相手から情報を引き出し売上を上げる「質問の型」(バーバルパッケージ その1)

お客様
「何か良いサービス、ありませんか?」
→「…一度持ち帰って検討します」
部署のメンバー
「最近、どうも仕事に身が入らないんです…」
→「もう少し自分で考えてみます…」
営業の現場で、あるいは部下との面談で、こんな風に漠然とした言葉を投げかけられ、頭を抱えた経験はないでしょうか。良かれと思って質問を重ねても、相手は歯切れの悪い返事をするばかり。
核心に迫ろうとすればするほど、相手の心は固く閉ざされていく…。気づけば、会話はまるで“尋問”のようになり、気まずい空気だけが残る。
この記事は、そんな「手応えのない対話」に悩むすべての経営者、そして営業マネジャーのために書きました。
この記事を最後まで読めば、あなたがこれまで良かれと思ってやっていたヒアリングが、なぜうまくいかなかったのか、その根本原因がわかります。
そして、相手の頭の中を整理し、本人すら気づいていない「本当の課題」を言語化させ、最終的に
「ぜひ、あなたから買いたい」
「課長のおかげで、やるべきことが明確になりました」
と、心からの感謝と共に受注や部下の成長という成果に繋げるための、具体的な“会話の設計図”を手に入れることができます。
良かれと思ってやっている、相手からのお悩み相談でよくある失敗
商談ルームで、お客様がポツリとこう言います。 「今乗ってる車が古くなったんで、そろそろ買い替えようと思って。何かいい車、ないですかねぇ」
あなた(営業)は、すぐさま頭をフル回転させます。「(いい車、か…うちのラインナップならアレか、コレか…)お客様、ちなみにご家族構成は?」「ご予算はおいくらぐらいで?」「普段はどのような用途でお使いに?」
矢継ぎ早に質問を投げかけるあなた。しかし、お客様の反応はどこか鈍い。「うーん、家族はまぁ、4人で…」「予算も、まぁ、そこそこで…」「使い方も、まぁ、普通ですよ…」。まるで、歯に物が挟まったような、曖昧な答えしか返ってこない。
焦ったあなたは、さらに情報を引き出そうと質問を重ねます。しかし、重ねれば重ねるほど、お客様は黙り込んでいく。
そして最後に、「…すみません、ちょっと色々ありすぎて分からなくなりました。一度、持ち帰って検討します」という、お決まりのセリフで商談は終わるのです。これでは、目標とする売上には到底届きません。
これは、上司と部下の関係でも全く同じことが起こります。
「課長、ちょっといいですか…」と、浮かない顔で部下が相談に来ます。「最近、なんだか仕事がうまくいかなくて…」
あなた(上司)は、心配して声をかけます。「どうしたんだ? 何か悩んでるのか?」「具体的に、何がうまくいかないんだ?」「俺にできることがあれば、何でも言ってくれ」
しかし、部下は「いや、なんというか…全体的に…」「自分でもよく分からなくて…」と、もごもごと口ごもるばかり。
あなたは、具体的な悩みがわからないことにはアドバイスのしようがないと感じ、さらに質問を続けます。
しかし、それは部下を追い詰めるだけの結果に終わり、「…すみません、もう少し自分で考えてみます」と、彼は心を閉ざしてしまうのです。
この二つのケース、何が問題だったのでしょうか? それは、私たちが「質問」という行為を、根本的に勘違いしているからです。
私たちは、質問を「こちらが知らない情報を、相手から聞き出すための道具」だと思っています。しかし、本当に成果に繋がる質問の役割は、そこにはないのです。
会話の主導権を相手に渡す、たった4つの技術
相手の心を動かし、契約や問題解決へと導く会話には、明確な「型」が存在します。それをNLP(神経言語プログラミング)の用語で、「バーバルパッケージ」と呼んでいます。
これは、単なるテクニックの寄せ集めではありません。相手の思考プロセスに寄り添い、相手自身に「答え」を見つけてもらうための、一連の流れ、つまり“設計図”なのです。
1. まずは「聞く準備」を整える
お客様は「売り込まれるのではないか」、部下は「叱責されるのではないか」と、無意識に身構えています。いきなり本題に入るのは、準備運動なしで100m走を全力疾走するようなものです。
まずは天気の話でも、最近のニュースの話でも構いません。他愛もない雑談で場の空気を温める。そして、「いくつか質問してもいいですか?」という一言(イーブン・イフ)で、相手に心の準備をしてもらう。
この小さなステップが、その後の会話の質を劇的に変えるのです。
2. 「オウム返し」を挟みながら、ひたすら思考を“発散”させる
「今乗ってる車が古くなってきたんで…」 「なるほど、今のお車が古くなってきた、ということですね」
「最近、仕事に身が入らないんです…」 「そうか、仕事に身が入らないと感じているんだな」
ただ相手の言葉を繰り返すだけ。これが「バックトラッキング(オウム返し)」です。これの何が重要かというと、相手は「ああ、この人はちゃんと私の話を聞いてくれている」と無意識に感じることです。
そして、何度も「はい、そうです」と頷く(イエスセット)うちに、心理的な壁がどんどん低くなっていきます。
この安心感のある土壌の上で、「いつ頃からそう感じますか?」「どんな時に特にそう思いますか?」といったオープンクエスチョンを投げかけることで、相手の思考はどんどん発散していくのです。
3. 「なぜ?」と「例えば?」で、深く“掘り下げる”
ここが、ヒアリングの最も重要な局面です。 例えば、部下が「見積もり作成に時間がかかって、残業が増えているんです」と具体的な悩みを口にしたとします。
多くの管理職は「そうか、じゃあテンプレートを作ろうか」とすぐに解決策を提示してしまいます。
しかし、本当に優秀な経営者やマネジャーは、ここで「そもそも、なぜ横山君がその見積もりを作っているんだっけ?」と問いかけます。
すると部下は「…! そういえば、今期からアシスタントの方にお願いするルールになっていました…」と、自分自身で問題の本質に気づくのです。
営業も同じです。「広い車がいいんです」というお客様に、「例えば、どのくらいの広さでしょう?」「そもそも、なぜ広い車が必要だと思われたのですか?」と問いを重ねます。
すると、「来年、子供が生まれるのと、最近免許を返納した親を乗せる機会が増えそうで…」といった、本人も意識していなかった“本当のニーズ”が言葉になって現れます。
このプロセスこそが、相手の頭を整理し、課題を明確にする核心部分なのです。
4. 最後に、あなたの言葉で「要約」して確認する
ここまでのステップで、お客様や部下の頭の中には、たくさんの情報が発散されています。それを、あなたが綺麗に整理してあげるのです。
「お客様、ここまでのお話をまとめさせていただきますと、ご要望は大きく4つあるかと思います。
一つ目は、来春に新しいご家族が増えること。
二つ目は、ご両親を乗せる機会が増えること。
三つ目は、でもご自宅の駐車場のサイズには限りがあること。
そして四つ目は、ご予算が〇〇円であること。
この4つのポイントを解決できるお車が、お客様にとっての理想の車、ということでよろしいでしょうか?」
こう言われたお客様は、どう思うでしょうか。「そう!そうなんです!まさにそれが言いたかった!」と、感動すら覚えるはずです。
ここまでくれば、あとは簡単です。「でしたら、お客様。この4つのうち、3つは完璧に満たし、1つだけ少しご相談が必要な車があるのですが、一度ご覧になりませんか?」と切り出せば、もはや断る理由はありません。
まずは「10秒、待ってみる」勇気から
ここまで読んでいただき、いかがでしたでしょうか。 この「バーバルパッケージ」の全体像が見えてきたかと思います。
とはいえ、いきなり全てを実践するのは難しいかもしれません。でしたら、まずは、たった一つの、しかし最も重要なことから始めてみませんか。
次に、お客様や部下との会話で、「何か話さなければ…」と焦りを感じるような沈黙が訪れたら、慌てて次の言葉を探すのをやめてみてください。
代わりに、相手の目を見て、ゆっくりと、そして静かに頷いてみる。そして、心の中で、1、2、3…と、10秒数えてみるのです。
相手が黙っている時間は、「考えている時間」です。その貴重な思考の時間を奪ってはいけません。この、たった10秒の「待つ」という小さな勇気。それが、一方通行だったコミュニケーションの流れを変え、相手の心に眠る、本当の言葉を引き出す、大きなきっかけになるはずです。
どんな相手とも対話できる、本物の営業力とは
あなたの会社の営業担当者は、おしゃべりで分かりやすいお客様とだけでなく、物静かで、反応の薄いお客様とも、冷静かつ効果的に対話し、信頼関係を築くことができているでしょうか?
相手の個性やペースに合わせ、時には雄弁に、時には沈黙を武器に、お客様の心を動かし、着実に契約へと繋げていく。それこそが、これからの時代に求められる、本質的なコミュニケーション能力です。
しかし、この能力は、センスや才能ではありません。明確な「技術」であり、トレーニングによって誰でも習得可能なのです。
もし、
- どんなタイプのお客様にも対応できる、強い営業チームを育てたい…
- 担当者によって売上が大きく変動する、属人的な営業から脱却したい…
- 部下が自ら考え、行動するような、本質的なマネジメント能力を身につけたい…
と、本気でお考えの経営者の方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。
トレテクでは、単なるセールストークの研修ではなく、人間心理の深い理解に基づいた、本質的なコミュニケーション能力の向上をサポートします。そして、それが最終的に、貴社の安定的な売上成長に繋がることをお約束します。
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あなたの、そして貴社の営業が、お客様から心から信頼され、選ばれ続ける存在になるためのお手伝いができることを、楽しみにしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。