営業の”情報を出し尽くした感”をお客様に感じさせないための、話し方のコツ

「素晴らしいご提案ですね。一度社内に持ち帰り、検討しますので、お待ちください」

渾身のプレゼンテーションを終えた後、お客様からこの言葉を投げかけられ、深く、そして静かに、ため息をついた経験。中小企業の経営者や営業マネジャーの方であれば、一度や二度ではないはずです。

この一言は、丁寧な言葉の裏に、分厚く冷たいシャッターが下りる音を隠しています。この瞬間から、商談の主導権は完全に相手の手に渡り、こちらからは好き勝手にアプローチできなくなる。「待つ」という、最も歯がゆい時間を過ごすことになるのです。

この記事を読めば、なぜお客様がその言葉を述べるのかという根本的な構造を理解し、むしろお客様の方から「もっとあなたの話を聞かせてほしい」と前のめりになり、安定的に受注へと繋げるための、本質的なアプローチがわかります。

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目次

“持ち帰り検討”の連続 見込みが静かに去っていく時

商談ルームの、あの独特の空気。あなたは、情熱を込めてサービスの魅力を語り終えました。しかし、目の前のお客様は、穏やかな笑みを浮かべながらも、決して本心を見せません。

「ありがとうございます。大変よくわかりました。前向きに検討させていただきます」

こうして、一度は持ち帰られてしまう。あなたは、カレンダーに「〇月〇日、A社様フォロー」と書き込みます。しかし、約束の日が近づき、意を決してかけた電話は、留守電に繋がるか、「担当はあいにく席を外しておりまして…」という事務的な声に阻まれる。送ったメールへの返信は、一向に来ない。

気がつけば、あれから1ヶ月。あの商談は、一体何だったのだろうか。カレンダーに書かれたタスクの文字が、まるで自分の無力さを責めているかのように見えてくる…。

この“持ち帰り検討”という名の、事実上の「塩漬け」状態。これこそが、営業という仕事において、最も静かに、しかし確実に売上の機会を奪っていく、恐ろしい罠なのです。

無理やり結論を迫るわけにもいかず、かといって待ち続けても何も進まない。このジレンマこそが、多くの営業担当者の心をすり減らし、会社の成長を鈍化させる元凶と言っても過言ではないでしょう。

「検討します」が生まれるシンプルな理由

そもそも、なぜお客様は「検討します」と言うのでしょうか。その心理と構造を、少しだけ深く覗いてみましょう。

お客様がこの言葉を口にするとき、その頭の中では、無意識のうちに「天秤」が動いています。

  • 天秤の左側: 「目の前の営業担当者と、これ以上やり取りを続けること」
  • 天秤の右側: 「自分でじっくり考える、もしくは社内の誰かに相談すること」

そして、「検討します」という言葉が出てくるのは、この天秤が「右側」に傾いた瞬間です。

つまり、「もう、この営業担当者から聞くべきことは一通り聞いたな。これ以上話していても、新しい情報は出てこないだろう」 と判断されてしまった、ということなのです。

私はこれを「出尽くした感」と呼んでいます。

お客様が「出尽くした感」を抱いてしまったら、もうおしまいです。彼らにとって、あなたとの対話は「終了したイベント」になります。あとは、自分たちの都合の良いタイミングで、自分たちの知識の範囲内で判断を下すだけ。

これでは、本来あなたが提供できるはずだった、より深い価値や、お客様自身も気づいていない課題解決のヒントを届けるチャンスは、永遠に失われてしまいます。

では、どうすればこの「出尽くした感」を防ぎ、お客様の天秤を常に「左側」、つまり「あなたと話し続けたい」という方へ傾かせ続けることができるのでしょうか。

「検討します」を封じ込め、受注を引き寄せる3つの戦略

小手先のクロージングテクニックに頼る必要はありません。むしろ、安易な値引きやキャンペーンは、会社の利益を削るだけの“麻薬”であり、営業担当者の思考停止を招くだけです。本質は、もっとシンプルです。

戦略①:「すべてを語らない」という勇気を持つ

営業担当者は、お客様に「この人は、まだ奥に何か重要な情報を持っていそうだ」と感じさせる、ある種の“ミステリアスさ”を演出することが重要です。

多くの営業担当者は、お客様を不安にさせまいと、持っている情報をすべてテーブルの上に並べようとします。しかし、それは逆効果です。購買に必要な材料がすべて出揃ったとお客様が感じた瞬間、「出尽くした感」が生まれ、「では、あとはこちらで考えます」という流れになってしまうのです。

人は、すべてが見えているものよりも、まだ見えない部分があるものにこそ、興味と価値を感じる生き物だからです。すべてを語り尽くした瞬間、お客様の関心は急速に失われます。

そうではなく、情報の出し入れの主導権は、常に営業側が握っておくべきです。お客様から「この人にもっと話を聞いてみたい」「相談したいことが、まだ山ほどある」と思われている限り、商談が一方的に打ち切られることはありません。

いたずらにコミュニケーションを長引かせるわけではなく、お客様が本当に納得して契約するために必要な情報を、適切なタイミングで届けられる関係性を維持する、ということです。

まずは次回の商談で、用意した説明を終えた後、あえて「…と、ここまでは基本的なお話なのですが」と一言付け加え、一瞬だけ間(ま)を作ってみましょう。

戦略②:“商品のプロ”から“お客様の成功のプロ”へ進化する

  • まずできる一歩目:

例えば、非効率な業務を効率化するためのITツールを販売しているとします。お客様は皆、「業務を効率化して、うまくやりたい」と考えています。しかし、なぜ同じツールを導入しても、驚くほど生産性が上がる会社と、全く使いこなせずに終わる会社に分かれてしまうのでしょうか?

ここで、商品のマニアックな知識ではなく、「お客様が成功するパターンと、失敗するパターンの違い」を、様々な角度から語れる専門家になりましょう。

なぜなら、お客様が本当に求めているのは、商品のスペックではなく、それを使って自社が確実に成功するための「再現性のある方法論」だからです。

この「うまくいく会社と、いかない会社の違いが生まれる分岐点」について、あなたはどれだけ深く、具体的に語れるでしょうか。

「弊社のサービスを導入していただければ、うまくいきますよ」

これは、誰にでも言える、最も価値の低い言葉です。そうではなく、

「実は、このツールを導入してもうまくいかない会社には、3つの共通点があるんです。一つ目は…」

「逆に、短期間で大きな成果を出される会社は、導入前に必ず“あること”を徹底されています。それは…」

と語れるかどうか。お客様は、失敗したくありません。自分の会社が「うまくいかない側」に入ることを、何よりも恐れています。その分かれ道を熟知している専門家が目の前に現れたらどうでしょう?「社内の人間に相談しても、この答えは得られない。この人との対話のチャンスを、絶対に手放してはいけない」と感じるはずです。

まずは、これまで契約に至ったお客様が、導入前にどんなことで悩み、何を乗り越えて成功したのか、その「ストーリー」を3社分、具体的に書き出してみましょう。

戦略③:“説得”ではなく“議論”で、お客様をパートナーに変える

「買ってください」と説得するのではなく、「どうすれば、御社の課題が根本的に解決されるのか」というテーマで、お客様と深い“議論”をしましょう。

「今決めていただければ、特別に値引きします」というクロージングは、最後の最後の最後の手段です。これを最初に覚えてしまうと、営業はそれしかできなくなります。それは、会社の利益をただ垂れ流し、思考を停止させる行為に他なりません。

そうではなく、本当に価値のある営業が行うべきは、お客様との「ディスカッション」です。一方的なプレゼンテーションは営業とお客様の間に壁を作りますが、共に課題を考える“議論”は、お客様を当事者に変え、あなたを信頼できるパートナーとして認識させるからです。

「弊社のサービスを導入すれば、すべて解決します」ではなく、「もし仮に、弊社のサービスが世の中に存在しなかったとしたら、御社はこの課題をどう乗り越えようとされますか?」と一緒に考えてみましょう。

こうすることで、商談の時間は、単なる商品説明の時間から、「お客様の課題解決に向けたコンサルティング」の時間へと昇華します。この過程で、お客様は自社の課題の根深さや、解決の難しさを再認識します。

そして、その議論をリードし、的確な示唆を与えてくれるあなたに対して、絶大な信頼を寄せるようになるのです。この信頼関係こそが、最終的に揺るぎない受注に繋がります。

次回の商談で、商品説明の時間を5分だけ削り、その代わりに「そもそも、なぜこの課題は、これまで解決が難しかったのだと思われますか?」という、お客様に当事者意識を持ってもらうような質問を投げかけてみましょう。

まずは「なぜ?」と問いかける勇気を

ここまで読んで、新しいアプローチのヒントは掴めたでしょうか。大切なのは、知識として知ることではなく、実際の現場で試してみることです。

もし、いきなり全てを実践するのが難しいと感じるのであれば、まずはたった一つ、しかし最も重要なことから始めてみてください。

それは、次回の商談で、お客様ともっと「議論」する時間を作ることです。

商品説明を少しだけ早く切り上げて、その代わりに、お客様の課題の「本質」に迫る問いを投げかけてみるのです。

「なぜ、この問題が起こっているのでしょうか?」

「これまで、どんな手を打ってこられたのですか?」

「その中で、何が一番の障壁になりましたか?」

この、たった数分の「議論」が、お客様のあなたに対する見方を変え、一方通行だったコミュニケーションの流れを劇的に好転させる、大きなきっかけになるかもしれません。

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どんな相手からも「あなたから買いたい」と言われる営業組織へ

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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