「お客様目線で考えろ」と言うほど営業は育たない 優先順位の”欠陥”を正す育成の型

「もっとお客様目線で考えなさい」――この一言を、これまで何度部下にぶつけてきたでしょうか。
残念ながら、その指導はほぼ効果がありません。
本記事では、なぜ精神論的な指導が機能しないのか、そして根性論ではなく「優先順位の”欠陥”」を正す仕組みで部下を再現性高く育てる具体的な型を解説します。読み終える頃には、明日からの指導が変わります。
ダメ出しが営業を育てない理由
まず、多くの営業マネジャーや経営者が無意識にやってしまっている最悪の指導が「ただのダメ出し」です。
「なんでそんな対応をするんだ、ダメだろう」という単純なダメ出しは、メンバーの成長・スキルアップにほぼ寄与しないのです。
一方で、効果があった指導には明確な共通点があります。
- 新しいアイディアや選択肢を増やす指導
- うまくいかない原因に本人が気づける指導
つまり「否定する」のではなく「気づかせる・選択肢を増やす」。ここに営業育成の分かれ道があります。お客様目線で別の返答をしてしまった部下に「考えが足りない」と叱っても、同じ失敗は永遠に繰り返されるということです。
「お客様のためを思っていない」という大誤解
ここが本記事で最もクリティカルなポイントです。多くのマネジャーは、部下がお客様目線に立てないのを「お客様への思いやりが足りないから」と解釈します。しかし、これは完全な誤解です。
考えてみてください。人間には「誰かのためになりたい」「人に喜ばれたい」という感情が自然に備わっています。営業職であればなおさら、お客様から頼られ役に立つことは本来とても喜ばしいことです。
私の経験上、お客様のためになりたいと思っていない営業は、9割以上の確率で存在しません。
では、なぜその思いやりがある人が、お客様目線に立てない対応をしてしまうのか。答えは本人の心ではなく、マネジャーが過去に与えた「優先順位」にあります。
すべての原因は「優先順位の”欠陥”」
優先順位の”欠陥”とは、お客様にとって本当に大事なことよりも、別の何かを「もっと大事だ」と思わせてしまう指示のことです。具体例を挙げます。
- 「もっと効率的に、早く仕事をこなせ」
- 「とにかく目標数字をねじ込んでこい」
- 複数の指示を同時に与え、常に忙しい状態に追い込む
こうした指示を受けたメンバーの頭の中では、知らず知らずのうちに優先順位が逆転します。「効率的に・早く」が最優先になった結果、お客様に丁寧に向き合うことの優先順位を無意識に下げてしまうのです。
お客様が求めていることと別の返答をする。無理な取り付け方をする。おざなりな対応をしてしまう――これらは「思いやりの欠如」ではなく、マネジャーが過去に作り込んだ優先順位の”欠陥”が生み出したパターンなのです。
つまり、犯人は部下ではありません。多くの場合、優先順位の逆転を生み出しているのはマネジャー自身の言葉なのです。
優先順位の”欠陥”を正す具体的な型
では、どうすればいいのか。「もっとお客様のことを考えろ」という啓蒙の繰り返しや、現状を否定するコミュニケーションは効果を出しません。やるべきことは1つです。
「自分がメンバーに優先順位の”欠陥”を与えていないか」を疑い、正しい優先順位で伝え直す。
たとえば「早く・効率的に」と「お客様への丁寧な対応」が両立できていないなら、その両立アイディアをマネジャー側から提示します。本人の能力が限界に来ているから両立できていないのに、「自分で考えろ」と突き放しても何も変わりません。
具体的な解決の型は、以下のように整理できます。
- コミュニケーションの型そのものを提供する
「この場面ではこう返す」という具体的なトークやテンプレートを渡す。最も手っ取り早く効果が出ます。 - 業務時間を圧迫している無駄を取り除く
「早く」を求めるなら、本来やらなくてもいい仕事を先に削る。常に忙しい状態を解消すれば、丁寧さの優先順位は自然に戻ります。 - NG対応とGOOD対応を具体的に言語化する
「お客様のこのリクエストには、この対応はNG、この対応はGOOD」と基準を明示する。曖昧な精神論を、判断できる型に変換します。
これらに共通するのは、センスや根性ではなく「仕組みと型」で解決しているという点です。誰がやっても再現できる。これこそが組織を強くする賢いやり方です。
マネジャーが見落としがちな盲点
なぜこの問題はなかなかなくならないのか。理由はシンプルです。マネジャー自身は、過去に「早くこなすこと」と「丁寧なコミュニケーション」を何らかの手段で両立できていたからです。
役職が上の人は、経験の蓄積でその両立を無意識にこなせます。しかし、それをそのままメンバーに求めても通用しません。自分にできることが部下にできるとは限らない――この事実を直視できないマネジャーほど、「うちのメンバーは何を言っても変わらない」という愚痴を漏らします。
そこで一歩引いて、こう自問してください。
- 自分は優先順位の”欠陥”を生み出していないか
- 本人の心ではなく、過去の指示に原因はないか
- 両立の手段を、自分が提供できているか
これを顧みることこそが、本来お客様に喜ばれたいと願って働く営業を助けることにつながります。部下を責める前に、自分の指示を疑う。これが営業育成における最もずるく、最も効果的な一手です。
属人化しない営業組織をつくるために
「お客様目線で考えろ」と叫び続ける指導は、根性論であり、再現性ゼロの典型パターンです。本当に成果を出す組織は、優先順位の”欠陥”を発見し、型と仕組みで両立を設計しています。
私はトレテクで、中小企業・SME向けに「センス不要・型で誰でも再現できる営業育成」の仕組みづくりを支援しています。AI活用による業務効率化と、優先順位を正しく伝える指導フレームの両輪で、部下が自然とお客様目線に戻る組織設計をご提案します。
「何度言っても部下が変わらない」「育成が属人化している」とお悩みの経営者・営業マネジャーの方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの組織にどんな優先順位の”欠陥”が潜んでいるか、私が一緒に洗い出します。まずはお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。

