営業の行動量は「件数」で測るな 成果を出すなら「前進」で測る、仕組みの作り方
「今月、何件電話した?」「商談は何件やった?」――もしあなたの会社が、いまだに営業の行動量をこの指標だけで測っているなら、はっきり言って危険です。それは「やっているふり」を堂々と許してしまう指標だからです。
この記事では、訪問件数や商談数に頼る評価の落とし穴と、「前進」を基準にした再現性のある営業行動量の増やし方、そして組織で機能させる具体的な仕組みまでを解説します。
訪問件数という指標の致命的な欠陥
多くの企業で、営業の活動量は訪問件数や商談件数で語られます。一見すると合理的に見えますが、ここには裏返しの大きな問題が潜んでいます。
それは、前進していなくても、一度話せばそれだけで「営業活動」としてカウントされてしまうという点です。つまり、何の成果にもつながらない無駄な接触であっても、件数さえ積み上げれば「自分は頑張っている」とアピールできてしまうのです。
これは必ずしも担当者の悪意ではありません。組織に対して「ちゃんとやっている」と示したい心理は、誰しもが持つ自然なものです。経営者ですら、決まった時間に仕事をしているように見せられればよい、という発想に陥ることがあります。
だからこそ、件数で行動量を測るという発想そのものに、構造的な危うさがあるのです。
何件電話をしたか、何回打ち合わせを重ねたか。それ自体は、前進がなければ実質ゼロです。件数は参考情報にすぎず、本質は「前進したかどうか」なのです。
営業の本質を変える「前進」という考え方
では「前進」とは何か。それは、お客様との関係が一歩進む、あるいは商談のステータスが進むことを、行動量の単位として捉える考え方です。具体的には次のような状態を指します。
- お客様と合意が取れ、社内での検討が前に進む
- お客様と一歩進んだ関係になり、社内で物事を進めてもらえるようになる
これは、何件電話したかとは比べものにならないほど、営業活動として価値のあるものです。件数を追う営業は「努力しているふり」を量産しますが、前進を追う営業は実体としての成果を量産するのです。
電話とメールを「有効な接点」として武器化する型
前進を増やすための、最も時間効率の高い武器が「電話」と「メール」です。商談や打ち合わせというまとまった時間単位だけでお客様と接しようとすると、一回あたりの時間コストが大きく、設定そのものが重たくなります。対面なら移動の負担、オンラインでも時間の拘束は避けられません。
一方、電話は比較的気軽にやり取りができます。さらに、ただかけるのではなく「時間が約束された電話」として定義することで、コミュニケーションの質を一段高められます。
10分の電話で「3つの合意」を取る
たった10分の電話でも、意外なほど多くを話せます。お客様側に確認したいことが3つあったとして、その3つを10分で確認しきれることは少なくありません。お客様にとっても、確認が取れることで社内検討が前進し、購入検討における具体的な前進効果が生まれます。
私が「3つ」と具体的に言い切れるのには根拠があります。実際に社内でこの取り組みを行い、電話のメモを確認したところ、おおよそ3つ程度は確認できているという実績があったからです。10分の電話で確認できるのが1つだけ、ということはまずありません。
電話とフォローメールの「記録」が再現性を生む
この型を組織に展開する上で決定的に重要なのが「記録」です。なぜ「3つできる」と説得力を持って言えるのか。それは電話の記録が残っているからです。
社内の誰かが同じことをやろうとした時、「実際にこのやり方で前進している」というデータがあれば、それを参考に同じように実行できます。逆に記録がなければ、「10分の電話でそんなに話せるのか」と言われた瞬間、何も反論できません。先輩たちの電話記録が残っていることが、後輩の再現性を担保するのです。
さらに、電話後のフォローメールも重要です。電話とメールを紐付けて記録すれば、「電話して、その後どんなメールを送ったか」という一連のアクションを丸ごと再現できます。最近のツールを使えば、これは決して高いハードルではありません。
「前進」を基準にする際のシビアな現実と必須の支援策
ただし、現実は甘くありません。前進を基準に切り替えた瞬間、「やっているふり」で成果が出ていなかった人にとっては、極めてシビアな現実が突きつけられます。
これまで電話件数で評価されていた人は、件数さえこなせば許されていました。しかし前進の数で評価されれば、いくら電話をかけても前進がなければ評価はゼロです。訪問件数で評価されていた場合も同じで、数字が足りない言い訳が通用しなくなります。
だからこそ、この移行には必ず具体的な支援策をセットにすることが欠かせません。
- 同行によるサポート・フォロー:前進が取れない原因を現場で一緒に潰す
- ツール面の拡充:電話・メールの記録や管理を仕組み化する
- 勉強会やトレーニング:前進を取るための型を全員にインストールする
マネージャーからすれば、前進基準は成果に直結するため導入したくなります。しかし最初に必ず起こるのは「思うように前進が進まない」という状況です。そこで精神的な励ましだけで終わらせず、具体的なサポートを実行できるかどうかが成否を分けます。型の転換と支援策は、必ずワンセットなのです。
営業の行動量を「実体」で増やすための要点
ここまでの要点を整理します。
- 商談・打ち合わせの単位だけで行動量を考えず、「前進の件数」で考える
- 前進基準への転換は大きな視点転換であり、スキル不足の人や、やり過ごす人が許されにくくなる
- そのため、同行・ツール拡充・トレーニングといった具体的フォローを必ずセットで用意する
件数を追う努力型の営業は、もう終わりです。これからは「前進したか」という一点で行動量を捉え、それを記録と支援策で仕組み化する。これこそが、センスや根性に頼らず、誰でも再現性をもって成果を出すための知恵です。

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