なぜ、あなたの「話を聞くよ」は、メンバーをウンザリさせるか?「傾聴」9つの基本

「いつでも、なんでも言ってくれ。ちゃんと聞くから」
リーダーシップ研修を受け、傾聴の重要性を学んだあなたは、固く決意します。営業メンバーの声に耳を傾け、風通しの良い職場を作ろう。そして、部下の前に座り、最も誠実な表情でそう告げるのです。
しかし、なぜでしょう。あなたのその善意とは裏腹に、メンバーは口ごもり、当たり障りのない話に終始し、やがてあなたの前から去っていく…。良かれと思ってやっている「傾聴」が、なぜか全く機能しない。それどころか、かえってコミュニケーションを阻害しているようにすら感じる。
この記事は、そんな「傾聴のワナ」に陥ってしまった、すべての誠実なリーダーのために書きました。
この記事を読めば、あなたがこれまで良かれと思ってやってきた傾聴が、なぜメンバーをウンザリさせていたのか、その根本原因がわかります。そして、小手先のテクニックに頼らず、相手が本当に話したくなる関係性を築くための、本質的な9つの基本を完全にマスターすることができます。
衝撃の事実:部下が最も話したくない上司は「やたら傾聴したがる人」だった
私たちは、大きな勘違いをしています。まず、この事実からお伝えしなければなりません。「あなたが最も話しづらい相手は誰ですか?」という質問をされた時、多くの人はどう答えるでしょうか。
- データや事実をもちいて理路整然と話す、いわゆる「論破型」の人
- 話が長く、結論が最後に出てくる「文脈重視型」の人
- 「なんでも言って」と、やたら傾聴したがる人
- いつも話すタイミングが絶望的に悪い人
- その他
もしくはあなたなら、どれを選びますか?「1.論破型」や「2.ストーリーテラー型」は、話す相手の体勢や話し方の問題であり、本質的な話しづらい相手というわけではありません。
一方、「4.いつも話すタイミングが悪い人」や、「3.やたら傾聴したがる人」は、話しづらいだけでなくイライラを感じることはないでしょうか。ここに、傾聴の本質が隠されています。
営業メンバーは、上司の傾聴「テクニック」に悩んでいるのではありません。上司の自己満足的な「傾聴したい」という都合と、話しかける「タイミング」の悪さに、心を閉ざしているのです。
「課長、今じゃないんですよ…」
「なんでも聞くって言われても、そういう気分じゃないんです…」
メンバーの心の声が聞こえてきませんか? 「傾聴」という名の押し売りは、近所でやたらと声をかけてくる、世話焼きなおばさんと一緒です。善意なのは痛いほどわかります。しかし、正直、鬱陶しい。これが、メンバーの本音なのです。
やってはいけない傾聴:メンバーの「愚痴」を聞くという最悪の選択
特に危険なのが、「ガス抜きのため」と称して、メンバーの愚痴や不満を聞いてあげる行為です。
あなたは「聞いてやることで、メンバーのストレスが解消されるはずだ」と思っているかもしれません。しかし、それは全くの逆効果であり、むしろ部下の心に毒を注いでいるのと同じことなのです。
なぜなら、人の思考は「体験のインパクト × 回数」でプログラムされるからです。
例えば、メンバーが部長から理不尽なことを言われ、傷ついたとします。これは「1回」のネガティブな体験です。あなたが「部長の何に腹が立ったんだ? 言ってみろよ」と促すと、部下はその時の状況を思い出し、言葉にすることで、そのネガティブな体験を「追体験」してしまいます。
たった1回の体験だったはずが、あなたの傾聴によって2回、3回と繰り返される。インパクトの強い体験を何度も追体験することで、彼の脳には「部長=嫌な奴」という思考プログラムが強力に上書きされてしまうのです。
時間が経てば冷静になれたかもしれない問題も、あなたが親切心で掘り返したせいで、増幅された憎しみへと変わってしまう。あなたの自己満足的な「聞いてやったぞ」という行為が、メンバーの心を蝕み、組織の人間関係を悪化させる。ただ聞けばいい、というものでは決してないのです。
傾聴の目的を見極める:「解決」が欲しいのか、「共感」が欲しいのか
では、どうすればいいのか。9つの基本に入る前に、最も重要な心構えをお伝えします。それは、相手の「目的」を見極めることです。相手があなたに話しかける目的は、大きく分けて2つしかありません。
問題解決をしてほしい
「課長、職場の〇〇について問題があると思うので、聞いてください」 この場合、相手は「話を聞いてもらうこと」がゴールではありません。「問題を解決してもらうこと」がゴールです。
あなたが真摯に耳を傾け、「うん、わかった。話してくれてありがとう」で終わらせてしまったら、メンバーは「聞いただけで、何もしないのかよ」と絶望します。聞いたからには、解決に向けて行動するか、あるいはなぜ解決できないのかを誠実に説明する責任があります。
ただ、気持ちを受け止めてほしい
「課長、今日お客さん先でひどい目に遭って、本当に落ち込んでるんです…」 この場合、相手はアドバイスや解決策を求めていません。「そうか、それは大変だったな」と、ただその気持ちを受け止めてほしいのです。
ここで「君のやり方が悪かったんじゃないか?」などと正論を説くのは最悪です。相手の目的に合わせて、あなたの役割を切り替える。これが大前提です。
これだけ覚えればいい。本質的な「傾聴」9つの基本
さて、本質的な「傾聴」9つを下記に記します。小手先のテクニックは今日で全て忘れてください。以下の9つの基本を心がけるだけで、あなたの傾聴の質は劇的に変わります。
小手先の傾聴テクニックに頼ろうとすると、相手の状況や考えを捉えきれずに、ズレたコミュニケーションになってしまいます。相手が本当に話したくなる関係性を築くことに重点を置いてください。
1、話を遮らず、最後まで黙って聞く
当たり前だと思うでしょう?しかし、驚くほど多くの人ができていません。相手が話し終えたと感じても、心の中で「いち、に、さん」と数えてみてください。意外と、その後に本当に言いたいことが続くものです。
2、相手を否定しない(肯定もしなくていい)
明らかに間違っていると感じても、「いや、それは違う」と口を挟まない。かといって「部長はひどいな!」と安易に同調するのも危険です。
「そうか、君は部長にそう言われて、ひどいと感じたんだな」と、相手の「感情」を事実として受け止める。ニュートラルな姿勢が重要です。
3、アイコンタクトと適切な姿勢を保つ
スマホを見ながら、パソコンを打ちながら聞くのは論外です。相手の目を見るのが苦手なら、眉間のあたりを見てみましょう。それだけで、相手は「真剣に聞いてくれている」と感じます。
4、相槌とオウム返しを適切に使う
わざとらしい相槌は逆効果ですが、無反応はもっと最悪です。「昨日、同級生に会ったんですよ」と言われたら、「へぇ、同級生に会ったんだ」と繰り返す。これだけで、相手は安心して話を続けられます。
5、オープンな質問で、話を深掘りする
ただ聞くだけでなく、「その時、他に誰がいたの?」「その人は何て言ってたの?」と、5W1Hを使った質問を適度に挟むことで、相手の思考の整理を手伝うことができます。
6、沈黙を恐れず、受け入れる
相手が考え込んでいる沈黙は、気まずい時間ではありません。相手の頭がフル回転している、最も重要な時間です。焦って言葉を挟まず、じっと待つ。その沈黙の後に、本音が語られることがよくあります。
7、相手の話し方やペースに合わせる
相手がゆっくり話すタイプなら、こちらもゆっくり相槌を打つ。話があちこちに飛ぶタイプなら、「なるほど、それで…」と辛抱強く付き合う。自分のペースに引き込もうとしないことです。
8、わからないことは、正直に確認する
わかったフリをして聞き流すのが一番失礼です。「ごめん、今のはどういう意味?」「こう解釈したんだけど、合ってる?」と素直に聞くことで、むしろ相手は「真剣に理解しようとしてくれている」と感じます。
9、話しやすい環境を整える
周りに人がいる場所で、込み入った話はできません。「少し場所を変えようか」と、個室やカフェに誘う。相手が話しやすい環境を整える配慮が、信頼関係の第一歩です。
「聞く力」が、会社の未来を決める
いかがでしたでしょうか。 傾聴とは、特殊なスキルやテクニックではありません。相手のタイミングと目的を尊重し、基本的な礼儀を尽くすという、ごく当たり前のコミュニケーションの心構えです。
しかし、この「当たり前」を組織全体で実践することが、どれほど難しいことか。そして、それができた時、どれほど大きな力になるか。
メンバーの小さなSOSを早期に発見し、顧客が言葉にできない本質的なニーズを掴み取る。そのすべての土台となるのが、リーダーであるあなたの「聞く力」です。
もし、
- メンバーが本音で話してくれる、強い信頼関係を築きたい…
- 顧客の深層心理を読み解き、営業成績を飛躍的に向上させたい…
- 組織全体のコミュニケーションの質を高め、生産性を最大化したい…
と、本気でお考えの経営者・リーダーの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。 トレテクでは、単なるテクニック研修ではなく、人間心理の深い理解に基づいた、本質的なコミュニケーション能力の向上をサポートします。そして、それが最終的に、貴社の持続的な成長に繋がることをお約束します。
まずは、60分間の無料オンライン相談で、貴社の現状の課題や、目指したい未来について、気軽にお話しいただければと思います。無理な勧誘は一切いたしませんので、ご安心ください。
また、日々の営業活動のヒントや、コンサルティングの現場からの気づきなどを、Instagramでも発信しています。よろしければ、こちらもフォローしていただけると嬉しいです。
あなたの、そして貴社のコミュニケーションが、真に価値あるものになるためのお手伝いができることを、楽しみにしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。