「自社サービスの物知り屋」では売れない 顧客が本当に頼る「現場の知恵」の育て方

「うちの営業担当者は、商品のことは誰よりも詳しいはず。なのに、なぜかお客様から頼りにされない…」

経営者やマネジャーの方から、このような、ため息混じりの相談を受けることがあります。自社のサービスについて、マニアックな知識まで完璧に暗記し、よどみなく説明できる。

しかし、お客様の反応は、いつもどこか薄い。「ありがとう、よくわかりました」とは言われるものの、そこから先の深い信頼関係、つまり安定的な受注には繋がっていかないのです。

実は、残酷なまでにハッキリしている事実があります。それは、お客様は「物知りな営業」を、さほど評価していない、ということです。

この記事では、なぜその知識がお客様に響かないのかを解き明かし、値引きや口先のテクニックに頼らず、お客様から「あなたに相談したい」と心から頼られる営業担当者を育てるための、具体的で本質的なアプローチについてお話しします。

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目次

完璧なプレゼン、しかし心は動かない。その残酷な理由

商談ルームには、少し乾いた空気が流れています。あなたの会社の営業担当者は、自信に満ちた表情で、製品の優れた機能や他社との違いを、完璧なロジックで説明し終えたところです。

彼(彼女)は、社内の知識テストでは常にトップクラス。どんな細かい質問にも即座に答えられる、まさに「歩く製品カタログ」のような存在です。

しかし、目の前のお客様の表情は、晴れません。腕を組み、静かにうなずきながらも、その目には「なるほど、製品のことはよくわかった。でも、それが一体、私たちの何を解決してくれるというのだろう?」という、冷めた問いが浮かんでいます。

この瞬間、営業担当者が披露した膨大な知識は、お客様にとっては何の意味も持たない「情報の羅列」に成り下がってしまいます。そして、このすれ違いこそが、売上の機会を静かに、しかし確実に奪っていくのです。

お客様が本当に聞きたいのは、製品のスペックではなく、「自分たちの物語」の文脈に合わせた、生きた知恵なのですから。

頼られる営業が持つ「5つの知恵」とその育て方

では、お客様が本当に価値を感じる「知恵」とは、一体何なのでしょうか。それは、単なる製品知識ではありません。お客様が製品やサービスを導入し、成功に至るまでの「道のり」に関する、以下の5種類の知恵です。

  1. お客様の成功までの「ロードマップ」
  2. 多くの人が陥りがちな「落とし穴」
  3. 理想と現実の「トレードオフ」を乗り越えるための勘所
  4. 想定外の事態に対応するための「課題解決の引き出し」
  5. 状況に応じて効果を最大化する「商品の使いこなし方」

問題は、これらの知恵をどうやって身につけるか、です。会社の資料を読み込み、暗記するだけでは、絶対に身につきません。なぜなら、これらの知恵の源泉は、資料の中ではなく、お客様の心の中にしかないからです。

戦略①:お客様の「そんなうまくいくの?」を宝の山に変える

お客様から投げかけられる疑問や反論を「封じ込める」のをやめましょう。それこそが、「現場の知恵」を学ぶための、唯一無二の教科書です。

多くの営業担当者は、お客様からの疑問や反論を恐れるあまり、マシンガントークで一気に畳みかけ、相手に考える隙を与えないようにしてしまいます。いわゆる「圧倒する」スタイルです。

しかし、これは最悪の選択です。その場をしのぐことはできても、お客様の本当の納得は得られず、何より営業担当者自身の学びの機会を、自らドブに捨てているようなものです。

お客様の「本当にうちの課題が解決できるの?」という素朴な疑問には、お客様が感じているリアルな困難や、乗り越えるべき壁のヒントが詰まっています。これを無視しては、本質的な知恵は得られません。

お客様の疑問と一緒になって、その根源を探っていく。このプロセスは、一見すると時間がかかり、まどろっこしく感じるかもしれません。しかし、これこそが、お客様が「何につまずき、何を難しく感じているのか」を、肌感覚で理解するための、唯一の方法なのです。

まずは次の商談で、お客様から反論が出たら、即座に切り返すのではなく、「なるほど、そう思われるのですね。一緒に、その理由を少し紐解いてみませんか?」と、対話のテーブルに乗せてみましょう。

戦略②:期間を区切り、「知恵の獲得」をプロジェクト化する

全ての商談で時間をかけるのが難しいなら、「この3ヶ月」と期間を区切り、お客様の疑問をとことん深掘りする「知恵の獲得プロジェクト」を意図的に実行しましょう。

お客様の疑問に寄り添うアプローチは、商談時間が長くなるというデメリットがあります。そこで有効なのが、この「期間を区切る」という考え方です。「今から半年間は、とにかくお客様の成功プロセスを解像度高く理解することに全力を注ぐ」と決めるのです。

常に効率を求めると、どうしても対話が浅くなります。期間を限定することで、短期的な効率を度外視し、長期的な資産となる「知恵」の蓄積に集中投資することができます。

この期間は、目先の契約件数よりも、お客様の課題解決のプロセスをどれだけつぶさに観察し、言語化できたかを重視します。この集中的なインプットが、やがてチーム全体の「課題解決の引き出し」を劇的に増やし、長期的に見て、はるかに大きなリターンとなって返ってくるのです。

チームの目標に、短期的な売上目標とは別に、「今期、お客様から学んだ『成功の秘訣』を10個言語化する」といった「知恵の獲得目標」を設定してみましょう。

戦略③:「分業の壁」を壊し、お客様のリアルに触れる機会を作る

The Model型の分業体制を敷いているなら、意図的に営業担当者が契約後のプロセス(カスタマーサクセスや納品)に同行・同席する機会を設けましょう。

多くの企業では、生産性を高めるために、契約までを担当するセールスと、契約後を担当するカスタマーサクセスを分けています。組織論としては合理的ですが、これが「知恵の断絶」を生む大きな原因となっています。

お客様が本当に成功するのか、あるいは失敗するのか。そのリアルな現実は、全て契約の後に起こります。この「現場」を知らない営業は、いつまで経っても机上の空論しか語れません。

お客様がどんな部分でつまずき、どう乗り越え、そして成功していくのか。この最も価値ある情報が、セールス部門に全く共有されないのです。これでは、お客様から頼られる「現場の知恵」が育つはずがありません。

一見、非効率に見えるかもしれませんが、セールス担当者がお客様の成功の現場に立ち会うこと。これが、小手先の研修を100時間受けるよりも、はるかに雄弁に「頼られる知恵」を教えてくれます。

まずは月に一度でも構いません。営業担当者が、カスタマーサクセス担当者のオンラインミーティングに、オブザーバーとして参加するルールを作りましょう。

戦略④:「言語化」の訓練で、個人の体験を組織の資産に変える

  • 結論: 定期的に、営業チーム内で「お客様の成功事例」を共有し、各自が「なぜそのお客様は成功したのか」を自分の言葉で発表する勉強会を開催しましょう。
  • 理由: 同じ現場を体験しても、それを他者に伝わる言葉にできる「言語化能力」がなければ、その知恵は個人の感覚的な体験で終わってしまいます。言語化のプロセスを経て初めて、知恵は再現性のある組織の資産となります。
  • まずできる一歩目: 次の営業会議のアジェンダに15分だけ「最近、お客様に最も喜ばれた瞬間とその理由」というテーマを加え、メンバーにショートプレゼンをしてもらいましょう。

定期的に、営業チーム内で「お客様の成功事例」を共有し、各自が「なぜそのお客様は成功したのか」を自分の言葉で発表する勉強会を開催しましょう。

現場で得た貴重な体験も、「いやあ、とにかく時間をかけてじっくり取り組んだら、うまくいったんですよ」という感想レベルで終わってしまっては、他のお客様には応用できません。

また、同じ現場を体験しても、それを他者に伝わる言葉にできる「言語化能力」がなければ、その知恵は個人の感覚的な体験で終わってしまいます。言語化のプロセスを経て初めて、知恵は再現性のある組織の資産となります。

「時間をかける中で、具体的にどんなポイントが重要だったのか」「何が成功のコツだったのか」を、言葉で抽出する訓練が必要です。

チーム内での勉強会は、この「言語化」の絶好の訓練場です。他者の視点と自分の視点をすり合わせることで、一つの成功事例から、何倍もの学びを得ることができます。

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「知恵」は記憶するものではなく、お客様と共に「育てる」もの

お客様から本当に頼られる営業に必要な「知恵」とは、暗記するタイプの静的な「知識」ではありません。それは、お客様のリアルな課題と向き合い、共に汗をかく中でしか得られない、動的で生々しい「経験知」です。

それは、一朝一夕に手に入るものではありません。しかし、だからこそ、他社には決して真似できない、あなたの会社だけの競争優位性となり得るのです。

もし、

  • 価格競争から脱却し、「知恵」で選ばれる営業組織を作りたい…
  • 付け焼き刃の研修ではなく、持続的に知恵が育つ仕組みを構築したい…
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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