お客様の“核心”を突く2つの質問 「手付かずの課題」「別世界の言葉で例える」

「何か、お困りごとはございませんか?」

営業の現場で、何度この言葉を口にしてきたでしょうか。そして、何度「いや、特にないですね」という、冷たい一言で会話が途切れてしまったことでしょう。

商談の冒頭、なんとかお客様の課題を聞き出そうと投げかける、ありきたりの質問。しかし、返ってくるのは当たり障りのない答えばかりです。

結局、お客様の懐に深く入り込むことができず、用意してきた資料を一方的に説明するだけになってしまいます。これでは、到底、相手の心を動かし、価値ある提案をすることなどできはしません。

結果として、提案は響かず、受注には至りません。「またダメだったか…」と肩を落とします。こんなことを繰り返していては、会社の売上を伸ばすことなど夢のまた夢です。

この記事は、そんな「浅いヒアリング」の沼から抜け出せず、もがき苦しんでいる営業担当者、そして彼らを指導する立場にある経営者やマネージャーの方々のために書きました。

この記事を読めば、多くのお客様自身すら気づいていない「本当の課題」をあぶり出し、商談の主導権を握り、最終的に「あなたから買いたい」と言われるようになるための、具体的な「質問の切り口」が手に入ります。

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目次

繰り返す「お困りごと、ありますか?」の質問 なぜ、核心を突けずに悩む営業

あなたは、お客様との商談で、こんな経験はないでしょうか。

渾身の想いで準備したアポイントがあります。会社の未来を担う経営者や、現場の責任者が、貴重な時間を割いてくれています。しかし、いざヒアリングを始めても、どうも話が深まりません。

「最近の課題ですか?うーん、まあ、どこの会社も同じようなものですよ」

「もっと効率化したいとは思っていますけどね。具体的に、今すぐどうこうというわけでは…」

焦れば焦るほど、核心から遠ざかっていきます。なんとかして役に立ちたい、自社のサービスで貢献したいという気持ちとは裏腹に、会話はどんどん表面的になっていきます。まるで、分厚い壁の手前を、ただぐるぐると回り続けているような感覚です。

そして、タイムリミットが近づき、あなたは諦めたようにこう切り出すのです。 「承知いたしました。では、いったん弊社でご用意しておりますサービスについて、ご説明させていただいてもよろしいでしょうか?」

こうして、商談は「ヒアリング」から、一方的な「商品説明会」へと姿を変えます。お客様は、ただ静かに頷いているだけです。

これでは、お客様の課題を解決し、売上を立て、ひいては会社を成長させるという、営業本来の使命を果たすことなどできはしません。なぜ、こんな悲劇が繰り返されてしまうのでしょうか。

それは、多くの営業が「核心に迫る質問の作り方」を知らないからに他なりません。

核心を突く質問は、どこから生まれるのか?

では、どうすればお客様が思わず「ハッ」とするような、心の奥底に眠る本音を引き出すような、鋭い問いを投げかけることができるのでしょうか。

「奇想天外な、天才的なひらめきが必要なのでは?」と思うかもしれません。しかし、そんなことはありません。実は、ある「2つの視点」を持つだけで、誰でも質問の質を劇的に高め、商談のレベルを引き上げることが可能になるのです。

その2つの視点とは、これです。

  1. 顧客の「本気」を呼び覚ます質問
  2. 「遠くの世界」からヒントを得る質問

一つずつ、具体的に解説していきます。

視点1:顧客の「本気」を呼び覚ます質問 手付かずの課題を質問する

まず一つ目の切り口は、「もし、本気で成果を出そうと思ったら、まだやれることは何か?」という視点を持つことです。

少し、営業とは関係ないように思える話をさせてください。

よく「日本の労働生産性は低い」とか「ビジネスパーソンのエンゲージメント(仕事への熱意)が低い」といった話が、ニュースなどで取り沙汰されます。色々な要因が語られますが、私がコンサルティングの現場で肌で感じている、最も大きな要因は、非常にシンプルなことです。

それは、「日本は、そこまで必死に頑張らなくても、別に困らない国だから」ということなのです。

もちろん、語弊を恐れずに言えば、の話です。しかし、社会インフラは整い、治安も良いです。なんだかんだ言っても、普通に仕事をしていれば、路頭に迷うような事態には、そうそう陥りません。

あなたの目の前にいるお客様はどうでしょうか。もちろん、日々真剣に仕事に取り組んでいるに違いありません。しかし、「明日をも知れぬ」という極限状態で仕事をしている人は、おそらくほとんどいないでしょう。

だからこそ、どんな組織にも必ず、「もっとできるはずの余地」が眠っています。

  • 「本当は、あの部署と連携すれば、もっと効率が上がるはずなのに…」
  • 「この非効率な業務、誰かが声を上げればいいのに、面倒なことになりそうだから、みんな見て見ぬふりだ…」
  • 「もっとお客様のためになる、新しい取り組みを始めたいけど、上を説得するのが億劫で…」

こういった「うっすらと分かっているけど、手付かずのこと」が、山ほどあるわけです。 ここに、営業として切り込むチャンスがあります。

「もし本当に成果を上げようと思うのであれば、本当はやった方がいいけれど、まだできていないことは何ですか?」

もちろん、こんな直接的な聞き方をしてはいけません。だからこそ、先ほどのような問いかけが有効になります。

「〇〇様が、これまでずっとやりたいと思ってこられたけれど、様々な事情で着手できずにいることは、どのようなことでしょうか?」

こう問いかけることで、相手の頭の中にある「本気モード」のスイッチを入れるのです。そして、私たち営業は、その「やりたいけど、やれなかったこと」を実現するための「きっかけ(トリガー)」になります。

「ちょうど良いタイミングで、外部のあなたが提案してくれたから、社内を動かす良い口実ができたよ」

お客様に、そう思ってもらえればしめたものです。私たち営業は、単なる物売りではありません。お客様が、これまで越えられなかった壁を越えるための「パートナー」になることができるのです。これが、受注、そしてその先にある長期的な信頼関係に繋がるのです。

さらに別の問いかけ方としては、

「もし仮に、リソースや時間の制約が一切ないとしたら、会社の成果を最大化するために、今一番に着手すべきことは何だとお考えですか?」

という質問も有効です。状況に応じて使い分けてみましょう。

視点2:目の前の仕事や業界から離れ、「遠くの世界」からヒントを得る

もう一つの切り口は、目の前の仕事や業界から、あえて「遠く離れた世界」にヒントを探しにいく、というアプローチです。

具体的には、自分の専門分野や、お客様の業界とは全く関係のない領域の知識や経験と、目の前の課題を結びつけて質問してみましょう。相手が全く予期しない角度からの質問は、常識や固定観念を打ち破り、思考を活性化させ、本音や新たな気づきを引き出しやすいからです。

まずは自分が過去に熱中した趣味や、学生時代に学んだことと、今の営業活動との「共通点」を探し、それを切り口に質問を組み立ててみましょう。

これは、少し訓練が必要かもしれませんが、できるようになると、あなたの質問力は飛躍的に向上します。私がこの思考法を意識し始めたのは30歳の頃ですが、10年以上経った今でも、私の仕事や私生活で応用しています。

一見すると全く関係のない世界でも、その構造を深く見ていくと、本質的な共通点が見つかることがあります。これを、専門的には「アナロジー思考(類推)」と呼びます。この思考法を商談に応用するのです。

例えば、あなたが学生時代にオーケストラに打ち込んでいたとします。その経験を、組織課題に悩む経営者への質問に活かすことができるかもしれません。

「社長、少し突飛な質問かもしれませんが、会社組織というのは、オーケストラに似ているなと感じることがあります。どんなに個々の演奏者の技術が高くても、指揮者が明確なビジョンを示し、全体をまとめ上げなければ、美しいハーモニーは生まれません。今、社長が振るタクト(指揮棒)で、最も音程がズレていると感じるパートは、どのあたりでしょうか?」

どうでしょうか。

「組織の課題は何ですか?」と聞くよりも、はるかに相手の思考を刺激し、具体的なイメージを引き出すことができる気がしないでしょうか。

これは、ほんの一例です。あなたが過去に経験してきたこと、転職前の仕事、学生時代に学んだこと、夢中になった趣味…そのすべてが、お客様の核心に迫るための「ユニークな武器」になり得ます。

多くの営業が、営業の本やノウハウ記事に書かれている「正解の質問」を探そうとします。しかし、本当に相手の心を動かすのは、あなた自身の経験から紡ぎ出された、あなただけの「オリジナルの質問」なのです。

まずは“10秒”で、あなただけの武器を思い浮かべよう

核心に迫る質問を生み出すための、2つの視点。少しは、ヒントを掴んでいただけたでしょうか。 大切なのは、知識として知ることではなく、実際の現場で試してみることです。とはいえ、いきなり全てを実践するのは難しいかもしれません。

でしたら、まずは、たった一つの、しかし最も重要なことから始めてみてください。 それは、次に誰かと話すとき、相手の話が途切れて沈黙が訪れたら、慌てて次の言葉を探そうとしないことです。

代わりに、心の中で10秒、ゆっくりと数えてみてください。そして、その10秒間で、

「この話、自分の過去の経験と何か繋がらないか?」

と考えてみるのです。この、たった10秒の「思考の習慣」。それが、あなたの質問を、ありきたりのものから、相手の心に深く突き刺さる「鋭い刃」へと変えていく、最初の一歩になるはずです。

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どんな相手とも対話できる、本物の営業組織とは

あなたの会社の営業担当者は、ただ商品説明がうまいだけの「スピーカー」になっていないでしょうか。

お客様の個性や状況に合わせ、時には「本気」を引き出す問いを投げかけ、時には「アナロジー」を駆使して思考を揺さぶり、お客様自身も気づいていない本質的な課題を共に発見していく。それこそが、これからの時代に求められる、本物の営業であり、コンサルタントです。 もし、

  • どんなタイプのお客様にも対応できる、強い営業チームを育てたい…
  • 価格競争から脱却し、「あなただから」と選ばれる組織を作りたい…
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と、本気でお考えの経営者の方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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