営業の「いい感触」は疑う 顧客の購買意欲の本音を引き出す「もし仮に」の技術

「お客様が、本当に買ってくれるのか分からない…」
「『検討します』と言われたきり、連絡が途絶えてしまった…」
「結局、受注できるか不安で、つい値引き提案をしてしまう…」
中小企業の経営者や営業マネジャーの皆様。あなたの会社の営業チームは、お客様の「本気度」を正しく測れていますか?
お客様の温度感が分からないまま商談を進めるのは、霧の中を手探りで歩くようなものです。どこに進んでいるか分からず、不安になり、ゴール(契約)にたどり着く前に疲弊してしまいます。
この記事は、そんな「お客様の本気度が見えない」という悩みを抱える経営者・マネジャーの皆様のために書きました。
この記事を読めば、多くの営業担当者が陥りがちな「温度感の勘違い」をなくし、お客様の“本音”を引き出しながら「もし買うとしたら」という具体的なシミュレーションへ導く、高度なテストクロージングの技術が分かります。
この技術を営業チームに浸透させることで、無駄な値引きを防ぎ、受注の確度を高め、会社全体の売上を安定させることが可能になります。
多くの営業の”よくある思い込み”に、経営者は悩む
営業会議室。営業マネジャーであるあなたは、部下からの商談報告を受けています。
部下:「A社、いい感触です! 『費用対効果が合うなら導入したい』と前向きでした!」
あなた:「ほう。で、具体的な進捗は?」
部下:「はい! BANT(バント)情報も取れました。予算は300万円。決済は役員の方だそうです。ニーズも明確で、導入時期も来期中と…」
あなた:「なるほど。それなら受注の確度は高そうだな」
あなたは、その報告に一瞬安堵します。BANT情報(Budget:予算、Authority:決裁者、Needs:ニーズ、Timeframe:導入時期)が取れているなら、有力な見込み客リスト(案件リスト)に加えられるだろう、と。
しかし、1ヶ月後。
あなた:「そういえば、あのA社はどうなった?」
部下:「あ、それが…。『社内で検討した結果、今回は見送ります』と、先ほどメールがありまして…」
あなた:(いったい、あの“いい感触”はなんだったんだ…!)
あなたは、経営者として、あるいはマネジャーとして、こんな経験に頭を抱えたことはありませんか?
これは、営業担当者がサボっていたわけでも、嘘をついていたわけでもありません。彼(彼女)も、お客様の言葉を信じ、本気で受注できると思っていたのです。
では、なぜこんな悲劇が起きるのか。それは、営業担当者が「お客様の“本気度”を測るモノサシ」を、間違えて使っているからです。
なぜ、本気度が測れない? 営業がハマる「3つの思い込み」
お客様の温度感が分からないと、営業は不安になります。そして、その不安を解消するために、間違った行動(=値引き、過度なプッシュ)に出てしまいがちです。まずは、多くの営業が陥る「よくある勘違い」を見ていきましょう。
勘違い①:「BANT情報=本気度」という思い込み
最も多い勘違いがこれです。先ほどの例のように、予算や決裁者を聞き出せたことを「本気度の証」だと勘違いしてしまうケースです。
しかし、冷静に考えてみてください。
「予算は300万円です」とお客様が答えたとして、それは「あなたに300万円払うことを決めた」という意味でしょうか? 違いますよね。それは単に「(もし買うとしたら)使える予算の上限が300万円だ」という“事実”を述べたに過ぎません。
「決済は役員です」という情報も同じです。「役員に話を通す」という“意思”があるかどうかは、全く別の話です。
BANT情報は、あくまで「意思決定に必要な条件」を確認しただけ。お客様の「買うぞ!」という“意思”の強さ(=温度感)を測ったことには、まったくなっていないのです。この勘違いが、営業報告と実態のズレを生む最大の原因です。
勘違い②:「料金の質問=購買意欲」という思い込み
「お客様から、料金プランについて細かい質問をたくさん受けました! これは本気度が高い証拠です!」
これも、危険な勘違いです。
確かに、導入を真剣に考えているからこそ、詳細な費用を知りたい、というお客様もいます。しかし、多くの場合、お客様は「単なる情報収集」あるいは「不明点の解消」として質問しているに過ぎません。
例えば、「このオプション費用って、どういうことですか?」という質問は、「このオプションを付けたいから教えて」という意味とは限りません。単に「よく分からない項目があるから聞いた」だけかもしれないのです。
料金の話で盛り上がってしまうと、営業側は「これはイケる!」と舞い上がりがちです。しかし、その質問が「買うための質問」なのか、「知るための質問」なのかを見極めなければ、温度感を読み違えます。
勘違い③:「いつ発注しますか?」と詰め寄ってしまう
これは、私自身が「買う側」の立場で体験した、苦い(そして非常に示唆に富む)経験です。
以前、あるサービス導入のために、複数の会社から提案を受けていた時のことです。各社の提案を比較検討し、「さて、どこにお願いしようか」と、まさに“迷っている”段階でした。
そんな時、ある一社の営業担当者から、こう電話がかかってきたのです。
「ご発注、何月何日になりますか? 今月を過ぎると来月の納品になってしまいますが、大丈夫ですか?」
私は、耳を疑いました。こちらは、まだその会社に決めたとは一言も言っていません。それなのに、まるで契約することが前提かのように、日程を詰められたのです。
当然、私は「いや、まだ御社にお願いすると決めたわけでは…」と、非常に複雑な気持ちで答えざるを得ませんでした。彼らはBANT情報も聞いていましたし、私たちが本気で導入を検討していることも知っていたはずです。
しかし、この「詰め」の一言で、一気に冷めてしまったのです。
「買うかどうか」から「もし買うとしたら」へ。お客様の“本気度”を測る、たった一つのシンプルな原則
では、BANT情報を聞くだけでもダメ、料金の質問を鵜呑みにしてもダメ、かといって直接的に詰め寄ってもダメ…。
一体どうすれば、お客様の本当の温度感を確かめ、契約へとスムーズに導くことができるのでしょうか?
答えは、非常にシンプルです。
それは、お客様の「心理的なモード」を、一段階進めてもらうことです。
多くの営業は、お客様が「買うかどうかを決めかねている」というモードにいる時に、BANT情報や価格の話をしてしまいます。
そうではありません。
私たちがやるべきことは、お客様に、「もし仮に、買うとしたら」というモードに入っていただき、“買った後のこと”を具体的にシミュレーションしてもらうこと。これに尽きます。
人は、本気で手に入れようと考えていないモノのために、面倒なシミュレーションはしません。
逆に言えば、面倒なシミュレーションに付き合ってくれるかどうかこそが、お客様の本気度を測る、最高のリトマス試験紙になるのです。
「本気度」を見極める3つの戦略的ステップ
この「もし買うとしたら」のシミュレーション(=テストクロージング)を成功させるためには、3つの具体的なステップがあります。これは、あなたの会社の営業担当者が明日から実践できる、非常に強力な技術です。
ステップ1:BANT(バント)ではなく、「現実的な課題」を聞き出す
- 結論: 「もし導入したら、解決すべき“現実的な問題”」について質問を投げかけましょう。
- 理由: BANTのような「条件」ではなく、「買った後に発生する作業や調整」について考えてもらうことで、お客様の思考が「買う」シミュレーションに切り替わるからです。
- 一歩目: まずは「もし仮に導入するとしたら、社内で調整が必要になりそうなことはありますか?」と聞いてみましょう。
お客様の「本気度」は、BANT情報には表れません。「もし仮に」導入するとしたら、お客様が“現実的に検討しなくてはいけないこと”にこそ、本気度は隠されています。
それは、意思決定の「条件」(予算、決済者)ではなく、「買った後に使うときに必要になってくるシミュレーション」です。
例えば、新しい社内システムを提案している商談で、お客様が「いいですね、前向きに検討します」と言ったとします。
ここで、「ご予算は?」と聞くのは、まだ早い。
まず、こう聞くのです。
「ありがとうございます。もし仮に、ですが、このシステムを導入するとしたら、ID(アイディー:利用者の識別番号)は、全部でいくつくらい必要になりそうですか?」
「なるほど。あと、今お使いのAというサービスと、一部機能がかぶるかもしれませんが、その棲み分けは、どのようにされるイメージでしょうか?」
どうでしょう。これらの質問は、お客様が「買う」と決めた後でなければ、通常考えないような、“現実的で、ちょっと面倒な”質問です。
もし、お客様が「うーん、そうだね…。IDは、まず営業部が20人で、管理部が5人かな…」「棲み分けか…確かに。Aサービスは顧客管理で残して、今回のシステムは案件管理で使う、とかかな…」と、具体的に考え始めてくれたらどうでしょう?
これは、BANT情報で「予算300万です」と答えられるよりも、はるかに温度感が高い状態だと言えます。お客様の頭の中が、「買うかどうか」から「どうやって使うか」にシフトした瞬間です。
ステップ2:「もし仮に」の枕詞(まくらことば)で、心のカギを開ける
- 結論: すべての詳細な質問の前に、「もし仮に」という“枕詞”を付けましょう。
- 理由: この一言がクッションとなり、お客様の警戒心を解き、「売り込まれている」という圧迫感を消し去るからです。
- 一歩目: 詳細なシミュレーションの質問(ステップ1)の前に、必ず「もし仮に、ですが…」と付け加える練習をしてみてください。
ステップ1の「現実的な質問」は、非常に強力ですが、使い方を間違えると諸刃の剣になります。
先ほどの、私が体験した「いつ発注しますか?」という失敗例。あの時、もし営業担当者が、たった一言、魔法の言葉を付け加えてくれていたら、私の印象は180度変わっていました。
「〇〇様(私)、もし仮に、当社をお選びになるとしたら、ご発注はいつ頃のご予定になりますでしょうか?」
こう聞かれていたら、私は「ああ、まだA社とB社で迷っていて…。もし御社に決めたとしたら、おそらく来月頭には発注できると思います」と、素直に答えていたでしょう。
この「もし仮に」という枕詞は、お客様に「これは、まだ決定ではないですよ」という“逃げ道”を用意しながら、本音を引き出すための、最高峰の技術です。
ポイントは、「本当なら契約後に伺うような詳細情報」を、「もし仮に」という枕言葉をつけて、契約前に聞いてしまうこと。
これによって、お客様の温度感を確かめながら、スムーズに契約後の手続きのシミュレーションへと移行させることができるのです。
ステップ3:「料金の話」は、シミュレーションの“後”にする
- 結論: 料金や見積もりの詳細な話は、お客様の本気度を確かめた“後”にしましょう。
- 理由: 料金の話を先にすると、お客様の関心が「金額の妥当性」に移ってしまい、本気度(=買う意思)が見えにくくなるからです。
- 一歩目: お客様から「で、いくらなの?」と聞かれても、「もちろんです。その前に、もし導入されるとしたら…」と、先にステップ1と2を実践してみましょう。
多くの営業は、お客様から「料金は?」と聞かれると、待ってましたとばかりに詳細なプランの説明を始めてしまいます。しかし、これは悪手です。
先述の通り、料金への質問が、購買意欲の高さとイコールとは限りません。
優秀な営業は、こう切り返します。
お客様:「いい感じだね。で、料金はいくらくらいなの?」
営業:「ご関心ありがとうございます。もちろん、料金のご説明もさせていただきます。その前に、もし仮に導入されるとしたら、先ほどのID数は25名様分で、スタート時期は来年度の頭、ということでお間違いありませんでしたか?」
お客様:「ああ、そうだね。それで頼むよ」
この時点で、営業は「お客様が25ID、来年度スタートで具体的に考えている」という、BANT情報よりもはるかに確度の高い「本気度」を掴んでいます。
この「現実的なシミュレーション」で本気度を確かめた後で、初めて「それでは、25ID、来年度スタートの場合のお見積もりですが…」と料金の話に入るのです。
順番が違うだけで、商談の主導権と受注の確度は、天と地ほど変わってきます。
経営者・マネジャーが「今日から」できる、最初の一歩
お客様の“本気度”を見極める「もし仮に」のシミュレーション術。その重要性をご理解いただけたでしょうか?
とはいえ、この技術を営業チーム全体に浸透させるのは、簡単なことではありません。
そこで、経営者である、あるいはマネジャーであるあなたが、まず「今日から」できる、非常に簡単な、しかし効果絶大な「第一歩」をご提案します。
それは、「営業担当者が、契約後に聞いている質問」をすべてリストアップすることです。
あなたの会社では、お客様から正式な契約書や申込書をいただいた後、納品やサービス開始のために、お客様に確認している「詳細情報」があるはずです。
- 「ご利用開始は、何月何日からにされますか?」
- 「納品先の住所は、こちらでよろしいですか?」
- 「窓口となるご担当者様のお名前とご連絡先は?」
- 「初期設定に必要なIDのリストをいただけますか?」
まずは、これらをすべて書き出してみてください。
そして、次に営業担当者にこう指導するのです。
「このリストの質問を、契約前のお客様に『もし仮に』という枕言葉をつけて、一つだけ聞いてみてごらん」と。
たったこれだけで、営業担当者は、お客様の「本気度」という、これまで目に見えなかったものを、明確に感じ取れるようになります。
どんな相手の“本気度”も見抜ける、強い営業チームを育てませんか?
あなたの会社の営業担当者は、お客様の「検討します」という言葉に、いつまで振り回され続けますか?
お客様の温度感が分からない不安から、必要のない値引きを提案し、会社の利益を削ってしまっていませんか?
BANT情報だけを鵜呑みにした「感触は良いです」という報告に、経営者として、いつまで期待と失望を繰り返しますか?
本質的な営業力とは、お客様の「買う」という意思決定を、心理的な側面から、安全かつスムーズにサポートする技術です。
もし、
- お客様の本音と本気度を正確に測る技術を、チームに導入したい…
- 「なんとなく」の営業報告ではなく、確度の高い「売上」予測を立てたい…
- 値引きに頼らず、お客様との信頼関係で「受注」できる営業を育てたい…
と、本気でお考えの経営者・営業マネジャーの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。
トレテクでは、単なるセールストークの研修ではなく、人間心理の深い理解に基づいた「お客様のシミュレーションを促す」本質的な営業戦略の導入をサポートします。
まずは、60分間の無料オンライン相談で、貴社の営業チームが今抱えている課題や、目指したい売上の姿について、気軽にお話しいただけませんか?
無理な勧誘は一切いたしません。「この人に相談したい」と思っていただけた時が、貴社の営業が変わるタイミングです。
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あなたの、そして貴社の営業が、お客様の“本気度”を自信を持って見極め、安定した売上を上げ続けられる存在になるためのお手伝いができることを、楽しみにしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
