「予算は未定です」と言われたら? はぐらかす顧客から本音を引き出す特定質問術

「ご予算は、おいくらくらいでお考えですか?」

勇気を出して、核心に触れる質問を投げかけたあなた。しかし、お客様の口から返ってきたのは、「いやー、まだ全然決まってなくて…」という、掴みどころのない一言。

(……決まってない、か。どうしよう、これ以上踏み込んでいいものか…)

そんな思考が頭をよぎり、次の言葉が出てこない。結局、一番知りたい情報を得られないまま、当たり障りのない話をして商談は終了。会社に戻る道すがら、「なぜ、あの時もっとうまく聞けなかったんだ…」と、自分の不甲斐なさにため息をつく…。

この記事は、まさに今、このような壁にぶつかっている営業担当者、そして「うちの営業は、どうしていつも肝心なことを聞いてこないんだ!」と歯がゆい思いをされている経営者や営業マネジャーの方々のために書きました。

この記事を最後まで読めば、曖昧な答えではぐらかすお客様からでも、契約に必要な重要情報をスムーズに引き出し、ヒアリングの精度を劇的に向上させるための、具体的な質問テクニックがわかります。

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目次

なぜ、あなたの営業は「探り合いを」脱せず、本音を聞き出せないのか

商談も中盤に差し掛かり、雰囲気も和んできた。ここぞというタイミングで、あなたは切り出します。

「ちなみに、今回の件は、どなたが最終的にご判断されるのでしょうか?」
「導入のスケジュール感としては、いつ頃をイメージされていますか?」

これらは、売上目標を達成し、安定した受注を獲得するために、営業として絶対に確認しなければならない重要項目のはずです。しかし、お客様の反応は、なぜかいつも煮え切らない。

「うーん、まあ、最終的には社長決済かな…」
「スケジュールは、まあ、いいのがあれば、すぐにでも…」

まるで、のれんに腕押し。手応えのない返答に、焦りだけが募っていきます。焦れば焦るほど、「しつこいと思われたくない」「これ以上聞いたら嫌われるかもしれない」という恐怖心が、あなたの口を重くさせる…。

多くの経営者の方が嘆くのは、この「あと一歩が踏み込めない」営業の姿です。お客様の役に立ちたいという気持ちは人一倍強く、商品知識も豊富。

しかし、肝心の「お客様の懐事情」や「意思決定のプロセス」といった、契約の根幹に関わる情報をヒアリングできないため、提案が的外れになったり、いつの間にか競合に契約を奪われたりしてしまう。

この悪循環を断ち切らない限り、会社の売上が安定的に伸びていくことはありません。

なぜ空回りする? やってはいけない「2つの質問」への固執

なぜ、あなたの営業は、お客様の本音を引き出せないのでしょうか。それは、多くの営業が、知らず知らずのうちに「2つの質問法」だけに頼り切ってしまっているからです。

勘違い①:「オープンクエスチョン」なら何でも話してくれるという幻想

「オープンクエスチョン(5W1Hを使った自由回答形式の質問)」は、相手に自由に話してもらうための基本のキです。「御社の課題は何ですか?」といった質問は、確かに有効な場面もあります。

しかし、お客様がまだあなたを信頼しきっていなかったり、そもそも課題が明確でなかったりする場合、この質問はあまりにも漠然としています。結果として、「課題と言っても、色々ありまして…」といった、さらに曖昧な答えが返ってくるだけ。

これでは、会話が深まるどころか、振り出しに戻ってしまいます。

勘違い②:「クローズドクエスチョン」で追い詰めてしまう恐怖

一方、「クローズドクエスチョン(はい/いいえで答えられる質問)」はどうでしょうか。「ご予算は300万円でよろしいですか?」といった質問は、確認作業には有効です。

しかし、これを多用すると、お客様は「尋問されている」「追い詰められている」と感じ、心を閉ざしてしまいます。特に、まだ検討の初期段階で具体的な数字や答えを持っていないお客様に対して、「イエスかノーか」を迫るのは、あまりにも酷な話です。

オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン。この二つは、決して間違ったテクニックではありません。しかし、これ「だけ」に頼っていると、お客様がはぐらかした瞬間に、営業は思考停止に陥ってしまうのです。

受注を掴む営業の「特定質問」~ 思考停止を打ち破る3つのステップ

では、デキる営業は、お客様がはぐらかした時に、どのように会話を前に進めているのでしょうか。彼らが無意識的に、あるいは戦略的に使っているのが「特定質問」です。ここでは、明日からあなたの会社の営業チームが実践できる、3つの具体的なステップをご紹介します。

ステップ1:いきなり完璧を目指さない。「補足」で特定質問を使う

いきなり気の利いた、美しい言い回しの質問を繰り出す必要はありません。むしろ、それは不自然でお客様を警戒させてしまう可能性すらあります。

まずは、あなたが思いつく聞き方で、ストレートに聞いてみてください。「ご予算はおいくらですか?」と。そして、予想通り「まだ決まってないんですよ」という答えが返ってきたら、そこからが本番です。

「なるほど、まだ流動的なのですね。ちなみに、お話を進める上での参考にしたいのですが、ざっくりとで結構ですので、例えば300万円と1000万円だったら、どちらの金額感に近いイメージでしょうか?」

このように、後から「選択肢」を付け加えてあげるのです。これを「選択式のクローズドクエスチョン」と言います。

いきなり金額を言えと言われると固まってしまうお客様も、「どちらかと言えば…」という形なら、心理的なハードルが下がり、答えやすくなります。「うーん、それなら300万円の方かな」という一言が引き出せれば、ヒアリングは大きく前進します。

この「補足的に使う」という意識を持つだけで、営業の心は驚くほど軽くなります。「決まってない」と言われても、「よし、チャンスだ」と思えるようになるのです。

ステップ2:お客様の「言い訳」を予測し、質問を準備しておく

  • 結論: お客様がはぐらかしそうな重要項目について、あらかじめ「切り返しの質問」を用意しておきましょう。
  • 理由: 商談中にゼロから質問を考えると焦ってしまいます。事前に準備しておくことで、どんな答えが来ても冷静かつ効果的に対応でき、会話の主導権を握り続けられます。
  • 一歩目: 「予算」「スケジュール」「決裁ルート」「競合」の4項目について、はぐらかされた時のための「特定質問」を、それぞれ一つずつノートに書き出してみましょう。

特に、決裁者クラスの方とお話しする際、彼らは立場上、予算やスケジュールといった意思決定に関わる情報を、条件反射ではぐらかしてしまう傾向があります。あるデータでは、その割合は担当者の方の約2倍とも言われています。

だからこそ、事前準備がものを言います。とはいえ、無限に準備するのは不可能ですから、営業の成否を分ける重要項目に絞りましょう。

例えば、「スケジュールの話」。

「導入時期はいつ頃ですか?」と聞いて、「まだ決まっていません」と返ってきたとします。そこで引き下がるのではなく、用意しておいた特定質問をぶつけます。

「承知いたしました。もし仮に、導入していただく価値があると思っていただけた場合、年内にスタートするのと、来年度になってからスタートするのでは、どちらが御社にとって現実的だと思われますか?」

このように、客観的な「数字」や「時期」を盛り込んだ選択肢を提示することで、お客様は頭の中で具体的なシミュレーションを始めざるを得なくなります。

あるいは、「課題の話」。

「御社の課題は何ですか?」と聞いて、「色々あるんですよね…」と返ってきたら、すかさずこう付け加えます。

「色々おありなのですね。ちなみに、『特にここ1ヶ月くらいで』、社内でよく話題に上がっている課題というと、どのようなことでしょうか?」

これは「条件付きのオープンクエスチョン」です。「ここ1ヶ月」という条件を付けることで、漠然としていたお客様の思考に「枠」をはめ、答えを特定しやすくしてあげるのです。

これらを踏まえ、「予算」「スケジュール」「決裁ルート」「競合」の4項目について、はぐらかされた時のための「特定質問」を、それぞれ一つずつノートに書き出しておきましょう。

ステップ3:「嫌われたくない」という思い込みを捨てる勇気を持つ

ここまで読んで、「理屈は分かったけど、やっぱりお客様に嫌われるのは怖い…」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。その気持ちは、痛いほどよく分かります。

しかし、少しだけ冷静に考えてみてください。

お客様のことを深く理解しないまま、的外れな提案をしてしまうことと、少し勇気を出して踏み込んだ質問をし、お客様に心から喜ばれる提案ができること。経営者として、営業として、どちらが本当にお客様のためになるでしょうか?

一時的に「少し突っ込んでくるな」と思われるリスクを恐れるあまり、お客様の貴重な時間を奪い、結局何の役にも立てないことの方が、よほど大きな問題です。

はぐらかされても引き下がらない営業と、すぐに諦めてしまう営業、最終的にお客様が情報を託したくなるのは、間違いなく前者です。

踏み込む勇気が出ない時は、「枕詞」を使いましょう。「なぜ、この質問をするのか」という意図を誠実に伝えれば、いきなりお客様が機嫌を損ねることは、まずありません。その小さな勇気が、あなたの提案の質を劇的に変え、ひいては受注という大きな結果に繋がるのです。

まずは「枕詞」を手帳に書き出すことから

特定質問の可能性を感じていただけたでしょうか。

大切なのは、知識として頭に入れることではなく、実際の現場で使ってみることです。とはいえ、いきなり全てを実践するのは難しいでしょう。

でしたら、まずはたった一つ、最も簡単で、しかし最も効果的なことから始めてみませんか。

次の商談の前に、手帳やノートに、あなただけの「枕詞」を一つ、書き出してみてください。

「〇〇様にとって、最高のパートナーとなるために、少しだけ社内の体制についてお伺いしてもよろしいでしょうか?」

たったこれだけです。この「お客様のため」という一言が、あなたに踏み込む勇気を与え、お客様の心を開く鍵となります。

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本質的な営業力で、どんな顧客からも選ばれるチームを作る

あなたの会社の営業チームは、どんなタイプのお客様とも冷静かつ効果的に対話し、信頼関係を築き、安定的に契約を獲得することができているでしょうか?

相手のペースに合わせ、時には雄弁に語り、時には「特定質問」を武器に、お客様の心の奥にある本当のニーズを引き出していく。それこそが、これからの時代に求められる、本質的なコミュニケーション能力であり、企業の売上を支える営業力です。

もし、

  • どんなお客様にも対応できる、強い営業チームを育てたい…
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と、本気でお考えの経営者・営業マネージャーの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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