営業マネジメントの極意の一つ 「メトロノーム理論」で指示と委任を使い分ける

「メンバーに任せたら失敗した。でも細かく指示すると、自立しない…」

「どこまで具体的に指示して、どこから任せれば良いのか分からない…」

「任せると言ったのに介入したら、『信用できないんですか』と言われた…」

営業組織をマネジメントする立場の方であれば、こんな悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。指示しすぎれば自立しない、任せすぎれば失敗する。そのバランスが分からず、日々葛藤している…。

この記事は、そんな営業マネジメントの難しさに悩む経営者やマネジャーの方々のために書きました。

この記事を読めば、「どこまで指示して、どこから任せるか」という永遠の課題に対する答えが見つかります。そして、「メトロノーム理論」という独自のアプローチで、メンバーの自立を促しながら、確実に成果を出すマネジメント手法が手に入ります。

目次

マネジメントの永遠の課題:指示か?委任か?

マネジメントの時に難しい判断の一つというのが、どこまで具体的に指示をして、どこからはメンバーに任せるのかというところかと思います。

ここで、私は「メトロノーム理論」という考え方を提供しております。メトロノームというのは、大きく揺れることによって、バランスを保つということです。

その指示するとか任せるってことについて、ブレないマネジメントを推奨するのではなくて、むしろブレ方について、きちんと意図的なやり方をしましょうということです。

「メトロノーム理論」とは?極端を経験して最適点を見つける

極端に指示をするということと、極端に任せるということを、両方体験すると、最適な落とし所をつかみやすくなる

これが、メトロノーム理論です。

メトロノームは、大きく揺れることで推進力を得て、バランスを保ちます。同様に、マネジメントも、「指示」と「委任」の間を大きく揺れ動くことで、最適なバランスを見つけることができるのです。

ただし、これには自信というものがあった方が良いので、ちょっとこの辺りをお話をしていきます。

4つの判断基準:いつ指示し、いつ任せるか

では、具体的に、どのような基準で「指示」と「委任」を使い分ければ良いのでしょうか?

以下の4つの判断基準をご紹介します。

判断基準1:メンバーが自立して働く人かどうか

メンバーが自立して働く人たちかどうか、ということなんですが、例えば、いちいち言われなくとも、自分で考えて行動できますよ、というような性格の人というのがいますよね。

もともとの性格として自立が備わっているみたいな方って、現実いらっしゃいます。

例えば、そういうような人に対しては、まずは一旦、任せてみようかというふうに、指示するか任せるかで迷った時に、入り口は「任せる」の方から入ってみるというのが、一つのやり方かなというところです。

任せたけど失敗したら?事前の基準設定が鍵

もちろん、好きにやらせて任せてみたけれども、やっぱりうまくいかないってことは、現実あり得ますよね。

そんな時に、いきなり何のコミュニケーションもなしに割って入ると、「あれ、任せるって言ったじゃないですか」「私のことが信用できないんですか」と、こうなってしまいます。

ですので、大事なことは、ある程度「任せる」から入るというふうに決めておいたとしても、コミュニケーションして、事前にこういう基準を超えるリスクが出てきたら介入するよということは、伝えておく必要がありますよね。

具体例:決裁者の合意を基準にする

例えば、その案件についてメンバーに考えてもらって、「とりあえず自分でやってごらん」というふうに言ったとします。

その時に、「これで決裁者の合意までいけるんだったら、任せるよ。ただし、来週までにその決裁者の合意が得られないようであれば、介入するよ」みたいな感じです。

このように、どのラインを基準として、そこまでは任せるみたいな風に、きちんと事前のコミュニケーションがあった上で思い切って任せ、そして、うまくいかないことがあれば介入すると。

こういう風に、ちゃんとメンバーと確認が取れていれば、思い切ったコミュニケーションが取りやすくなりますよね。

判断基準2:チームのリスク許容度が高いか

チームのリスク許容度についても同様です。

例えば、不確実なこととか、やってみなければわからないような、こういう類のことに対して、割とその前向きな雰囲気が、チームに土壌として備わっている場合というのもあります。

そんな時は、まずはチームに対しては、いちいち細かく言うよりは、「まず自分で考えて、自由に動いてみようよ」というふうにしておくわけです。

これも同様に、やっぱりそのうまくいかないっていうことが見えてきたときに、まったく放置するわけにはいかないということが、やっぱり起こり得ますので、それは後出しじゃんけんで、いきなり介入するんじゃなくて、初めに合意をしておくってことですよね。

具体例:売上目標の120%を基準にする

例えば、具体的には、今期の目標、例えば12月までの目標というのがあって、それに対して120%分の見込みがちゃんと詰まっている状態だったら、あんまり細かいことは言わずに、自由に動くのに任せるよと伝えておきます。

ただし、その見込み額が作れないんだったら、商談動向とか売上の読みのところについて、もっと具体的に介入して、一緒に考えていくよ、というふうにするわけです。

例えば、売上目標で120%の額の見込みを作れるかどうかということを基準に置いて、そこに関してちゃんと超えている限りにおいては任せますよと。ただ、それがちょっと下回るんだったら入りますよと伝えます。

ポイント:十分な猶予期間を確保する

ここでのポイントは、「任せる」方から入る場合においては、十分な猶予期間を確保することです。せっかく任せたにも関わらず、後から細かい介入をするみたいなのに、メンバーに受け取られるのがマイナスに作用するのは、もったいないです。

ですので、ある程度、自分なりに動くというようなことでチャレンジできるだけの、十分な時間の確保をしていることが大事になっていきます。

判断基準3:外部や上司の関与が強いか

3番目、外部とか上司の関与が強いかということについてお話しします。

例えば、マネージャーのさらに上、役員の方が結構関与してくるとか、介入してくるってことがあったとします。

これは、例えば、ご自分がミドルマネージャーの立場だったときに、その上にいる役員の方が結構関与してくるな、と思う時です。

こういう場合において、マネージャーが「任せて好きにやらせる」というふうにすると、さらに上位層の役員の人たちの意向と、ちょっと出てきた時に、頭ごなしの介入が逆に起こってしまうリスクというのもありますよね。

という場合は、自分が間に立って、きちんとつなぐといいますか、上位層の介入が強い場合であれば、自分がメンバーとの間に入って、きちんと具体的に指示をすると。こういうのも重要になってくるかなと思います。

ただし:上への交渉も忘れずに

ただし、やっぱりその細かく介入し続けることが良いかどうかって、これやっぱり状況によるということもありますので、もし、ちょっとその弊害が出てきたときには、「もうちょっと考えてやらせてみたいです」っていう風に、上の人に言っておくとか。

あるいは、業績面で言うと、「このラインをクリアしたら、ちょっと考えて任せて、好きにやらせていく方向で良いですか?」っていう風に、ちゃんと握っておくというのが大事ですよね。

判断基準4:早く学習効果を得たいか

そして4番目、早く学習効果を得たいかということです。

例えば、ある程度の仮説検証サイクルをぐるぐると回して、実際、まだうまく勝ちパターンが見えてないときに、勝ちパターンを発見したい、みたいなことがあったとします。

そういう時に、例えば端的なのは、新サービスとか新商品をリリースした直後とかですよね。

こういう時は、一旦、ちょっと、まずこれを検証したいんだということを明確に伝えた上で、「まずはちゃんとこの通りやってみて。その結果を教えてくれ」と伝えます。

こうすると集まってくる事実というのが、ある程度想定していた結果が本当に正しいのかどうかというのは、分かりやすいですよね。

任せすぎるとデータがバラつく

その時に、「自由に、好きに、じゃあ思う通りにやってごらん」と、やってしまうと、何が起こって、どういう結果が出てきたのかということが、かなりバラついてしまうわけですね。

例えば、そういうふうに早く学習効果を得たい、具体的には新商品・新サービスリリース直後みたいなタイミングのときは、むしろしっかりやることを定義して、「これでやって、その結果、どうなったか教えてくれ」と伝えます。

こういうふうにすることによって、メンバーの行動が定まる、かつ、学習効果が早く得られるみたいなことがあったりします。

ただし:固定化しすぎない

ただし、ずっとそれでやっていくと、これ固まってしまうこともありますから、ある程度良い結果が見えてきて、検証ができたら、あとはこれを応用して、自由に考えてやってごらんっていうふうに、任せるほうにまた振ってみます。

「メトロノーム理論」の実践:3つのステップ

ここまでの話をまとめると、メトロノーム理論を実践するためのステップは、以下の3つになります。

ステップ1:基準を明確に決める

「どこまで任せて、どこから介入するか」の基準を、具体的に決めます。

例:

  • 決裁者の合意が得られなかったら介入する
  • 売上見込みが目標の120%を下回ったら介入する
  • 新商品リリース後1ヶ月は、決められた方法でやってもらう

ステップ2:事前にメンバーと合意する

その基準を、任せる前に、必ずメンバーと共有し、合意しておきます。

言い方の例: 「来週までに決裁者の合意が得られれば、あとは君に任せる。ただし、得られなかったら、一緒に考えよう」

これにより、後から介入しても、「任せると言ったじゃないですか」という反発を防げます。

ステップ3:極端に振って、最適点を見つける

最初は極端に任せてみる、あるいは極端に指示してみる。

そして、その結果を見ながら、少しずつ最適なバランスを見つけていきます。

ブランコのように大きく揺れることで、ちょうど良い振れ幅が見えてくるのです。

今日のポイント:事前の基準設定とコミュニケーション

今日のポイントとしては、あらかじめ基準を決めておいて、それを事前段階でコミュニケーションしておくということについて、強調したいと思います。

「任せる」と言ったのに後から介入する、というのは、メンバーの信頼を損ないます。

しかし、「ここまでは任せるけど、この基準を超えたら介入する」と事前に合意しておけば、介入しても信頼は損なわれません。

むしろ、「ちゃんと見てくれている」という安心感につながります。

実践ワーク:明日から始める「メトロノーム理論」

では、具体的にどう始めれば良いのでしょうか?以下のワークをやってみてください。

ワーク1:現在任せている案件の「介入基準」を決める

今、メンバーに任せている案件について、「どうなったら介入するか」の基準を、1つ決めてください。

例:

  • 商談が3回目まで進まなかったら介入する
  • 見積もり提出後、1週間返事がなかったら介入する

ワーク2:その基準をメンバーに伝える

決めた基準を、メンバーに伝えます。

「今は君に任せているけど、もし〇〇になったら、一緒に考えよう。それまでは、自由にやってみて」

ワーク3:新しい案件で「極端に任せる」or「極端に指示する」を試す

次の新しい案件で、いつもとは逆のアプローチを試してみてください。

いつも細かく指示している人は、思い切って任せてみる。 いつも任せている人は、思い切って細かく指示してみる。

この「極端」を経験することで、最適なバランスが見えてきます。

まずは「介入基準」を1つ決めてみよう

この記事を読んで、何か気づきを得られたでしょうか?

営業マネジメントで最も難しい「指示と委任のバランス」は、メトロノーム理論で解決できます。極端に振れながら、事前の基準設定とコミュニケーションで、最適なバランスを見つけていくのです。

とはいえ、いきなり全てを変えるのは難しいかもしれません。でしたら、まずは小さな一歩から始めてみませんか?

今、メンバーに任せている案件について、「どうなったら介入するか」の基準を1つ決めて、明日メンバーに伝えてみてください。

たったこれだけで、メンバーとの信頼関係が深まり、安心して任せられるようになります。そして、営業組織全体の成果が上がっていくのです。

強い営業組織を作りたい経営者の方へ

あなたの会社の営業マネジャーは、メンバーへの指示と委任を、適切にバランスできているでしょうか?

多くの営業組織では、マネジャーが「任せる」と「指示する」の間で揺れ動き、メンバーの信頼を損なっています。その結果、メンバーが自立せず、マネジャーも疲弊し、組織全体の生産性が低下しています。

しかし、メトロノーム理論を組織に導入し、事前の基準設定とコミュニケーションの文化を作れば、メンバーは自立し、マネジャーは安心して任せられるようになります。そして、営業組織全体の売上と生産性が大きく向上するのです。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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