自信がない営業が、お客様の考えを深掘りできない「根本原因」

「お客様の話を、もっと深く聞かなければ…」

そう頭では痛いほどわかっているのに、気づけば自分が一方的に話してしまっている。

「沈黙が怖くて、つい余計なことを喋ってしまった…」

商談が終わった後、そんな自己嫌悪にも似た後悔に、一人、ため息をつく。

これは、多くの営業担当者が抱える、根深く、そして深刻な悩みです。お客様の懐に一歩踏み込めず、表面的な会話だけで終わってしまう。これでは、安定した売上や受注に繋がるはずがありません。

この記事は、そんな「深掘りが苦手」という悩みの根源にある“自信のなさ”と正面から向き合い、小手先のテクニックではなく、お客様から心から信頼され、自然と本音を話してもらえるようになるための、本質的な心構えと具体的な技術について書きました。

今回のコラムの超要約資料を確認する

目次

「聞かなきゃ」と焦るほど、口が勝手に喋り出す…

あなたは、お客様との商談の席にいます。お客様が、ぽつり、ぽつりと、今抱えている課題について話し始めてくれました。あなたの頭の中では、サイレンが鳴り響きます。「ここだ!ここが深掘りする絶好のチャンスだ!」と。

しかし、その瞬間、別の思考があなたの脳を支配します。

「何か、気の利いた質問をしなきゃ…」

「ここで的確なアドバイスをしないと、デキる営業だと思われない…」

「お客様を退屈させちゃいけない、何か面白い話を…」

焦りと不安で、頭の中は真っ白。結局、あなたは、お客様が話し終わるか終わらないかのタイミングで、食い気味にこう言ってしまうのです。

「ああ、それ、すごくよくわかります!でしたら、弊社のこのサービスが、まさにピッタリでして…」

その瞬間、お客様の表情が、ほんの少しだけ曇ったことに、あなたは気づいています。お客様が本当に言いたかったことは、もっと別の、もっと深いところにあったのかもしれない。ああ、またやってしまった…。

帰り道、「今日の商談の録音を聞き返したら、8割方、自分の声で埋め尽くされているんだろうな…」と想像し、ゆううつな気分になる。この悪循環から、一体どうすれば抜け出せるのでしょうか。

深掘りできない、たった一つの根本原因

これまで、数多くの営業組織をご支援してくる中で、お客様の話を深掘りできる人と、そうでない人の違いはどこにあるのか、ずっと観察してきました。もちろん、様々な要素はありますが、突き詰めると、その差はたった一つの言葉に集約されるように思います。

それは、「自信」です。

もう少し正確に言うと、「自信がないことによる不安」が、あなたから「聞く力」を奪っているのです。

商談の場において、不安な状態にある人間は、「何かしなければ」「何か価値を提供しなければ」という強迫観念に駆られます。そして、最も手っ取り早い「何か」が、「自分が話すこと」なのです。

お客様の話をじっと聞き続ける、という行為は、自信がない人にとっては「何もしていない」のと同じように感じられ、耐え難い不安をかき立てます。

「いつまでも聞き役に回っていては、お客様に申し訳ない」

「早く何か提案しないと、無能だと思われるかもしれない」

この不安が、あなたを一方的なおしゃべりマシーンへと変えてしまうのです。では、まだ実績も経験も少なく、「自信を持て」と言われても持てない営業担当者は、どうすればこの呪縛を解くことができるのでしょうか。

“話す営業”から“聞く営業”へ。今日からできる3つの変革

自信がつくのを待っていたら、いつまで経っても深掘りはできません。自信がない「今」だからこそ、意識的に取り入れるべき思考法と技術があります。

変革①:「貢献」の定義を、根底から書き換える

「何か有益な情報を話すこと」が貢献ではありません。「お客様のことを、誰よりも深く理解しようと努める姿勢」そのものが、最大の価値提供であると信じましょう。

「ヒアリングはいいから、とっとと解決策を示してくれよ」というタイプのお客様が、一定数いらっしゃるのは事実です。

しかし、考えてみてください。こちらの状況や背景を理解しようともせず、ただ手っ取り早い解決策だけを求めるお客様と、長期的に良好なパートナーシップを築いていくことができるでしょうか。遅かれ早かれ、どこかで関係は破綻してしまう可能性が高いのではないでしょうか。

経営者として、マネジャーとして、我々が本当に増やしていくべきは、「うちのことをちゃんとわかってくれた上で、良い提案が欲しい」と考えてくださるお客様のはずです。

ほとんどのお客様は、自分のことを理解しようとしない人間からの、一方的な提案など求めていません。まず、自分の悩みや苦しみを真に理解してくれる、信頼できるパートナーを探しているのです。

そうであるならば、我々がまず持つべきは、「お客様を理解しようと努力する行為そのものが、お客様のためになるのだ」という、揺るぎない価値観です。

お客様の中には、社内で誰にも相談できず、孤立無援の状態で苦しんでいる方もいるかもしれません。そんな時、利害関係なく、ただ真剣に自分の話を聞き、理解しようとしてくれる存在がいるだけで、どれほど救われることか。

この価値観を腹の底から信じることができたなら、「聞き続けるのは申し訳ない」という不安は、「聞くことこそが私の仕事だ」という静かな自信に変わっていくはずです。

次回の商談の冒頭で、勇気を出してこう宣言してみてください。「本日は、御社に何かを売り込むのではなく、まず御社の現状をしっかり理解することに、ほとんどの時間を使わせてください」と。

変革②:「完璧な質問」という呪縛から解き放たれる

「整った、気の利いた質問をしなければならない」という完璧主義は、今すぐ捨ててください。そのこだわりが、あなたの口を重くし、思考を停止させています。

深掘りが苦手な人ほど、「何か気の利いた、華麗な質問をしなければ」という呪縛に囚われています。しかし、考えてみてください。あなたが逆の立場で、コンサルタントに何かを相談している時、立て板に水のごとく完璧な質問を投げかけられたいでしょうか。

それよりも、少し言葉に詰まりながらも、「それって、つまり、どういうことなんですか…?」と、必死にあなたを理解しようとしてくれる人の方に、誠実さを感じるのではないでしょうか。

あなたが頭の中で完璧な言葉を探している10秒の間に、対話の絶好のタイミングは流れ去っていきます。シンプルで、多少不格好であっても、素早く、素直に問いかける方が、何倍も価値があります。

商談は、クイズ大会ではありません。完璧な質問など、最初から存在しないのです。その幻想を追い求めるのをやめた時、あなたの心は驚くほど軽くなります。

お客様が何かを話した後、「なるほど…」と相槌を打ち、そこから意識的に3秒間だけ沈黙し、お客様の次の言葉を「待つ」という練習をしてみましょう。

変革③:あなたを守る「5秒の言葉」と「枕詞」

「整った質問」という呪縛から解放されたら、次に具体的な武器を手にしましょう。といっても、それは極めてシンプルなものです。

深掘りのための言葉は、長くある必要はありません。「5秒以内」で終わる、ごくごくシンプルなもので十分です。もし、それを口にするのが怖いなら、その前に「枕詞」を添えましょう。

【たった5秒の、質問言葉】

  • 「それは、なぜなんでしょうか?」
  • 「具体的には、どういうことでしょうか?」
  • 「もう少し詳しく、伺ってもよろしいでしょうか?」

たったこれだけです。これらの言葉は、高いスキルなど必要ありません。ただ、お客様の発言に対して、少しの間(ま)を置いて、問いかけるだけです。

もし、これすらも「なんだか詰問しているようで怖い」と感じるなら、その前に「枕詞」を付け加えてみてください。

【あなたの誠実さを伝える枕詞】

  • 「きちんと御社のことを理解した上で、お役に立ちたいので、伺ってもよろしいでしょうか?」

この一言を添えるだけで、あなたの質問は、単なる尋問から、「あなたを深く理解したい」という思いやりのメッセージへと変わります。これなら、自信がないあなたでも、勇気を出して口にできるのではないでしょうか。

短くシンプルな言葉は、相手に考える時間を与え、対話の主導権を自然に相手に渡すことができます。「枕詞」は、あなたの「聞きたい」という純粋な意図を、誠実に相手に伝えてくれます。

まずは「お守りの一言」を、手帳に書き出すことから

「深掘り」とは、お客様の心をこじ開けるための尋問テクニックではありません。それは、自信のなさからくる「自分が話さなければ」という不安と決別し、「お客様を理解することこそが、最大の価値提供である」と心から信じる、という一つの“覚悟”です。

とはいえ、いきなり完璧にできる人はいません。だから、まずはたった一つ、しかし最も効果的なことから始めてみてください。

それは、次の商談の前に、あなただけのお守りとなる一言を、手帳のいちばん目立つ場所に書き出しておくことです。

「恐れ入ります、もう少し詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか?」

商談中、自分がまた一方的に話しすぎている、と気づいたら、そのお守りをそっと見てください。そして、勇気を出して、その一言を口にしてみるのです。

その瞬間、商談の空気は変わり、お客様は、あなたを本当の意味でのパートナーとして認識し始めるはずです。

今回のコラムの超要約資料を確認する

あなたの会社は、「話すだけ」の営業を卒業できていますか?

あなたの会社の営業担当者は、「自分が話すこと」に必死になるあまり、お客様の心を置き去りにしてしまっていませんか?

付け焼き刃のセールストークを教えるだけでは、売上は決して安定しません。「聞く力」こそが、お客様との揺るぎない信頼関係を築き、安定した受注と長期的な契約を生み出す、最強の武器なのです。

もし、

  • 自信のなさからくる悪循環を断ち切り、本物の傾聴力を育てたい…
  • お客様から「あなたに話を聞いてほしい」と指名される営業チームを作りたい…
  • 表面的な商談を卒業し、会社の未来を支える本質的な営業力を身につけたい…

と本気でお考えの経営者、マネジャーの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。

トレテクでは、テクニック以前の「心構え」「価値観」のレベルから営業組織を変革し、お客様から深く愛されるチーム作りをサポートします。

まずは、60分間の無料オンライン相談で、貴社が抱える課題や、目指したい未来について、お聞かせください。無理な勧誘は一切いたしませんので、ご安心ください。

▶︎▶︎60分無料オンライン相談はこちらから◀︎◀︎

また、日々の営業活動のヒントや、コンサルティングの現場からの気づきなどを、Instagramでも発信しています。よろしければ、こちらもフォローしていただけると嬉しいです。

▶︎▶︎Instagramで活動をチェックする◀︎◀︎

あなたの、そして貴社の営業が、お客様にとってかけがえのない存在になるためのお手伝いができることを、心から楽しみにしています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

社員が育ち、売り上げも伸びる 中小企業の営業スキル向上をサポート
セールスパーソン戦力化サービス 【トレテク】

トレテクでは、営業が自ら売上を作れる“営業の型”を構築し、実践で成果を出せるよう支援します。

営業が苦手な社員でも大丈夫。実際に多くの方々が研修を通じて成長し、売上を伸ばしています。
あなたの会社に合った“営業の型”を一緒に作りませんか?

まずは無料相談からお問い合わせください

トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
全国から依頼をいただく。
多くのコンサルティング会社のような座学による知識の習得だけで終わらない、お客様の営業現場に即した独自の実践的なコンサルティングが強み。
特に、商談やプレゼンテーションという交渉の改善に重点を置く。

無料相談実施中です。Webサイトの【💬無料相談】からお問い合わせください。

FacebookやInstagramでも役立つ情報を配信中。
下記アイコンからフォローをよろしくお願いします。
シェアしてもらえると、嬉しいです。
  • URLをコピーしました!
目次