「仕事が楽しい」と言う人は何が違うのか|勘違いすることが多い”楽しさの正体”

「営業が楽しくない」「好きを仕事にしたい」――こうした言葉を口にする方は多いものですが、私はそのたびに「どちらの『楽しさ』で仕事を見ているのか」と感じます。

本記事では、仕事を長く楽しめる人だけが持つ「楽しさの種類」の違いと、誰でも再現できる思考の型を解説します。読み終えたとき、あなたの「仕事観」が一段引き上がるはずです。

目次

仕事の楽しさには2種類ある

結論から言います。仕事の楽しさには、まったく性質の異なる2種類が存在します。

  • ①行為が楽しい:ボーリングでストライクを取った瞬間、料理で鍋を振る瞬間など、いま感じている感覚としての楽しさ
  • ②人参(ニンジン)を追いかける楽しさ:報酬・肩書き・数字の積み上がり・顧客の笑顔など、自分が決めたゴールを追い求める楽しさ

①は趣味・恋愛・スポーツの世界では主役です。お金もかかっていなければ、シビアな結果や立場もかかっていません。ですから「ただ楽しい」で完結して構いません。

しかし、ここを取り違えたまま仕事の楽しさを「行為が楽しいかどうか」だけで判断している人が、驚くほど多いのです。これが、伸び悩みの正体です。

「営業が楽しくない」と言う人の致命的な勘違い

「営業やってるんですけど、楽しくなくて」――この言葉を聞くと、私は正直なところ頭に「?」が浮かびます。なぜなら、この発言はほぼ間違いなく①行為が楽しい、という世界観で語られているからです。

はっきり申し上げます。仕事において「行為が楽しいかどうか」は、ほぼどうでもいいのです。私が見ているのは、ほぼ②の「人参があるかどうか」だけです。

理由は明快です。行為の楽しさは、ある程度やれば必ず飽きるからです。20年、30年と続ける仕事を、行為の刺激だけで持たせられるはずがありません。趣味のボーリングを毎日8時間、40年やれと言われたら、誰でも嫌になります。

仕事に行為の楽しさを持ち込むこと自体が、そもそもセンスのないアプローチなのです。

「好きを仕事に」がアホらしい理由

世間でよく聞く「好きを仕事に」という言葉。私はこれを聞くたび、雑で浅い発想だと感じます。

たとえば「料理が好きだから料理人になります」「筋トレが好きだからパーソナルトレーナーになります」。これ、微妙な匂いがしませんか。なぜなら、これらはすべて「行為が好き」という世界観だからです。

では、仕事を長く楽しめる人は、料理人をどう捉えているのか。比較してみましょう。

  • 行為が好きな人:鍋を振る、味付けをする、料理が出来上がるプロセスが好き
  • 人参を追いかける人:「お客様がびっくりするほど旨い」と幸せな顔になる料理を追い求める/料理を通して10店舗・20店舗と展開し、有名になり成功していく姿を追い求める

同じ「料理」でも、レベルがまるで違います。ですから私は、「好きを仕事に」ではなく「追いかけたい人参があるものを仕事に」こそが、本当の意味で仕事を長く楽しむ条件だと考えています。

「失敗が怖い」も「報われなかったら」も、すべて人参問題

「挑戦して失敗したらどうするんですか」「起業して報われなかったらどうするんですか」。こうした不安を口にする人は少なくありません。

断言します。これらはすべて「人参問題」でカタがつきます。

考えてみてください。プロ野球選手を本気で目指す高校球児に、「血反吐を吐くほど練習してなれなかったらどうするんですか」と問う人はいません。なぜなら、その子は欲しくて欲しくてたまらないからです。リスクの計算より先に、人参への渇望が来ているのです。

つまり、仕事を楽しめるか、行動できるかを左右しているのは――

  • メンタルの強さ
  • 勇気があるかどうか
  • 我慢強さ

これらではありません。追いかけたい人参があるか、それがどれだけ強いか。ここがほぼすべてなのです。根性論を語る前に、自分の人参を点検すべきです。

「儲かってからうつ病」になった経営者の話

先日、飲食店を複数経営する方とお話しする機会がありました。その方は、儲かってからうつ病になったという、非常に示唆に富んだ経験の持ち主でした。

店舗を順調に展開し、現場を従業員に完全に任せ、自分は何もしなくても毎月お金が入ってくる――世間が憧れる、いわゆる「ほぼFIRE」状態です。やることがなくなった彼は、趣味のゴルフ三昧の日々を送りました。

ところが、最初こそ「ようやく理想の生活になれた」と喜んでいたのに、ゴルフ三昧が続くうちに、うつ病になってしまったのです。理由を尋ねると、彼はこう言いました。

「ゴルフをやっても、何も残らない感覚がして、空虚な気持ちになった」

そこで私は、あえてこう投げかけました。「それなら、仕事だって同じじゃないですか。一生懸命やってお金を稼いでも、原理的には残らないのでは?」彼は「確かに原理上はそうだけど、自分の中で違う」と答え、うまく言語化できませんでした。

私が代わりに言語化するならば、こうです。彼にとってゴルフは「行為が楽しい」世界観でしかなく、仕事は「人参を追いかける楽しさ」だったのです。店舗展開の先にある夢の生活、お客様や従業員からの「良かった」という承認――それらを追い求めていたから、仕事は楽しかった。人参を失った瞬間、空虚になったのです。

長く仕事を楽しむための「人参の作り方」

もちろん、自分の人参を作ること自体が、極めて難しいのは百も承知です。しかし、その人参は何でもいいのです。正解も不正解もありません。

  • お金が欲しい
  • モテたい
  • 自分で自分を認められる実感が欲しい
  • 営業数字が積み上がり、収入がこのラインまで到達する達成感が欲しい

どれでも構いません。大事なのは、「行為が楽しいかどうか」ではなく「この仕事を通して追いかけたい人参があるか」という問いに切り替えることです。

営業が楽しくないと感じているなら、それは行為の世界観で営業を見ているだけかもしれません。「この営業を通して、自分は何を手に入れたいのか」を一度、本気で言語化してみてください。これだけで、仕事の見え方は劇的に変わります。

あなたの「人参」を、組織の成果に変える

個人の人参を明確にすることは、実は営業組織の戦力化と直結します。メンバー一人ひとりが追いかける人参を可視化し、それを「型」と「仕組み」に落とし込めば、根性や気合に頼らず、再現性のある成果が生まれます。私はこれを20年の営業現場とコンサルティングで実証してきました。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
全国から依頼をいただく。
多くのコンサルティング会社のような座学による知識の習得だけで終わらない、お客様の営業現場に即した独自の実践的なコンサルティングが強み。
特に、商談やプレゼンテーションという交渉の改善に重点を置く。

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