詰めが甘くミスを繰り返すメンバーの、商談準備の質を向上させる“2つのアプローチ”

「今日の商談のゴールは何だ?」
「競合の情報は、ちゃんと調べてあるんだろうな?」
商談前、部下の席へ行っては、こんな“お決まりの質問”を投げかけるのが、もはやあなたの日課になっていませんか? そして、準備の甘さを見つけては、「またか…」と深いため息をつき、ついダメ出しをしてしまう。a
これは、全国の営業組織で、毎日、毎時間、繰り返されている、あまりにもありふれた光景です。しかし、この“良かれと思って”の関わりが、実は部下の成長を完全に止め、チームの未来を静かに蝕んでいるとしたら…?
この記事は、「部下の準備がいつも甘い」「何度言っても同じミスを繰り返す」と、尽きることのない悩みを抱える、すべての経営者と営業マネジャーのために書きました。
この記事を読めば、あなたが繰り返している“ダメ出し”がいかに無意味か、そして、部下の思考に革命を起こし、商談の質を根本から変えるための、本当に効果的な「2つのアプローチ」が手に入ります。
抜け出せない「永遠のモグラたたき」の営業チーム
会議室に、気まずい沈黙が流れます。あなたは、部下が作った商談の提案資料に目を通し、その詰めの甘さに、こめかみがピクピクと動くのを感じています。
「この部分、前も言ったよな?なんで直ってないんだ?」
「…申し訳ありません。失念しておりました」
「しっかり頼むよ。この案件、絶対に落とせないんだからな」
このやり取り、あなたの会社でも、まるでデジャブのように繰り返されていないでしょうか。
マネージャーは、「何度言ってもできない部下」に不満を募らせ、同じ注意を繰り返す。 メンバーは、「また怒られた」と萎縮し、言われたことだけを修正する“作業”に終始する。
私たちはこれを「永遠のモグラたたき」と呼んでいます。次から次へと出てくる問題(モグラ)を、マネージャーが指摘(叩く)し続ける。しかし、モグラが出てくる根本原因には一切アプローチできていないため、明日になれば、また別の場所から同じようなモグラが顔を出すのです。
そして、残念なお知らせがあります。 上司からの「ダメ出し」や「叱責」は、メンバーの成長やモチベーション向上に、ほぼ全く効果がない、ということが明らかになっています。
つまり、あなたが部下の成長を願って費やしているその“指導”の時間は、お互いの精神をすり減らすだけの、悲しいほど無駄なエネルギーなのかもしれないのです。
部下の思考を劇的に変える、マネージャーの“2つのアプローチ”
では、この不毛なモグラたたきから脱出し、メンバーが自ら深く考え、能動的に商談準備を進めるようになるためには、マネジャーは何をすべきなのでしょうか。
答えは、あなたの関わり方を180度変える、2つのシンプルなアプローチにあります。
アプローチ①:「重箱の隅」ではなく「盲点」を突く問いかけ
多くのマネジャーが犯す過ちは、メンバーが「薄々わかっているけど、できていないこと」を指摘してしまうことです。いわば、“重箱の隅”をつつくようなものです。
「競合調査が甘い」「キーパーソンの情報が足りない」…そんなことは、言われなくても本人が一番よくわかっています。それを改めて指摘されても、「はい、やります…」という返事しか引き出せず、思考の深化には繋がりません。
本当に効果的な関わりとは、メンバーの“枠外”から光を当てることです。つまり、「成果を出す上で極めて重要だが、本人も全く気づいていなかった“盲点”」を、鋭い質問によって気づかせるのです。
人が最も成長するのは、「なるほど、その視点はなかった!」と、自分の思い込みが覆された瞬間です。では、具体的にどんな質問が、メンバーの思考の枠を破壊するのでしょうか。
明日から使える、4つの「盲点を突く質問」をご紹介します。
「お客様が言葉にしている“要望”の裏にある、“本当の課題”って何だろう?」
表面的な「安くしてほしい」「この機能がほしい」から一歩踏み込み、お客様が本当に解決したい根源的な問題(=インサイト)を探らせる質問です。
「この課題を解決するために、お客様は過去に“自力で”何を試して、なぜ失敗したんだと思う?」
これを考えずに提案すると、お客様から「それ、昔やったけどダメだったんだよね」と一蹴されます。営業が介在する価値は、お客様が“自力でできなかったこと”を解決する点にあると気づかせる質問です。
「一旦、ウチの商品サービスのことは忘れて、お客様が成功するために“本来やるべきこと”を3つ挙げるとしたら何?」
売り込み目線から脱却し、お客様の成功を真に願うパートナーとしての視点を持たせる質問です。この上で、「だからこそ、ウチの商品が必要なんです」と語れてこそ、提案に説得力が宿ります。
「この完璧な提案をしたとして、お客様から出てきそうな“反論や意地悪な質問”を、あえて5つ考えてみて」
商談を楽観的に捉えるのではなく、考えうる最悪の事態を想定させ、事前に対処法を準備させる質問です。
これらの質問は、単なる準備リストのチェックではありません。メンバーの思考の“深さ”を養い、商談を立体的に捉える力を育てるための、強力なトレーニングなのです。
アプローチ②:「失敗するな」ではなく「失敗から学べ」という環境
「そんな鋭い質問、いつでもポンポン思い浮かばないよ…」 そう感じる方もいらっしゃるでしょう。ご安心ください。もう一つ、全く違う角度から、しかし同様に絶大な効果を持つアプローチがあります。
それは、「失敗してもいい。その代わり、何か新しいことを試してごらん」と伝え、メンバーに安全な“実験場”を提供することです。
多くのマネジャーは、無意識のうちに「絶対に失敗するな」というプレッシャーをかけてしまっています。
しかし、「失敗は許されない」という空気は、組織にとって猛毒です。なぜなら、メンバーはリスクを恐れ、最も安全で、最も無難で、そして最も成長のない選択肢しか取らなくなるからです。
考えてみてください。営業のスキルとは、結局のところ「試行錯誤の数」によって磨かれます。うまくいかなかったとしても、「このお客様には、このアプローチは響かないのか」「次はこう言い方を変えてみよう」という学びこそが、血肉となるのです。
結果を出すためには、あえて失敗を許容する。 一見、逆説的に聞こえるかもしれませんが、これこそが、メンバーの成長を加速させる最高の“指導”なのです。
マネジャーの役割は、完璧な指示を出すことではありません。メンバーが安心して挑戦し、たとえ転んだとしても、そこから立ち上がって学びを得られるような「心理的安全性」を確保することです。
「この新しい提案、うまくいくかわからないけど、試してみる価値はあると思う。結果は問わないから、思い切ってやってみろ。責任は、すべて俺が取る」
上司からこの一言をかけてもらえたメンバーが、どれほど勇気づけられ、主体的に動き出すか、想像に難くないでしょう。あなたの仕事は、メンバーの打ち手を狭めることではなく、むしろ、その選択肢を広げ、挑戦の背中を押してあげることなのです。
まずは「ダメ出し」を封印することから
この2つのアプローチを、明日から完璧に実践するのは難しいかもしれません。 でしたら、まずは、たった一つのシンプルなルールを、ご自身に課すことから始めてみませんか。
それは、「次の商談準備の場で、一度、ダメ出しや指摘を完全に封印してみる」ということです。
そして、指摘したくてうずうずするその口で、代わりに、先ほどご紹介した「盲点を突く質問」の中から、たった一つだけを選んで、メンバーに静かに問いかけてみるのです。
「お客様の“本当の課題”って、何だと思う?」
このたった一言が、不毛なモグラたたきの日々に終止符を打ち、あなたのチームを「学習する組織」へと変貌させるアプローチになるかもしれません。
“教える”のではなく、“気づかせる”のが本物のマネジメント
あなたのチームは、マネジャーであるあなたの指示がなければ、何も進まない「指示待ち集団」になっていませんか? あるいは、あなたの知らないところで、メンバーが挑戦を恐れ、思考停止に陥ってはいませんか?
メンバーの欠点を指摘し、修正させるマネジメントは、もう限界です。これからの時代に求められるのは、メンバー自身に「気づき」を与え、自ら思考し、行動する力を引き出すマネジメントです。
もし、
- 部下への「問いかけ」の引き出しを、もっと増やしたい…
- 失敗を許容し、挑戦が生まれる組織文化を、本気で作りたい…
- メンバー一人ひとりが自走し、売上が安定的に伸びるチームを構築したい…
と、心の底からお考えの経営者、マネジャーの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。
トレテクは、貴社の状況を丁寧にヒアリングした上で、メンバーの思考を深め、行動を促すための、具体的な問いかけの技術や、心理的安全性を醸成するための仕組みづくりを、一緒に構築していきます。
まずは60分の無料オンライン相談で、貴社が抱える課題や、理想の組織像について、お話をお聞かせください。無理な勧ゆは一切ございませんので、どうぞご安心ください。
また、日々の営業活動のヒントや、コンサルティングの現場からの気づきなどを、Instagramでも発信しています。こちらも、ぜひフォローしていただけると嬉しいです。
あなたのその関わり方一つで、部下は驚くほど変わります。そして、チームが変わり、会社が変わる。その劇的な変化の第一歩を、共に踏み出せることを楽しみにしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。