「気合いで売ってこい」を卒業する鍵は、スポーツ式トレーニングにある

「何度言ったらわかるんだ」「センスがないのかな、あいつ」──営業マネジャーや経営者なら、一度は飲み込んだことのある言葉ではないでしょうか。
この記事では、少年野球やJリーグ、駅伝の話から拝借した「営業を科学するトレーニング術」を、3つのポイントに絞って紹介します。読み終える頃には、部下の成果を「気合い」ではなく「仕組み」で引き上げる具体的なやり方が手に入ります。
「なんでできないんだ」は指導ではなく仕組みの問題
「とにかく件数回ってこい」「先輩について行って、あとは自分でやってみろ」。営業の現場では、こうした指示が今も当たり前のように飛び交っています。
私自身、複数業界で20年以上営業をやってきましたが、正直に言うと、部下が伸びないのは指導の仕方が悪いというより、そもそも「練習の仕組み」がないことが原因である場合がほとんどです。
ちょっと想像してみてください。あなたが少年野球の監督だったとして、こんな指導をするでしょうか。
- 「バッティングがうまくなりたい? よし、とりあえず試合出てこい」
- 「守備の練習する時間はない、試合で覚えろ」
……しませんよね。誰がどう見てもおかしい。ところが営業の世界では、これが割と普通に起きています。具体的な練習メニューもないまま、いきなり本番の商談という「試合」に放り込まれる。これでは疲弊もするし、スコアボードを見る前に自信をなくしてしまうのも当然です。
一方、スポーツ界の「上達のさせ方」は、ビジネスよりずっと進んでいます。青山学院大学陸上競技部の原晋監督や、伝説的な営業会社出身の方の話など、いろんな現場から拾ってきた知恵を、この記事で全部お渡しします。
スポーツ界から拝借する、営業チームを強くする3つのポイント
やることはシンプルです。次の3つを持ち込むだけで、チームは変わります。
- 分解練習──商談を丸ごとやらず、「場面」を切り取って反復する
- 高負荷設定──練習は本番より厳しくする
- 動画分析──自分の姿を、自分の目で見る
順番に説明します。
① シートノックのように、場面を絞って繰り返す
野球には「シートノック」という練習があります。サードの選手に強いゴロを何度も打つ。選手は捕って一塁に投げる。これをひたすら繰り返す。試合を通しでやるのではなく、「サードゴロをさばく」という一点だけを磨くわけです。
ところが営業のロープレは、なぜかいつも「名刺交換からクロージングまで」を通しでやろうとします。もちろん流れをつかむ意味はあるのですが、部下がいつも「価格交渉」で詰まるなら、そこだけを繰り返した方が早いはずです。
「ちょっと高いですね」と言われた瞬間からの3分間だけを、何度も練習する。スポーツならレベルや課題に応じた練習メニューがあるのが当たり前なのに、営業の世界にはそれがありません。「今日は価格交渉のシートノックだ」と決めて、その場面だけをひたすら反復する。これが一番、スキルの定着が早いやり方です。
② 練習は本番よりキツくする
以前、キーエンス出身の方に営業ロープレを見る機会がありまして、これが衝撃でした。
「じゃあ、この場面を7分でやりましょう」と決めて、「よーい、スタート」の瞬間、さっきまでにこやかだった人の目の色が変わるのです。気迫も、言葉の選び方も、完全に本気モード。たった7分なのに、終わった後どっと疲れが出るくらいの密度でした。
なぜそこまでやるのか聞かれると、こう話していました。「練習で本番以上の負荷をかけておくと、本番の方がむしろ楽に感じるんですよ」と。陸上選手が重りをつけて走ったり、高地トレーニングをしたりするのと同じ理屈です。本番を楽にするために、練習をキツくする。
「本番のお客様の方が優しいな」と思えるくらい、社内の練習で脳に汗をかかせておく。この準備の質が、そのまま契約の結果に跳ね返ってきます。
「設定を作る」こと自体が営業の筋トレになる
その方がすごかったのは、ロープレの「設定」を作ること自体を練習にしていた点です。「このお客様は今どんな課題を抱えているか」「何が導入のネックになっているか」。これをリアルに作り込むには、顧客心理への深い理解が要ります。
設定を作るという行為そのものが、営業としての想像力を鍛える筋トレになっていたわけです。ここは、生成AIに顧客ペルソナを描かせて壁打ちするやり方とも相性がよく、準備の質を一段引き上げられます。
③ 自分の姿を、映像で客観視する
スポーツの世界では、フォームを撮影してチェックするのはもう当たり前すぎて話題にすらなりません。ゴルフのスイングも野球のバッティングも、自分の感覚と実際の動きには必ずズレがある。そのズレを直すために、映像という「事実」を見るわけです。
ところが営業の世界では、自分の商談中の表情や声のトーン、「えー」「あー」という口癖を客観的に見たことがある人は、驚くほど少ない。原晋監督のお話を聞いた時も、「ビジネスとスポーツは本当に同じなんですよ」とおっしゃっていました。
青学の駅伝が強いのは、タイムという目標が明確で、それに向かう走り(プロセス)を徹底的に分析して修正し続けているからです。「ワクワク大作戦」のようなキャッチーなスローガンも、チームの意識を揃えるための立派な戦術ですよね。
今はスマホ一台で簡単に録画できます。「笑顔で話してるつもりが、意外と顔が怖いな」「お客様が話そうとしてるのに、かぶせて喋ってるな」。映像を見れば一発で分かります。百の言葉で指導するより、一回の映像確認の方が、部下自身が納得して直しにいけるのです。
まず「練習メニューを作る」ところから始める
ここまで読んで「なるほどな」と思ってもらえたなら、今日から一つだけ変えてみてください。それは「練習メニューを作る」。これだけです。
「練習しろ」「ロープレしろ」とだけ言うのは、部下に「とりあえず走ってこい」と言っているのと同じです。それでサボる部下が出ても、正直あまり責められません。たとえば、こんな具合に具体化します。
- 決裁者向け「クロージング練習」10分
- 現場担当者向け「課題ヒアリング練習」10分
- 競合と比較されたときの「切り返しトーク練習」5分
- できることなら、それぞれに細かな設定をつける
目的がはっきりしたメニューを用意してあげれば、部下は迷わず取り組めます。そして、その積み重ねが必ず数字に返ってきます。センスや才能に頼るのは、もう終わりにしていいと私は思います。
凡人でも勝てる、科学的なトレーニングこそが、チームを強くするからです。地頭と仕組みがあれば、成果は誰でも再現できます。

「練習メニューの設計」から一緒に取り組みませんか
とはいえ、「どの場面を切り取ればいいのか」「どんな負荷設定が自社に合うのか」を自力で組み立てるのは、最初はなかなか骨が折れます。トレテクでは、営業の勝ちパターンを分解し、AIも活用しながら再現性のあるトレーニングの仕組みを一緒に設計するご支援をしています。
「気合い頼みの指導から抜け出したい」「ロープレをやっても成果につながらない」とお悩みの経営者・営業管理職の方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたのチームに合った”練習メニュー”を、最小の努力で最大の結果が出る形に整えていきましょう。
