関心がどこにあるのかを細かく確認する姿勢が、受注への近道となります。
2. 商品ではなく「会社が良くなる姿」を言語化する
結論:商品を売る前に、「どうなれば幸せか」という理想の状態を言葉にします。これが、曖昧だった決定権を一つにまとめる「旗印」になります。
お客様が何かを買うのは、突き詰めれば「会社を良くしたい」という願いの現れです。商品説明に入る前に、次のような問いを投げてみてください。
- 「貴社にとって、このプロジェクトが成功したと言えるのはどんな状態ですか?」
- 「1年後、現場のメンバーがどんな顔をしていればハッピーですか?」
商材を切り離した「理想の姿」を一緒に言語化する。この理想像こそ、社内の誰もが納得せざるを得ない最強の判断基準になります。
3. 「オープンクエスチョン」を捨てて「たたき台」を出す
結論:お客様に考えさせるのではなく、こちらから「仮説」をぶつけます。「どうしたいですか?」と聞くのをやめ、「こうするのがベストではないですか?」と提案することから始めましょう。
真っさらな状態で「理想は何ですか?」と聞かれても、お客様は答えに詰まります。そこで営業の出番です。
「他社の事例から考えると、貴社の場合は〇〇と△△が解決されることが一番の成功ではないでしょうか。この考え方は合っていますか?」
このように「たたき台」を提示すると、お客様は「いや、そこはちょっと違うな。実は……」と本音を話しやすくなります。このブラッシュアップの過程こそ、商談の主導権を握り、確実に契約へ近づく最も重要なステップです。
ここで生成AIを使えば、業界別のたたき台を数分で量産でき、誰でも同じ品質の仮説をぶつけられます。仕組みで戦えば、担当者の力量差は消えます。
受注率を高める、明日からできる1ステップ
決定権が曖昧な商談を動かす力は、一朝一夕には身につきません。まずは今日の商談から、あるいはメンバーへのアドバイスとして、次のアクションを試してみてください。
「今回の判断基準は何ですか?」と聞く代わりに、こう伝えます。
「もし私が貴社の社長だとしたら、〇〇を重視して決断すると思うのですが、現場の皆様はどうお考えですか?」
たったこれだけで、商談の空気は変わります。「教えてもらう立場」から「一緒に未来を作るパートナー」へと立ち位置が変わるからです。お客様に寄り添い、共に悩むことで、自然と「この人に任せたい」という信頼が生まれ、受注への扉が開かれます。

属人化を捨て、組織で勝つ営業へ
ここまで紹介した3つの型は、特定のトップセールスだけが使える魔法ではありません。「たたき台を作る」「理想の姿を言語化する」というプロセスを組織のルールとして仕組み化すれば、経験の浅いメンバーでも同じ勝ち筋を再現できます。
私はトレテクで、AIと営業の型を組み合わせ、中小企業・SMEの営業チームを戦力化するご支援をしています。根性や気合ではなく、仕組みと型で「誰でも売れる」状態を作ることが、これからの中小企業が生き残る唯一の道だと考えています。
「メンバーの商談がいつも止まってしまう」「属人化した営業から脱却したい」とお感じの経営者・営業マネジャーの方は、ぜひ一度ご相談ください。貴社の商談を分析し、明日から使える具体的な型と仕組みをご提案します。まずはお問い合わせフォームより、お気軽にお声がけください。
