顧客の本音を“感触”ではなく“数字”で炙り出し、受注に繋げる質問術

「社長、先日のA社ですが、かなり良い感触です!前向きに検討いただけるとのことです!」

会議室で、営業担当者が自信満々に報告する。その言葉を聞いて、あなた(経営者)は少しだけ胸をなでおろす。しかし、心のどこかで一抹の不安がよぎる。「本当にそうか?あの『良い感触』とは、一体何を指しているんだ…?」

そして数週間後、嫌な予感は的中する。

「誠に申し訳ございませんが、今回は見送らせていただく運びとなりました」

丁寧だが、冷たいお断りのメール。あなたは、天を仰ぎながらこう思う。「いったい、あの手応えは何だったんだ…」。

この記事は、そんなつかみどころのない「顧客の感触」に振り回され、売上目標達成に苦心している経営者や営業マネージャーの方々のために書きました。

この記事を読めば、なぜあなたの会社の営業が顧客の本音を引き出せないのか、その根本原因がわかります。そして、「検討します」という曖昧な言葉の裏に隠された真意を“数字”という武器で正確に読み解き、商談の主導権を握り、最終的に契約というゴールにたどり着くための、具体的かつ強力な質問術を身につけることができます。

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目次

“感覚的な手応え”を鵜呑みにすると、負の失注スパイラルに陥る

商談報告の場で、こんなやり取りが繰り返されていませんか?

経営者:「B社との商談はどうなってる?」
営業担当:「はい、先方もかなり乗り気で、良い雰囲気です!」
経営者:「競合はいるのか?」
営業担当:「C社が提案しているようですが、お客様は『甲乙つけがたい』とおっしゃっていました。十分、勝機はあります!」

一見すると、非常に前向きな報告です。しかし、この報告には、受注確度を測る上で最も重要な「客観的な事実」が、一つも含まれていません。

「乗り気」「良い雰囲気」「甲乙つけがたい」…これらはすべて、営業担当者の“主観”や、お客様の“社交辞令”に過ぎない可能性があります。人間は、本音と建前を使い分ける生き物です。特に、断るのが苦手な日本人のお客様は、「悪く思われたくない」という一心で、当たり障りのない、ポジティブな言葉を選びがちです。

この“感覚的な手応え”を鵜呑みにしてしまうことこそが、営業組織が陥る最大の罠なのです。結果として、

  • 注力すべき案件を見誤り、リソースを無駄にする
  • 失注理由が曖昧なため、次の対策が立てられない
  • 営業担当者は「頑張っているのに売れない」と疲弊していく
  • 経営者は、いつまで経っても安定しない売上に頭を悩ませ続ける

という、負のスパイラルに陥ってしまいます。これでは、会社として継続的な成長を望むことは、到底できません。

“曖昧な感触”を“具体的な数字”に変える4つの質問術で、ヒアリングの精度を劇的に上げる

では、どうすればお客様の社交辞令の壁を突破し、その心の中にある「本音」という名の宝の地図を手に入れることができるのでしょうか? 答えは、意外なほどシンプルです。それは、質問に「数字」を盛り込むことです。

抽象的な感覚を、客観的な「数字」という共通言語に置き換えることで、お客様は驚くほど具体的に、そして正直に話してくれるようになります。今日からあなたの会社の営業チームが実践できる、4つの質問術をご紹介します。

1. 予算や金額は「〇〇円と△△円、どっち?」と2択で聞く

営業の現場で、最も聞きづらく、そして最も重要な質問の一つが「予算」です。「ご予算はおいくらですか?」というストレートな質問は、お客様に「値踏みされている」という警戒心を与えかねません。

そんな時、お客様はこう考えます。「いくらと答えるのが正解だろうか?安く言うと、それなりの提案しか出てこないかもしれない。かといって、高く言うのも…」。この“考える負荷”が、お客様の口を重くさせるのです。

そこで、数字を使った選択肢の出番です。

例えば、あなたが375万円のサービスを提案したいとします。その場合、こう聞くのです。

「もし仮にご導入いただくとなった場合、ご予算としては、370万円と400万円でしたら、どちらのイメージに近いでしょうか?」

こう聞かれると、お客様は「うーん、400万円は少し高いかな。370万円の方に近いですね」といった具合に、非常に答えやすくなります。

これは、他社の見積金額を聞き出す際にも応用できます。「他社さんはおいくらで?」と聞く代わりに、「他社さんのご提示額は、370万円と400万円、どちらに近いですか?」と聞けば、教えてもらえる確率は格段に上がります。

これは、オープンクエスチョン(開かれた質問)ではなく、選択肢付きのクローズドクエスチョン(閉じられた質問)にすることで、相手の思考の負担を劇的に軽くしているからです。この小さな配慮が、受注への大きな一歩となります。

2. 手応えや状況は「7:3ですか?5:5ですか?」と比率で聞く

「各社さん、いいご提案で甲乙つけがたいですね」

これは、営業担当者が最も惑わされる言葉の一つです。この言葉を真に受けて「よし、五分五分だ!」と考えるのは、あまりにも早計です。この「甲乙つけがたい」には、

  • 本当に5対5の互角で、最後のひと押しを待っている状態
  • 実はすでに7対3で競合が優勢だが、角が立たないように言っている状態
  • 完全に競合に決めているが、とりあえず当たり障りなく返している状態

など、様々な可能性があります。この見極めを誤れば、勝算のない戦いに貴重なリソースを投下し続けることになります。

ここで、数字の出番です。

「左様でございますか。ありがとうございます。ちなみに、『甲乙つけがたい』というのは、感覚的なお話で全く構わないのですが、例えば当社と競合さんで、5対5というイメージでしょうか? それとも、どちらかが頭一つ抜けている7対3のような状況でしょうか?」

こう聞くことで、お客様の頭の中にある曖昧な感覚が、具体的な数字に変換されます。「うーん、そうだねえ…どちらかというと、6対4くらいかな」という答えが返ってきたら、そこから「なるほど、その差の“1”は何でしょうか?」と、さらに深掘りすることができます。

この質問は、不利な状況を挽回する際にも有効です。「正直、今回は厳しいかな…」と感じた時でも、

「ちなみに、当社にご発注いただける可能性は、完全に0%でしょうか? それとも、まだ10%くらいは残っているのでしょうか?」

と聞いてみましょう。「いや、0じゃないよ」という言葉を引き出せれば、その10%を突破口に、逆転のシナリオを描くことができるかもしれません。

3. 満足度は「100点満点中、何点?」と採点してもらう

特に、すでに他社と取引があるお客様への新規開拓(ひっくり返し)において、この「点数評価」は絶大な威力を発揮します。

多くの営業は、「何かお困りごとはありませんか?」と聞きますが、これでは「いや、特に満足してますよ」で終わってしまいます。そこで、視点を変えてこう質問するのです。

「差し支えなければ、今お取引されている〇〇社さんへのご満足度を、仮に100点満点で評価するとしたら、何点くらいになりますでしょうか?」

この質問は、相手にYes/Noで答えさせず、ゲーム感覚で評価を促します。すると、お客様は少し考えてこう答えるかもしれません。

「うーん、そうだねえ。80点くらいかな」

この「80点」という数字こそ、攻略の糸口が詰まった宝の山です。ここから、あなたの本当の仕事が始まります。

第一段階:プラス80点の内訳を聞く 「ありがとうございます!その80点は、どのような点を評価されていらっしゃるのでしょうか?」 → これにより、お客様が取引先に求める「価値」や「強み」を正確に把握できます。

第二段階:マイナス20点の理由を聞く 「なるほど、よく分かりました。ちなみに、残りの足りない20点というのは、具体的にどのような部分になるのでしょうか?」 → これこそが、お客様が抱える「潜在的な不満」です。既存業者が気づいていない、あるいは対応できていない課題が、ここに眠っています。この“20点”こそ、あなたの会社が提案すべき価値そのものなのです。

4. 現状を超える「120点の提案」で揺さぶりをかける

マイナス20点の不満を聞き出し、それを解消する提案を考える。それだけでも、競合に対する優位性は生まれます。しかし、真に市場を制する営業、お客様から「あなたじゃなきゃダメだ」と言われる営業は、もう一歩先へ進みます。

それが、「120点の提案」です。

「先ほどの足りない20点を私たちが埋められるのは当然として、もし仮に、私たちが〇〇という全く新しいご提案をしたとしたら、お客様にとっての満足度は120点になったりしますか?」

これは、単なる御用聞きではありません。お客様自身も気づいていなかった新たな価値、新たな判断軸を提示し、ゲームのルールそのものを変えてしまうアプローチです。かつて一世を風靡した経営書『ブルーオーシャン戦略』が説いているのは、まさにこの「他社とは違う土俵で戦う」ことの重要性です。

お客様が「そんなことまでやってくれるなら、まさに120点だよ!」と目を輝かせた瞬間、あなたは単なる業者の一人から、ビジネスを共に創造する「パートナー」へと昇格するのです。この関係性を築けた時、価格競争とは無縁の、安定的で高収益な契約があなたのものになります。

まずは「何対何ですか?」と聞く勇気を

数字を使った質問の威力を、ご理解いただけたでしょうか。

大切なのは、これを知識として知っていることではなく、実際の商談で使いこなすことです。とはいえ、いきなり全てを実践するのは難しいかもしれません。

でしたら、まずは次回の商談で、たった一つだけ試してみてください。

競合の存在が明らかなお客様に対して、

「差し支えなければ、現時点で弊社とA社さん、評価はズバリ何対何くらいですか?」

と、笑顔で聞いてみることです。

この、ほんの少しの勇気が、これまで見えていなかったお客様の本音の扉を開き、あなたの会社の営業活動を、根底から変えるきっかけになるはずです。

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どんな相手からも本音を引き出す「真の営業力」を

あなたの会社の営業担当者は、お客様の曖昧な言葉に振り回されることなく、冷静に、そして客観的に商談の状況を分析し、受注までの最短ルートを描くことができているでしょうか?

お客様の心の奥底にあるニーズを正確に捉え、時には数字というメスでその内側を解き明かし、競合が追随できない価値を提供する。それこそが、これからの時代を生き抜く経営に不可欠な、本質的な営業力です。

もし、

  • どんなタイプのお客様からも本音を引き出し、強い信頼関係を築ける営業チームを育てたい…
  • 「感触」や「気合」といった曖昧なものではなく、データに基づいた科学的な営業戦略を構築したい…
  • 営業担当者の精神的なプレッシャーを減らし、組織全体の売上を安定的に向上させたい…

と本気でお考えの経営者、マネジャーの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度にご相談ください。

トレテクでは、小手先のセールストークではない、人間心理の深い理解に基づいた、本質的なコミュニケーション能力の向上をサポートします。そして、それが最終的に、貴社の揺るぎない売上基盤となることをお約束します。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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