売れない営業ほど「お客様の発注経験」を無視する 相手の経験値に合わせた商談の型

「同じ提案なのに、刺さるお客様と刺さらないお客様がいる」——その違い、お客様の発注経験で説明できます。
今回は私の経験をもとに、発注に慣れたベテランと、慣れない初心者で「響くポイント」がどう変わるのかを整理しました。本記事を読めば、相手の経験値に応じて商談アプローチを切り替える、再現性のある営業の型が手に入ります。
発注経験の多少は「思ったほど差はない」という事実
皆さんはこうお考えではないですか?「発注経験が豊富なお客様と、初めてのお客様では、見ているポイントがガラッと違うはずだ」と。
ところが、実はかなり違い、「まったく別人のお客様」とみなすほどの派手な差ではなかったのです。
ここが、現場感覚との重要なギャップです。営業をやっていると「このお客さん慣れてるな」「この人は初めてだな」と体感的に感じます。だからこそ、つい対応を極端に変えたくなる。
しかし、実際は「押さえるべき基本の型は、相手の経験値が変わってもそう大きくはブレない」という事実です。
まず大前提として、これを覚えておいてください。経験値はあくまで「考慮すべき1つの要素」であり、商談の根幹をひっくり返す要素ではない。ここを誤解すると、相手を見て対応を変えすぎて、かえって軸のない営業になります。
発注ベテランが敏感に反応する「時間」という尺度
その上で、明確に出る傾向の1つが「時間に関する要望」です。
発注経験が多いお客様ほど、時間に関連した要素に敏感です。具体的には次の2点です。
- 適切なタイミングで連絡をくれること
- レスポンスが早いこと
理由はシンプルです。買い慣れている人には「だいたいこう進むはずだ」という全体像と相場感があります。だから、そのイメージより遅れると即座にストレスを感じる。逆に言えば、ベテランほど判断軸がすでに固まっているということです。
ここに、高単価商材を扱う営業の落とし穴があります。判断軸が定まったベテランは「あとは値段だね」になりやすいのです。困りごとは少なく、書類のことも理解している。となると「で、いくら?」という会話に直行する。これでは営業の介在余地がほとんどありません。
だからこそ、価格勝負に持ち込ませない武器として「時間」が効きます。気持ちよく、適切なタイミングでやり取りができる相手だと示すこと。これは発注経験が多い人ほど明確に価値として感じてくれる、覚えておくべきポイントです。
発注初心者が求めているのは「リスク回避」と「負担の軽減」
一方、発注経験が少ないお客様はどうか。彼らの中には確固たる判断軸がありません。「そもそもどう考えればいいかわからない」状態です。
こういうお客様には、コミュニケーションの回数を増やし、情報を提供して理解を深めてもらうのが基本です。「初めてでよくわからないので教えてください」に対し、丁寧にレクチャーする。これは喜ばれます。
ただし、ここに見落としがちな注意点があります。調査の別項目では、発注経験が少ない方ほど「やることが膨大だ」と感じやすい傾向が出ました。これも見なきゃ、あれもチェックしなきゃ——と負担を感じている。つまり、営業が「やり取りを増やそう」としても、無尽蔵に時間をもらい続けるのは難しいのです。
そこで初心者に効くのが、次の感覚を持ってもらうことです。
- この人と一緒に仕事を進めれば、無駄なく前に進めそうだ
- この人といると、負担を和らげてくれそうだ
ベテランが「相場感に対する速さ・遅さ」で判断するのに対し、相場感のない初心者は「負担を軽くしてくれそうか」というポイントに非常に温かく反応します。ここが、初心者攻略の型です。
私が初心者のお客様に必ずやる「相場提示」と「リスクの先回り」
ここからは、私自身の実践の話です。私の会社が扱うのは営業のトレーニングやコンサルティングですが、これは「過去にやったことがない」というお客様の割合が実は多いジャンルです。発注経験が少ないお客様と相対することが大半なのです。
そこで私が必ず意識しているのが、次の2つです。
- 相場感をこちらから提示する:「他社さんではこういうふうにやっていますよ」と伝える。初めてで何もわからないお客様にとって、判断の物差しを差し出してもらえるのは非常にありがたいことです。
- リスク要因を先回りして潰す:買う側にとって、失敗は怖いものです。だからこそ、起こりうる落とし穴を細かく知り尽くし、それを避けるための方策を提示する。これがお客様の安心に直結します。
私自身、慣れないジャンルで何かを買うときは、不安やリスクがとにかく気になります。そこに対して「これなら安心して任せられる」と思わせてくれる相手が現れると、本当に心強い。だからこそ、リスク要因と落とし穴については、かなり気を使って丁寧にコミュニケーションするようにしています。
ベテランには「過去の判断軸」を事実とセットで深掘りする
では、時々現れるベテランのお客様にはどう向き合うか。
判断軸が固まっているベテランに対して、私が逆手に取るのが「その判断軸を、過去の事実とセットで聞き出す」というアプローチです。
たとえば「以前から営業研修をよくやっている」という会社であれば、こう尋ねます。
- これまではどんな基準で会社を選んでこられたのですか
- それまではどういうトレーニングをやってこられたのですか
- なぜそれを選んだのですか、どういう考え方で選んだのですか
これを深掘りしていくと、面白い気づきが生まれます。「これまで頼んでいた会社とうちは、ポジションが違うのに、なぜ今回こちらに声をかけてくださったのか?」——この問いが、固まった判断軸の中に潜む変化のニーズを浮かび上がらせるのです。
既存の判断基準を正確に理解した上で営業を進めること。これが、価格勝負に逃げないための重要な型です。
ただし注意点があります。ベテランは「いちいち説明するのが面倒だ」と感じがちです。だからこそ、最初に効いてくるのが冒頭の「時間」です。スピードとタイミングで気持ちよくコミュニケーションできる相手だと示してから、過去の判断軸を丁寧にうかがう。この順番が肝心です。
経験値で対応を変える前に、まず「型」を持つこと
本記事のポイントを整理します。
- 発注経験で見るポイントは変わるが、基本の型がブレるほどの差ではない
- ベテランは「時間」に敏感。価格勝負を避ける武器になる
- 初心者は「リスク回避」と「負担軽減」を求める。相場提示と先回りが効く
- ベテランには過去の判断軸を事実とセットで深掘りする
努力や気合で「なんとなく相手に合わせる」のではなく、相手の経験値という1つの軸で、やるべきことをあらかじめ仕組み化しておく。これが、センスに頼らず誰でも再現できる商談の型です。
私のトレテクでは、こうした営業の型を、御社の商材・顧客に合わせて設計し、組織として再現できる仕組みに落とし込むご支援をしています。「うちの営業は属人的で、できる人とできない人の差が激しい」とお悩みの社長・営業管理職の方は、ぜひ一度ご相談ください。お問い合わせをお待ちしております。

