「楽で安心な質問術」で、お客様の予算や決裁権者の”はぐらかし”を抑制する

「今回のご予算は、いかほどでお考えですか?」
「つきましては、最終的な意思決定は、どなたがされるのでしょうか?」
営業の現場で、核心に迫るこれらの質問を投げかけた瞬間、お客様の口が急に重くなった…。そんな経験はありませんか?
「いやー、予算はまだ何も決まっていなくて。まずは御社からのベストなご提案を拝見したいですね」
「意思決定ですか? 基本的には私が進めますので、ご心配なく」
のらりくらりとした返答。核心情報が何一つ取れないまま、手探りで提案書を作るしかない虚しさ。そして、「これ以上踏み込むと嫌われるかもしれない」という恐怖から、それ以上何も聞けなくなってしまう…。
この悪循環は、多くの営業担当者を、そして彼らを率いる経営者やマネジャーを悩ませています。
この記事は、そんな「はぐらかし」に遭い、商談を前に進められずにもどかしい思いをしている、すべての方々のために書きました。
この記事を読めば、お客様がなぜはぐらかすのかという心理の根本を理解し、「はぐらかす」よりも「正直に話す」方が、お客様にとってメリットがあると思わせるための、具体的で、明日からすぐに使える質問のテクニックが手に入ります。
お客様は、あなたを嫌っているわけではない
まず、大前提として知っておいていただきたいことがあります。お客様があなたの質問をはぐらかすのは、多くの場合、あなたのことや、あなたの会社が嫌いだからではありません。ましてや、最初から契約する気がない、というケースはむしろ少数派です。
お客様の「はぐらかし」の正体。それは、「とっさの防御反応」であり、「一時的な現実逃避」に過ぎないのです。
ではなぜ、お客様は防御するのでしょうか。それは、あなたの質問に対して正直に答えることに、
「ちょっと危ないかも」
「ちょっと損をするかも」
という、小さな懸念や不安を感じているからです。
「予算を正直に伝えたら、その上限ギリギリの、足元を見た提案をされるんじゃないか…」
「自分が決裁者ではないと白状したら、『じゃあ話にならない』と軽く扱われるんじゃないか…」
「教えた情報が、何かよからぬ展開に使われてしまうのではないか…」
こうした小さな不安が、お客様の口を重くさせているのです。
人間には「認知的不協和」という心の働きがあります。答えようか、どうしようか迷ったとき、人は最も「楽で安全な選択肢」を選ぼうとします。
そして多くの場合、お客様にとって、とりあえず質問の意図をかわし、当たり障りのない返答をする「はぐらかし」こそが、最も楽で安全な選択肢になっているのです。
解決策は「より楽で、より安全な選択肢」を提示すること
お客様が「楽で安全な選択肢」として「はぐらかし」を選んでいるのなら、私たちがやるべきことは一つです。
それは、「はぐらかす」という選択肢よりも、さらに「楽で、もっと安全な選択肢」を、こちらから用意してあげることです。
お客様に、
「ああ、それなら答えられるな」
「むしろ、答えた方が自分にとって損がないな」
と思えるような、巧みな質問をデザインする。これこそが、営業担当者に求められる、本質的なヒアリングの技術なのです。
ここからは、具体的なケースに沿って、その質問術を見ていきましょう。
ケース1:「決裁者」を聞き出すための質問術
「どなたが決められるんですか?」というストレートな質問は、相手に「あなたは決定権がないんですね」というメッセージを伝えかねず、担当者のプライドを傷つけ、防御壁を厚くさせるリスクがあります。
そこで、次のようなステップを踏んでみましょう。
ステップ①:権限がないと答えられない「二択」を投げる
まず、わざと相手が一人では判断に迷うような、二択の質問を投げかけます。
「例えばですが、Aプラン(300万円)と、それに50万円プラスして手厚いサポートが付くBプラン、もしどちらかを選ぶとしたら、御社にとってはどちらがより望ましいとお感じになりますか?」
ステップ②:相手が困ったところで「逃げ道」を用意する
もし目の前の担当者に完全な決定権がなければ、「うーん、そうですね…」と、即答できずに困るはずです。この、お客様が少しだけ不安定になった瞬間がチャンスです。すかさず、優しい逃げ道を用意してあげましょう。
「そうですよね、これはすぐにどちらかを選ぶのは難しいですよね。ちなみに、この件は、他の方とご相談されたりするのでしょうか?」
ステップ③:自然な流れで深掘りする
この質問をされると、お客様は「即答できない自分」に対する完璧な言い訳(方便)を手に入れることができます。
「はい、これは来週の〇〇会議にかけることになっておりまして…」と、非常にスムーズに、次のステップを教えてくれるでしょう。 そうなればしめたもの。
「さようでございますか。ちなみにその会議には、どのような部署の方がご参加されるのですか?」
と、極めて自然な流れで、本当の意思決定プロセスを探っていくことができるのです。
ケース2:「予算」を聞き出すための質問術
「ご予算はいくらですか?」というオープンな質問も、お客様に「どう答えるのが一番損をしないか」と考えさせてしまうため、はぐらかされやすい典型例です。
ここでも、「答えた方が安全だ」と思える選択肢を、こちらから提示します。
聞き方A:「上限ライン」で安全地帯を作る
「様々なご提案が可能ですが、さすがにこの金額を超えると“検討の対象外”になってしまう、という上限のラインがあれば、ぜひ教えていただけますでしょうか?その方が、私どもも的を射たご提案ができますので」
この聞き方をされると、お客様は「なるほど、上限を伝えないと、とんでもなく高額な、的外れな提案が来てしまうリスクがあるな。それなら、上限だけでも伝えておいた方が“安全”だ」と感じます。
聞き方B:「上限」と「安心」のセットで本音を引き出す
聞き方Aでお客様が「上限を伝えると、そのギリギリの提案をされるのでは?」と懸念している気配を感じたら、さらに一歩踏み込みます。
「承知いたしました。では、その『これを超えたらNG』という上限ラインと、もし『この金額に収まったら嬉しいな』という“安心ライン”がおありでしたら、そちらも合わせてお聞かせいただけますでしょうか?」
「上限」と「安心(理想)」という2つの物差しを提示することで、お客様はより本音を話しやすくなります。
聞き方C:「金額の二択」で当たりをつける
「もし差し支えなければ、ご予算の水準として、例えばですが500万円と1000万円でしたら、どちらのイメージに近い、といったことはございますか?」
オープンな質問に比べて、二択であればお客様は「うーん、どちらかと言えば500万円の方かな」といった形で、はるかに答えやすくなります。
まずは「上限ライン」を聞くことから始めてみよう
はぐらかすお客様の心を動かす、新しいアプローチのヒントは掴めたでしょうか。 大切なのは、お客様を「問い詰める」のではなく、お客様が安心して答えられる「安全な道」を、こちらが優しく照らしてあげることです。
もし、あなたの会社の営業担当者が、お客様からの「はぐらかし」に悩んでいるのなら、まず一つのことから試させてみてください。
次の商談で、予算の話になったとき、いつものように「ご予算は?」と聞くのをやめて、こう切り出させてみるのです。
「もし、この金額を超えたら“検討の対象外”になる、という上限のラインがおありでしたら、教えていただけますか?その方が、お互いにとって無駄のない、的を射たお話ができますので」
この一言が、お客様の固い防御の壁を崩し、売上に繋がる本質的な対話への扉を開く、魔法の鍵になるかもしれません。
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