お客様に頼られる営業のコツ 専門知識を磨く鍵は「誠実なプラスアルファ」

「とにかくお客様と会話しなさい」——営業現場でよく飛び交う指示です。もちろん会話は大切ですが、AI時代のいま、お客様が本当に営業に求めているのは「専門知識を持って、より正確なアドバイスをくれると思える存在」だという傾向が見えてきました。
この記事では、「頼られる専門知識」をどう身につけるか、その手前に置くべき2つの具体策を、20年間複数業界で経験のある営業パーソンの視点でお伝えします。読み終える頃には、明日から動ける道筋が見えているはずです。
お客様が営業に求めているのは「正確なアドバイス」
「関係ができている営業とはどんな営業か」という問いに対して、あなたはどう思うでしょうか。それは実のところ、コミュニケーションの気軽さでも、一緒に何かを作り上げる関係でもなく、「専門知識を持って、より正確なアドバイスをくれると思える営業」ではないでしょうか。
「利益だけでなく顧客のために行動してくれると思える営業」。これも納得ですが、専門知識というものがお客様にとって大きなウエイトを占めているものだと感じております。
営業組織の中では、知識のある営業が「頭でっかち」と見られがちです。「理屈より先にお客様と会話しろ」という空気もあります。しかし、お客様の側がこれだけ知識を重視しているのなら、この現実はもう無視できないのではないでしょうか。
AI時代に「人に聞く価値」を決める文脈の接続力
なぜいま、専門知識がこれほど重要になっているのか。理由はシンプルで、AIの進化です。
お客様も当然、AIを使って情報を集めています。少々乱暴な聞き方をしても、AIはそれなりの答えを返してくれる。そうなると「わざわざ営業に聞くより、AIに聞いた方が早い」という行動が、お客様の中で当たり前になっていきます。これはお客様に限らず、世の中全体が向かっている方向です。
となると、営業の役割は端的に言えば「AIでは分からないことを、ちゃんと教えてくれる存在」になります。これはかなりハードルの高いラインです。
では、AIに聞くよりも「この営業に聞こう」と思ってもらうために、何ができるのか。
私が鍵だと考えているのは「文脈の接続力」です。これは、お客様の文脈に合わせて知識をどう当てはめて考えるか、という力。翻訳力と言い換えてもいいでしょう。
一般論としての知識をそのまま渡すのではなく、目の前のお客様の状況に翻訳して届ける。ここに、人間の営業が残せる価値があります。
「頼られる営業」の手前にある誠実なプラスアルファ
頼られる専門知識を持つ営業は、そもそもお客様から質問されることが多いという特徴があります。「この人に聞けば教えてもらえる」と見なされているわけです。
ただ、これは一朝一夕でなれるものではありません。「質問される→頼られる」という循環に入るには、その手前に階段を作る必要があります。私はその階段が「誠実なプラスアルファ」だと考えています。
プラスアルファは多すぎるとウザがられる。「良かれと思って」が「余計なお世話」になってしまうこともある。だからこそ「誠実な」という言葉が肝になります。
求められていないけれど、「こうした方がいいですよ」と営業の側からあえて差し出す。しかも押し付けにならず、喜ばれる形で。これを実現するための具体策が、次の2つです。
喜ばれるプラスアルファを実現する2つの方法
①「いくらもらっても困らない情報」を届ける
1つ目は、お客様がいくらもらっても困らないような情報提供の仕方を心得ているかです。
キャンペーン告知や売り込みメールがしょっちゅう届くと、お客様は「また売り込みか」と不快になり、迷惑メールフォルダ行きになりかねません。
一方で、売り込み臭がなく、お客様が知っておくべきことを端的に伝える情報なら、「これは取っておこう」と思ってもらえます。むしろ「この情報が途切れたら困る」とまで感じてもらえたら理想的です。
ここで重要なのがバランス感覚です。片っ端から全員に送りつけると、いつどこで地雷を踏むか分かりません。だからこそ最初は個別的なアプローチにすべきです。具体的には、次のサイクルを回します。
- お役に立とうと思って送った情報が、ちゃんと響いているか確認する
- 「こういった情報はお役に立っていますか」「もっとこういう情報があればお伝えします」と聞く
- フィードバックをもとに、次に送る情報を調整する
送りっぱなしでは、お客様にとって嬉しいかどうか分かりません。とはいえ、わざわざ電話をかけて「昨日のメールいかがでしたか」と聞くのは重い。お客様も「そんなことで電話してこないでよ」となります。だから、別の用事のついでに、さりげなく一言添えて確かめるのがコツです。
「そういえば、あの情報お役に立ちましたか」と。「あれは外したな」「あれは響いたな」を積み重ね、ちょうどいいさじ加減を探っていくわけです。
これは実は、マーケティング部門が開封率やオプトアウト率を見ながらメール内容を改善しているのと同じ発想です。営業も一人ひとりのお客様との間で、独りよがりにならないよう確認する。ここが安全なプラスアルファの重要なポイントです。
②「成功の要件」と「失敗しない条件」を外に出す
2つ目は、お客様が求めている情報を「成功するために必要なもの」と「失敗しないために必要なもの」に集約することです。
お客様の成功の要件、そしてお客様にとってのリスクを研究し、その内容を商談や提案、日々のお役立ち情報の中に混ぜていく。ポイントは、自分が得た知識を自分の中だけにとどめず、外に出すという点です。
たとえば私がこうしてコラムを書いているのも同じ構造です。調査や現場から得た発見・気づきを自分の中に留めず外に出し、お客様の反応を見ている。
そして意識しているのは常に、「成功するにはどうすればいいか」と「失敗を避けるにはどうすればいいか」の2軸です。この2つに集約された情報を外に出して反応を見ることが、頼られる専門知識を磨くことにつながっていきます。
返信がなくても続ける、頼られる循環のつくり方
「頼られる営業はお客様からよく聞かれる」と言うと、「そもそも聞かれるためにどうするのか」という話になります。だからこそ、私は「リクエストされていないけれど、ちょっと送ってみました」という一歩を勧めています。案外、多くの営業がやらないけれど、やった方がいいことです。
具体的には、こんな一言を添えて送ります。
「最近こういうことを調べてみたのですが、お役に立てればと思い共有させていただきます」
新規のお客様の場合、返信が来ないケースが多数だと思います。しかし既存のお客様なら返してくれることも増えます。
返信をいただけたら、別の場面で会話するときに「先日はご返信ありがとうございました」と触れ、送った情報が的を射ていたかを確認しつつ、次に送る情報の改善とバージョンアップを重ねていきましょう。
ポイントは繰り返しになりますが、お客様から求められているわけではないけれど、こちらから送ること。そして、お客様が嫌がらないバランスを保ちながら情報発信を続けることです。通常はマーケティング部が担う役割を、いち営業として、お客様との間で回していくイメージです。
これを続けていると、ふとした瞬間にお客様の方からいろいろ質問されるようになります。「ああ、これが頼られるということか」と実感できる日が、きっと訪れます。センスや才能ではなく、仕組みとして回せば誰でも再現できる。それが誠実なプラスアルファの本質です。

「頼られる営業」を仕組みで再現しませんか
AIが当たり前になるほど、人間の営業に残される価値は「文脈の接続力」と「誠実なプラスアルファ」に集約されていきます。これらは根性や気合ではなく、フィードバックのサイクルという仕組みで再現できるものです。
トレテクでは、営業スキルとAIを掛け合わせ、属人化しない「頼られる営業」の仕組みづくりをご支援しています。「うちの営業をどう強化すればいいか分からない」「AI時代の営業役割を整理したい」という中小企業の経営者・営業管理職の方は、ぜひ一度ご相談ください。貴社の現場に合わせた具体的な進め方を一緒に設計いたします。
