「時間がない」と門前払いされる営業へ 顧客が自ら心を開く“関係構築”の最初の3ステップ

「お客様との関係構築が大事だ」

営業の世界では、それこそ耳にタコができるほど繰り返される、陳腐な常套句です。曰く、「こまめに連絡すべし」「相手に関心を持つべし」「時間をかけて信頼を得るべし」。

経営者であるあなたも、部下に対して同じような訓示を垂れているかもしれません。しかし、これらのアドバイスは、言ってしまえば「正論」ではあるものの、絶望的に具体的ではありません。

結果、多くの営業担当者は「具体的に、何を、どうすれば?」と途方に暮れ、今日も今日とて、お客様から「忙しいので」と、冷たいシャッターを下ろされているのではないでしょうか。

この記事は、そんな曖昧な精神論にうんざりしている、すべてのビジネスパーソンのために書きました。この記事を最後まで読めば、「関係構築」という漠然とした概念が、極めて明確な3つのステップに分解された「構造」として理解できます。

そして、その構造を理解することで、あなたの会社の営業が、お客様の心の扉を、無理なく、しかし着実に開いていくための、具体的なアクションプランが手に入ります。

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目次

なぜ、あなたの会社の営業は「選ばれない」のか?

まず、前提として、ほとんどの営業担当者は、良識あるまっとうな人間です。お客様をモノ扱いして、自社の売上のためだけに何かを売りつけよう、などという野蛮な考えを持つ人は、現代では稀でしょう。

それなのに、なぜ関係構築はうまくいかないのか。それは、多くの人が「関係構築の初期段階が、どのような構造になっているか」を、全く理解していないからです。

新規のお客様との最初の接点を思い浮かべてください。メールは開かれず、電話はすぐに切られる。この状態の本質は何か。それは、「お客様に、時間を使う対象として“選ばれていない”」という、極めてシンプルな事実です。

お客様の1日は24時間しかありません。その貴重な時間を、どこの誰とも分からない営業担当者に割く義理など、どこにもないのです。関係構築の議論は、まずこの「時間の壁」をどう突破するのか、という一点から始まります。

顧客の心を動かす「関係構築」3つの構造

では、どうすればお客様は、あなたのために貴重な「時間」を使ってくれるようになるのでしょうか。そして、その先にある「信頼」や「契約」へと、どう駒を進めていけばいいのでしょうか。そのプロセスは、美しい3つの段階に分解できます。

ステップ①:【価値の認識】「時間の壁」を突破せよ

最初のステップは、商談やヒアリング以前の問題です。それは、お客様の無関心という分厚い壁を、いかにして打ち破るか、という戦いです。すなわち、まず目指すべきは、「この人の話は、聞く価値があるかもしれない」と、相手に認識してもらうことです。

お客様の最も貴重なリソースは「時間」です。その時間を使ってもらうためには、あなたの存在が「ありふれたものではない」という希少性を示す必要があるからです。

ここで鍵となるのが、「課題解決の希少性」という考え方です。 お客様が抱える何らかの課題に対して、あなたの会社が提供できる解決策が、いかに「レア」で「貴重」なものであるかを、瞬時に理解させなければなりません。

それは、「圧倒的に費用対効果が高い」ことかもしれませんし、「御社のような特殊な業界に、あつらえたようにフィットする」ことかもしれません。あるいは、「担当者であるあなたの、個人的な思想ややり方がユニークである」ことでも良いでしょう。

重要なのは、「どこにでもあるその他大勢の営業」ではない、という証明です。この希少性が伝わったとき、お客様は初めて「まあ、少しぐらいなら話を聞いてやってもいいか」と、重い腰を上げるのです。

SaaS業界の一部で言われる「まずプレゼンから入るべきだ」という主張も、本質的には、このステップ①を効率的に突破するための戦略に他なりません。

この段階をクリアして初めて、あなたは「無視される存在」から、「時間を割くことを検討される存在」へと昇格できるのです。事前練習として、次のアプローチの前に、「自分の話は、お客様のどんな課題を、他とは違うやり方で解決できるのか」を、一文で書き出してみましょう。

ステップ②:【感情の深化】「人間的な壁」を溶かせ

無事に「時間の壁」を突破し、お客様の前に座ることができたとします。しかし、ここで焦ってはいけません。次の壁は、「感情」です。

次に目指すべきは、「この人は、感じが良い。気を許しても大丈夫そうだ」と、相手に感じてもらうことです。どれほど希少な価値を持っていても、人は好感の持てない相手とは取引をしたくない生き物です。

考えてもみてください。どれだけ素晴らしい解決策を持っていたとしても、「おたくのやり方は古臭いんですよ。私が改革して差し上げますよ」などと、上から目線で語る傲慢な人間から、何かを買いたいと思うでしょうか。思うはずがありません。

ステップ①で「課題解決の希少性」を強く訴求すればするほど、営業担当者は、無意識のうちに「教える側」「救ってやる側」という傲慢な態度に陥りがちです。それでは、お客様の心は離れていく一方です。

ここで必要なのは、いわゆるアイスブレイクに代表されるような、人間的な好感度や安心感を醸成するコミュニケーションです。

また、このステップにはもう一つ、重要な役割があります。それは、「期待値の健全化」です。 ステップ①で価値を強調するあまり、お客様が「この営業は、魔法の杖を持ってきてくれたのかもしれない!」と、過度な期待を抱いてしまうことがあります。

しかし、現実のビジネスに魔法はありません。だからこそ、この感情のステップで、「もちろん、我々にできることには限界もあります。だからこそ、まずはお客様のことを深く理解したいのです」という、誠実で謙虚な姿勢を示す必要があります。

初回訪問で自社の価値を伝えた後、すぐに課題の深掘りに入るのではなく、「この問題、〇〇様は個人的にどう感じていらっしゃいますか?」と、相手の感情に寄り添う質問を一つ挟んでみましょう。

高ぶりすぎた熱を少し冷まし、落ち着いた対話のテーブルに着く。これが、ステップ②のゴールです。

ステップ③:【論理の整理】「課題の霧」を晴らせ

価値を認識させ、人間的な好感も得られた。しかし、これだけでは契約には至りません。ビジネスは、ボランティアではないからです。最後のステップは、「論理」です。

驚かれるかもしれませんが、大半のお客様は、自分や自社の課題を、正確に理解していません。「何となく、うまくいっていない」「漠然とした不安がある」。その程度の解像度であることがほとんどです。

そんな状態で、「お任せください、解決できますよ!」と言われても、お客様はどう思うでしょうか。「いや、そもそも何に困っているか自分でも分かっていないのに、何をどう解決してくれるんだ…?」と、拭いきれない不信感が残るだけです。

だからこそ、ステップ③で営業がすべきことは、提案ではありません。「お客様の課題を、お客様に代わって整理してあげる」ことです。 散らばった情報をつなぎ合わせ、因果関係を解き明かし、「御社が今、本当に向き合うべきなのは、この一点ではないでしょうか」と、課題の核心を指し示してあげます。

このプロセスを通じて、お客様は初めて「なるほど、我々はここに困っていたのか!」と、腹落ちすることができます。そして、その気づきを与えてくれたあなたのことを、「単なる売り子」ではなく、「自社の課題を深く理解し、共に解決を目指してくれる、かけがえのないパートナー」として認識するのです。

可能であれば、お客様が課題を語り終えたら、「もし間違っていたら恐縮ですが、お話を伺っていると、御社の本当の課題はAではなく、その根源にあるBなのではないでしょうか?」と、課題の構造化を試みてみる。

この3つのステップを経て、あなたは初めて、本当の意味での「スタートライン」に立ったと言えるでしょう。

あなたの「希少性」を一文で定義せよ

関係構築の3つの構造、ご理解いただけたでしょうか。 では、明日から何をすべきか。まずは、全ての始まりであるステップ①に立ち返ってみましょう。

次の初回アプローチの前に、時間を取って考えてみてください。 「あなたの会社(あるいは、あなた自身)がお客様に提供できる、“課題解決の希少性”とは、一体何ですか?」

それを、たった一文で、小学生にも分かるような言葉で、紙に書き出してみるのです。 この一文が、あなたの営業活動の肝となり、お客様の厚い「時間の壁」を打ち破る、強力な武器となるはずです。

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「型」を知り、「型」を超える。それが本物の営業組織

お客様との関係構築は、決して運や偶然、あるいは個人のセンスだけで決まるものではありません。そこには、乗り越えるべき壁の順番と、そのための明確な戦略が存在します。

この「構造」を理解し、組織全体で共有することで、あなたの会社の営業は、個人の能力に依存した不安定な活動から脱却し、誰がやっても一定の成果を出せる、科学的なプロセスへと進化していくのです。

もし、

  • 「こまめに連絡しろ」といった、曖昧な精神論の指導から脱却したい…
  • 営業担当者一人ひとりが、関係構築の「型」を身につけ、自信を持ってお客様と向き合えるようにしたい…
  • 初回訪問から圧倒的な信頼を勝ち取り、安定的な売上と契約に繋がる、強い営業組織を創りたい…

と、本気でお考えの経営者・営業マネージャーの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。

トレテクは、関係構築というアートを、誰もが実践可能なサイエンスへと昇華させるお手伝いをします。

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あなたの会社が、無駄な門前払いをなくし、お客様と深く、そして生産的な関係を築いていく。その輝かしい未来への第一歩を、共に踏み出せることを楽しみにしています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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