「御社の課題は?」は、三流の質問 初回訪問で選ばれる営業になるための「過去」を掘る技術

「また会いたいと思われる営業は、6人に1人しかいない」

これはつまり、あなたの会社に訪れる営業担当者のうち、実に6人中5人は「もう会わなくてもいい」「時間の無駄だった」と思われている、ということ。

経営者であるあなたは、自社の営業担当者が、この「5人」の方に入ってしまっていないか、胸を張って「違う」と言い切れるでしょうか。

この記事は、「普通の営業」から抜け出し、お客様が「この人は違う」と唸るような、圧倒的に質の高い初回訪問を実現したいと願う、すべての経営者・営業マネージャーのために書きました。

この記事を読めば、なぜ多くの営業が初回訪問で空振りするのか、その根本原因が分かります。そして、ありきたりなヒアリングを卒業し、お客様の深層心理にまで到達する、極めて具体的で強力な質問の技術が手に入ります。

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目次

なぜ、あなたのヒアリングは“上滑り”するのか?

初回訪問の典型的な光景を思い浮かべてみてください。 一生懸命に準備をしてきた営業担当者が、少し緊張した面持ちで切り出します。

「本日はありがとうございます。まず、御社の“課題”についてお聞かせいただけますでしょうか?」

丁寧で、一見すると何の問題もない質問です。

しかし、この瞬間、お客様の頭の中では「ああ、またこのパターンか…」という、うんざりした心の声が響いています。そして、当たり障りのない、何度も繰り返してきたであろう模範解答が返ってきます。

「そうですねぇ、まあ色々ありますが、やはりコスト削減とか、業務効率化とか、そのあたりでしょうかね…」

この「ありきたりな質問」と「ありきたりな答え」の、魂のこもらないキャッチボール。これこそが、貴重な商談の機会をドブに捨てている元凶に他なりません。

なぜ、こんなことが起こるのでしょうか。それは、多くの営業が、お客様の「認識」という、非常に曖昧で、ブレやすいものを聞きに行っているからです。

「何を課題だと“思って”いますか?」という質問は、相手の主観や気分、その場の空気に大きく左右されます。これでは、本当の課題にたどり着けるはずがありません。これでは、売上も受注も、夢のまた夢です。

“認識”を聞くな “行動の歴史”を尋ねよ

では、「6人に1人」の営業は、何を聞いているのでしょうか。 彼らは、お客様の曖昧な「認識」には目もくれません。

その代わりに、「その課題に対して、これまでどんなアクション(行動)を、どういう理由(Why)で意思決定してきたのか」という、揺るぎない「事実(ファクト)」を掘り下げていくのです。

なぜなら、行動の歴史こそが、その課題の「本当の重要度」を何よりも雄弁に物語るからです。 口では「業務が非効率で大変だ」と言いながら、過去5年間、何の対策も打ってこなかったのであれば、それは経営にとって致命的な課題ではないのかもしれません。

逆に、これまでいくつものツールを導入し、プロジェクトチームを立ち上げ、それでもなお解決しないのであれば、それは会社にとって、絶対に解決しなければならない、本物の重要課題なのです。

お客様の「過去の意思決定の歴史」を紐解くこと。それこそが、初回訪問の質を劇的に引き上げ、その他大勢から一瞬で抜け出すための、唯一の道筋なのです。

【深掘り術①】“やったこと”だけでなく“やらなかったこと”を聞け

まずは、過去に実行した施策と同時に、「検討したけど、最終的にやらなかった他の選択肢(ボツ案)」をセットで聞き出しましょう。「課題」ではなく「過去のアクション」に焦点を当てる第一歩は、こう切り出します。

「『業務の効率化』というテーマで、これまで会社として取り組んでこられた具体的なアクションについて、差し支えない範囲で教えていただけますでしょうか?」

すると、「Aというサービスを導入しました」「Bというプロジェクトを立ち上げました」といった事実が出てきます。しかし、ここで満足してはいけません。本当に知りたいのは、その裏側です。

「なるほど、Aというサービスを導入されたのですね。ちなみに、そのご決断をされる際に、他に候補として検討されたサービスや選択肢はございましたか?」

この質問が、極めて重要です。なぜなら、歴史の勝者(採用された施策)だけを見ても、その本質は分からないからです。歴史の敗者(ボツ案)がなぜ敗れたのかを知ることで、初めてその会社の「物事の選び方」が立体的に見えてくるのです。

「実はCというサービスも検討したんですが、あれは現場の人間には少し難しすぎると判断しまして…」 この一言を引き出せれば、どうでしょうか。

「この会社は、機能の豊富さよりも、現場での使いやすさを重視する傾向がある」という、極めて重要な仮説が手に入ります。これは、次の提案の強力な武器になるはずです。

「選ばれなかった選択肢」とその理由を知ることで、その会社の「意思決定の基準」や「隠れた価値観」が、手に取るように見えてきます。

【深掘り術②】“理由”を直接聞かず、“プロセス”から炙り出せ

ボツ案まで聞き出せたら、次はいよいよ意思決定の核心に迫ります。しかし、ここでも「なぜAを選んだのですか?」と直接的に聞くのは悪手です。目の前の担当者がその場にいなかった可能性が高いですし、「なんでそんなことまで…」と警戒されるのがオチです。

目の前の担当者が意思決定者でなくても答えられる「事実」は存在します。「社内での議論」や「現場への説明のされ方」といった客観的なプロセスを聞きましょう。

「なぜですか?」という直接的な質問は、相手を困らせ、警戒させてしまいます。しかし、客観的な事実である「プロセス」についてなら、比較的答えやすい場合があります。

ここでも、聞くべきは「事実」です。

「最終的にAサービスに決まる際には、社内でどのような議論があったのでしょうか? 例えば、どんな意見が出た、などお聞きになっていますか?」

もし担当者がその場にいなくても、「〇〇部長が、セキュリティ面を特に重視していた、とは聞いています」といった伝聞情報が出てくるかもしれません。これまた、貴重な判断基準のヒントです。

さらに、こんな聞き方も有効です。 「その施策がスタートする時、現場の皆様には、どのようなメッセージでご説明があったのでしょうか?」 これなら、意思決定プロセスに全く関わっていない担当者でも、何かしら答えられる可能性があります。

「『これでみんなの残業が減るぞ!』という触れ込みでしたね」といった答えからでさえ、会社がその施索に何を期待していたのか、という「事実」を垣間見ることができるのです。

【最終ステップ】なぜ、それは“うまくいかなかった”のか?

これらの事実を積み重ねた上で、最後の、そして最も重要な質問に移ります。 そもそも、今日この初回訪問が実現しているということは、過去の素晴らしいアクションをもってしても、まだ何かが満たされていない、ということの証明です。

そこで、過去の施策が、なぜ期待された成果を上げられなかったのか、その要因について仮説をぶつけ、共に考えます。この「失敗の要因分析」こそが、次に打つべき手の精度を決め、あなたの提案に絶対的な説得力を持たせるからです。

「様々なご検討を重ねて実行された、その素晴らしい取り組みについてお聞かせいただき、ありがとうございます。それでもなお、本日こうしてお時間をいただいているということは、まだ何か解決すべき点が残っている、ということかと拝察いたします。

仮に、その取り組みが期待されていた100点の成果を出せなかったとすると、何が一番のボトルネックになっていたとお考えでしょうか?」

過去の取り組みへの敬意を示しつつ、核心に迫る。この質問にお客様が真剣に考え始めた時、あなたはもはや「6人中5人」のその他大勢ではありません。お客様の過去を深く理解し、未来を共に創るパートナーへの第一歩を、力強く踏み出しているのです。

読者の次のアクション:まずは「課題は何ですか?」を封印する勇気を

初回訪問の質を上げるための、新しい視点。ヒントは掴めたでしょうか。 知識として知るだけでは、何も変わりません。大切なのは、明日からの行動です。

もし、あなたが本気で「6人に1人」の営業を目指すのであれば、まずは一つの、しかし極めて重要なことから始めてみてください。

次の初回訪問で、「御社の課題は何ですか?」という、あの“ありきたりな質問”を、完全に封印してみるのです。そして、その代わりに、こう切り出してみてください。

「これまで、御社が最も力を入れてこられた取り組みについて、その歴史を教えていただけますか?」

この、たった一つの質問の転換が、商談の質を、そしてお客様のあなたへの眼差しを、劇的に変えることになるはずです。

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あなたの会社の営業は、いつまでお客様の言葉の表面をなぞるだけの、浅いヒアリングを続けますか?

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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