営業からの連絡をスルーするお客様から反応を引き出す “プラスの信用構築術”

「前向きに検討しますので、少しお時間をください」

営業担当者にとって、これほど期待と不安が入り混じる言葉はないでしょう。提案の手応えを感じ、受注への期待に胸を膨らませます。しかし、その一言を最後に、お客様からの連絡がパタリと途絶えてしまいます。

メールを送っても、返信はありません。 電話をかけても、留守電になるばかりです。

1週間、2週間と時間だけが過ぎていきます。CRM(顧客管理システム)には「提案済み」のステータスが虚しく残っています。そんな「塩漬け案件」が、あなたのパイプラインに5件、10件と溜まってはいないでしょうか。

この記事は、そんな出口の見えない「追いかけ」に陥り、精神をすり減らしている営業担当者、そして彼らを管理する立場にある経営者やマネジャーの方々のために書きました。

この記事を読めば、なぜお客様との連絡が途絶えてしまうのか、その根本的な原因を理解し、無視され続ける状況から脱却して、お客様の方から「ありがとう」と返信が来るような、本質的な関係性を築くための具体的な方法が分かります。

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目次

30秒で作る「思考停止メール」が、すべてをダメにする

毎週月曜日の朝、営業会議室の空気は重いです。あなたは、先週から進捗のない案件について、マネジャーから詰められています。

「〇〇社の件、どうなってるの?」
「先週、一度メールでご連絡したのですが、まだお返事が…」
「まだって、もう1週間経ってるじゃないか。ちゃんと電話したのか?今日中にもう一回連絡して、進捗を報告してくれ」

マネジャーの言うことは、もっともです。営業として、売上目標を達成するためには、見込み客の状況を確認するのは当然のタスクです。

あなたは、渋々デスクに戻り、メールの作成画面を開きます。

件名:「先日の〇〇の件でのご連絡」
本文:「〇〇様、お世話になっております。先日のご提案の件、その後ご検討状況はいかがでしょうか。何かご不明な点などございましたら…」

送信ボタンをクリックするまでの時間、わずか30秒。 しかし、この30秒のアクションが、実は、大切に育ててきたはずの案件の可能性の芽を、無慈悲に摘み取っているとしたら、どうでしょうか…?

あなたは、気づいていないかもしれません。 あなたの背後にいるマネジャーは、もっと気づいていないかもしれません。

この「営業都合の確認連絡」こそが、お客様の心を頑なに閉ざさせ、あなたの会社を「しつこい業者」のリストに入れ、二度と返信が来なくなる原因を作っている、という恐ろしい事実に。

なぜ、あなたの連絡は「迷惑メール」になってしまうのか?

大前提として、私たちが決して忘れてはならない、一つの真実があります。 それは、「他人の行動を、完全にコントロールすることはできない」ということです。

お客様が電話に出るか出ないか、メールを返すか返さないか。その判断のすべては、お客様に委ねられています。

私たち営業にできるのは、お客様が「返信したい」「話を聞きたい」と思うような「理由」を提供することだけです。つまり、お客様の心の中に「プラス」の感情を作ること。これに尽きます。

ひるがえって、「ご検討状況はいかがでしょうか?」という連絡は、お客様の心に、どんな感情を生み出すでしょうか。

残念ながら、1ミリのプラスも生みません。 むしろ、「ああ、また営業からだ…」「催促されているな…」「なんだか気が重いな…」という、マイナスの感情を生み出してしまいます。なぜなら、それは100%、営業側の都合でしかないからです。

「手軽だから」という理由だけで、このマイナスを生む行為を繰り返してはいないでしょうか。30秒で送れる簡単なタスクだからと、思考停止に陥ってはいないでしょうか。

お客様との連絡が途絶えるのは、お客様が意地悪だからではありません。ただ、あなたの連絡が、彼らにとって価値のない「ノイズ」になってしまっているだけなのです。

では、どうすれば「ノイズ」を「価値」に変え、途絶えた関係を復活させることができるのでしょうか。その答えは、極めてシンプルです。

原則1:催促は“借金”と同じ。まずは「プラスの信用」をコツコツ貯めよう

まず、あなたがやるべきことは、「催促」や「確認」を一切やめることです。

考えてみてください。あなたがお客様の立場だったとして、二人の営業担当者がいるとします。

  • Aさん:毎週「いかがですか?」とだけ送ってくる。
  • Bさん:返信を求めず、自社の業界の最新動向や、業務に役立ちそうなツールの使い方などを、定期的に教えてくれる。

あなたが、困ったときに相談したい、話を聞いてみたいと思うのは、どちらでしょうか。答えは明白でしょう。

「プラスの信用」とは、このように、見返りを求めず、純粋にお客様の役に立つ情報を提供し続けることです。それは、有益な記事のURLかもしれませんし、あなたが作成した簡単な資料かもしれません。あるいは、お客様が好きそうなテーマのセミナー案内かもしれません。

重要なのは、そこに「催促の匂い」を一切させないことです。

この「プラスの信用」が十分に貯まっている状態であれば、たまに「そういえば、〇〇の件、もし何かお困りでしたら、いつでも壁打ち相手になりますのでお声がけくださいね」といった連絡をしても、お客様は不快に思いません。

むしろ、「いつも気にかけてくれてありがとう」と、ポジティブに受け取ってくれる可能性すらあります。

催促は、リスクを伴う劇薬です。そして、そのリスクを中和してくれるのが、日々の地道な「プラスの信用」なのです。日頃から、お客様に純粋に役立つ情報を提供し続け、「この人からの連絡は有益だ」という信頼の残高(貯金)を築きましょう。

原則2:【経営者・マネジャー向け】「あれどうなった?」が、優良な契約を殺している

さて、ここからは特に、経営者やマネジャーの方々にお伝えしたいと思います。もしかしたら、耳の痛い話かもしれません。

あなたのチームで「塩漬け案件」が多発しているとしたら、その根本原因は、現場の営業担当者ではなく、マネジメント、つまり、あなた自身にある可能性が非常に高いです。

先ほどの、月曜朝の営業会議のシーンを思い出してください。 マネジャーから「早く確認しろ」と指示されたメンバーは、何のために顧客に連絡を取るでしょうか?

「お客様の課題を解決するため」でしょうか?違います。「マネジャーに報告するため」です。

彼の意識は、もはやお客様の方を向いていません。完全に、社内の方を向いてしまっています。この状態で送られるメールに、心が宿るはずがありません。お客様のためを思う熱意が、乗るはずがないのです。それは、ただの「タスク」であり「作業」です。

お客様は、その魂の抜けたコミュニケーションを、敏感に感じ取ります。そして、心を閉ざします。

この悲劇の連鎖を断ち切れるのは、マネジャーしかいません。もし、メンバーから「連絡が取れません」という報告を受けたら、

「わかった。じゃあ、闇雲に連絡するのは一旦ストップしよう。お客様が今どんな状況か、どんな情報を欲しているか、もう一度一緒に考えて、作戦を立て直そう」

と言うべきなのです。プラスが作れる見込みがないのであれば、それは「作戦タイム」が必要だというサインです。

それにもかかわらず、「どうなった?」という確認だけを繰り返すのは、弾薬もない兵士に「とにかく突撃しろ」と言っているようなものです。それでは、案件が塩漬けになるどころか、会社の評判すら落としかねません。

あなたの「あれどうなった?」という一言が、会社の未来の売上を、静かに消し去っているかもしれません。ぜひ、そのことを肝に銘じてください。

まずは「ささやかなプラスの信用」構築から始めよう

連絡が途絶えたお客様への、新しいアプローチは見つかったでしょうか。 いきなりすべてを変えるのは、難しいかもしれません。でしたら、まずは一つの、しかし、最も重要なことから始めてみましょう。

今、あなたの頭の中に浮かんでいる「連絡が途絶えてしまったお客様」を、一人だけ思い浮かべてください。そして、そのお客様の顔を思い浮かべながら、「この人は、どんな情報をもらったら、少しでも嬉しいと感じるだろうか?」と考えてみてください。

そして、インターネットで記事を探すでも、自分の知識をまとめるでも何でもいいです。その人のためだけの「小さなお役立ち情報」を一つ、用意してみましょう。 それが、あなたの「プラスの信用」構築の、記念すべき第一歩です。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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