営業が、お客様の「検討の温度感」を正確に測り、受注率を向上させる質問術

「前向きに検討します」

お客様から、その言葉を引き出した瞬間、多くの営業担当者は胸をなでおろします。「よし、感触は悪くない。あとは良い返事を待つだけだ」と。しかし、その期待は、悲しいかな、多くの場合裏切られます。

1週間経ち、2週間が過ぎても、お客様からの連絡はない。痺れを切らしてこちらから連絡してみると、「あぁ、あの件ですが、今回は見送ることになりまして…」という、気まずい空気が流れる返事。あるいは、そもそも電話にすら出てくれなくなる。

「検討します」という言葉は、ビジネスの世界において、最も丁寧で、そして最も残酷な“お断りの言葉”の一つなのかもしれません。この言葉を鵜呑みにして、ただ待ち続ける営業は、まるで蜃気楼を追いかけているようなもの。貴重な時間を浪費し、気づけば売上目標達成はるか彼方、ということになりかねません。

このような経験は、決してあなただけのものではありません。むしろ、営業という仕事をしている人間であれば、誰もが一度は通る道です。

問題は、この「立ち消え案件」を、“仕方のないこと”として諦めてしまうのか、それとも、その原因を徹底的に分析し、次なる受注への糧とするのか。その違いが、凡庸な営業と、圧倒的な成果を出す営業とを分けるのです。

この、「前向きに検討します」の落とし穴から抜け出すためには、まず、お客様の「検討の温度感」を正しく測るという、極めて基本的な、しかし多くの人ができていないスキルを身につける必要があります。

この記事は、そんなお客様の言葉の裏に隠された「本音」と「本気度」が見えず、手応えのない商談に心をすり減らしている営業担当者、そして彼らを率いる経営者やマネジャーの方々のために書きました。

この記事を読めば、お客様の「検討します」が、一体何度くらいの熱量なのかを正確に測るための、極めて実践的な質問の技術が分かります。

それは、単なる精神論ではありません。相手の心理を読み解き、契約へと至る確率を科学的に高めていくための、具体的なコミュニケーション戦略です。

著者プロフィール

貴社の営業力を飛躍させる「実践型」コンサルタント

ベンチャー・大企業合わせて約20年以上営業現場経験を武器に、貴社に再現性のある「売れる仕組み」を構築します。

現在も営業職として現場の泥臭さを経験しているからこその営業視点を強みとして、座学研修のほか、今日からすぐに使える実践的なノウハウで、特に商談・プレゼン力の向上に貢献します。

「売上を伸ばしたいが、何から手をつければ…」とお悩みの経営者・営業部長様へ、実践型コンサルティングで、貴社の営業チームを強化し、確かな成果へと導きます。

目次

顧客の本心を見抜く、3つの戦略的質問

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お客様の心の奥底にある本音や本気度は、普通に話しているだけでは、まず見えてきません。彼らもまた、会社の看板を背負った一人のビジネスパーソン。建前や社交辞令という名の鎧を身につけています。

その鎧を外し、生身の感情や事実に触れるためには、こちら側から意図的に、そして戦略的に「問い」を投げかける必要があります。ここでは、そのための具体的な3つのステップをご紹介します。

要点1:まず「客観情報」で戦況を大まかに掴む

見積もりへの返信速度など、「行動」に関する客観的な事実から、相手の状況を大まかに判断しましょう。

人の感情は移ろいやすく、言葉は嘘をつきます。しかし、「行動」という事実は嘘をつきません。返信が遅いのは「拮抗(他社と天秤にかけている)」で、早すぎるのは「楽勝 or 惨敗」のサインです。

まず見積もり提出段階に入った際に、

「ご確認にどれくらいお時間がかかりそうでしょうか?」

と、相手の行動にかかる時間について尋ねてみる。

多くの営業は、お客様の「いいですね」「前向きに検討します」といった“言葉”に一喜一憂しがちです。しかし、本当に注目すべきは、言葉ではなく「行動」です。

例えば、こちらが見積もりを提出した後、どれくらいのスピード感で返事が来るか。これは、お客様の検討の温度感を測る上で、非常に分かりやすい客観的な指標となります。

一般的に、返信が遅々として進まない場合。これは、いわゆる「拮抗」状態である可能性が高いです。つまり、あなたの提案は、決して悪くはない。しかし、競合他社の提案と比較検討され、じっくりと吟味されている段階です。ここで焦って催促するのは悪手ですが、かといって放置すれば、忘れ去られてしまいます。

逆に、驚くほどすぐに返信が来る場合。これは「楽勝」か、あるいは「惨敗」の両極端なケースが考えられます。お客様側で「これだ!」と買う気満々になっていれば、「すぐにでも進めたいです」と前のめりな返信が来るでしょう。

一方で、「全くもって論外だ」と思われている場合も、「今回は結構です」という素早いお断りの連絡が来ることがあります。

いずれにせよ、この「返信速度」という客観的な情報を一つの基準として持つことで、「なんとなく感触が良かった」というような、曖昧で主観的な判断から一歩抜け出すことができます。これが、科学的な営業の第一歩です。

要点2:「枕詞」を使い、相手を“個人”の土俵に引きずり込む

客観情報で大まかな戦況を掴んだら、次はいよいよ、核心に迫ります。お客様の「本音」を引き出すのです。

しかし、正面から「本音を教えてください」と言っても、相手は警戒するだけです。そこで有効なのが、「枕詞」という名の魔法の言葉です。

「少しお伺いしたいのですが、〇〇様ご自身としては、個人的には、ここまでの話、率直にどう思われましたか?」

この「個人的には」という一言が、場の空気をガラリと変えます。これまで「株式会社△△の担当者」として話していた相手を、「〇〇さん」という一人の個人として扱うというサインになるからです。

人間は、「会社としての建前」と「個人としての本音」を、無意識に使い分けています。経営者の方なら、なおさら身に覚えがあるのではないでしょうか。この「個人としての本音」の領域に踏み込まない限り、本当に価値のある情報は引き出せません。

あるクライアントの営業マネジャーは、このテクニックをチームに導入し、大きな成果を上げました。彼がチームの合言葉として徹底させたのは、

「ぶっちゃけたところ、どうですか?」

という、非常にストレートな一言でした。

最初は「そんなこと聞くのは怖い」と尻込みしていたメンバーも、勇気を出して使ってみると、お客様が堰を切ったように本音を話し始めてくれた、と言います。

「実は、価格がネックで…」「上司が、この機能に難色を示していて…」など、これまで聞けなかった“本当の課題”が次々と明らかになったのです。

もちろん、この質問をするためには、「何を言っても大丈夫ですよ」という安全な雰囲気を作ることが大前提です。

少し改まった口調で、「ここから先は、あくまでご参考までにお聞かせいただきたいのですが…」と前置きするだけでも、相手の心理的なハードルはぐっと下がります。

要点3:「次のアクション」の有無で、本気度を最終確認する

「個人的には、非常に良いと思っています」 お客様からこんな言葉を引き出せたら、大きな前進です。

しかし、ここで満足してはいけません。最後の砦は、「本気度」の確認です。その担当者が個人的に良く思っていても、組織として動く気がなければ、その契約は成立しないからです。

本気度を測るための最も確実な方法は、「その後の具体的な予定を聞くこと」です。

「ありがとうございます。ちなみに、本日お話しさせていただいた内容について、この後、社内のどなたかにお話しされたり、会議にかけられたりするご予定などはございますか?」

この質問に対する答えで、お客様の本気度は、ほぼ100%見抜くことができます。

本気度が高いお客様は、必ず具体的な答えを返してくれます。 「はい。来週の部内ミーティングで、まずは上司に報告するつもりです」 「この後、関連部署の責任者にも共有して、意見を聞くことになっています」 「〇月〇日の役員会で、議題として上げる予定です」

重要なのは、「今、目の前にいる担当者から、この場にいない第三者に対して、何らかのコミュニケーションが予定されているか」という点です。

これが確認できれば、その商談は、担当者個人で止まっているのではなく、組織を巻き込んだプロジェクトとして動き出している証拠です。

逆に、本気度が低い場合はどうでしょう。 「いえ、特に予定はありません」 「うーん、そうですねぇ…まずは自分でよく考えてみます」

このような曖昧な答えしか返ってこない場合、残念ながら、その案件が前に進む可能性は極めて低い、と判断せざるを得ません。担当者レベルで話が止まってしまっているからです。この状態を放置すれば、数週間後には「立ち消え案件」の仲間入りです。

要点4:“低い温度”こそ宝の山と心得る

お客様の反応が悪い時こそ、その理由(ネック)を「教えてください」と深く掘り下げてみましょう。

なぜなら、お客様が口にする懸念点や課題には、自社のサービス改善や営業戦略の見直しに繋がる、極めて重要なヒントが隠されている場合があります。

お客様の反応が鈍い、表情が曇ったと感じた瞬間こそ、心の中で「チャンスだ」と捉えましょう。

そして、「今後の私たちのために、ぜひ率直なご意見をお伺いしたいのですが」と丁寧に前置きをした上で、

「もし仮に、今回ご導入いただけないとしたら、どのような点が一番の“壁”になりそうでしょうか?」

と尋ねてみます。

ここで最も重要なのは、どんな答えが返ってきても決して反論せず、まずは「なるほど、そういったご懸念があるのですね」と深く頷き、相手の言葉を最後まで聞き切る覚悟を決めることです。

あなたが明日からできる、たった一つのこと

さて、ここまで「検討の温度感」を測るための具体的な方法についてお話ししてきました。しかし、大切なのは、知識として知ることではなく、実際の現場で試してみることです。

とはいえ、いきなり全てを実践するのは難しいかもしれません。でしたら、まずは、たった一つの、しかし最も効果的なことから始めてみませんか。

次にあなたが臨む商談の最後に、お客様にこう質問してみてください。

「本日のお話、この後、どなたかにご報告されたりするご予定はございますか?」

たったこれだけです。この一つの質問が、これまで見えていなかったお客様の「本気度」という名の景色を、あなたに見せてくれるはずです。

その答えによって、あなたが次に取るべきアクションは、全く違ったものになるでしょう。それは、もはや当てずっぽうの営業ではありません。顧客の心理と状況に基づいた、戦略的な一手となるのです。

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どんな相手の心も動かせる、「本物の営業力」をあなたの会社に

あなたの会社の営業担当者は、お客様の丁寧な言葉の裏にある本音を、正確に汲み取ることができているでしょうか?

見込みの薄いお客様に時間を浪費し、本当に契約してくれる可能性の高いお客様への対応が疎かになってはいないでしょうか?

これからの時代に求められるのは、ただ流暢に話せる営業ではありません。お客様の心の機微を敏感に察知し、時には鋭い質問で核心に迫り、相手の状況に合わせて最適なコミュニケーションを取れる、本質的な対話力です。それこそが、会社の売上を安定的に、そして継続的に成長させる、最強のエンジンとなります。

もし、

  • 「検討します」に振り回される営業から脱却させたい…
  • 営業担当者の精神的なストレスを減らし、生産性を上げたい…
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と、本気でお考えの経営者の方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。トレテクは、単なるセールストークの研修ではなく、人間心理の深い理解に基づいた、本質的なコミュニケーション能力の向上をサポートします。そして、それが最終的に、貴社の持続的な売上成長に繋がることをお約束します。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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