法人営業で「反対者」を説得してはいけない心理学的理由

「賛同者はいるのに、社内に反対者がいて進まない…」

「反対している人を説得しようとしたら、余計に関係が悪化した…」

「なぜか一部の人だけが、提案に心よく思っていない…」

法人営業の現場で、こんな状況に直面したことはありませんか?提案内容は良いのに、お客様の社内に反対者がいて、なかなか導入が決まらない。その反対者を説得しようとしても、むしろ状況が悪化してしまう…。

この記事は、そんな社内反対者への対応に悩む営業担当者、そして営業組織の受注率を高めたい経営者やマネジャーの方々のために書きました。

この記事を読めば、なぜ反対者を説得することが危険なのか、その心理学的な理由が分かります。そして、反対者を味方に変え、確実に受注につなげる具体的な方法が手に入ります。

目次

法人営業でよくある「反対者」問題

法人営業をやっていると、こんな状況によく遭遇します。

ある人は賛同してくれる。その提案に対して、「導入したい」と言ってくれる。一方で、社内に反対者、あるいは心よく思っていない人がいる。

さて、どういうふうにしたら良いでしょうか?というのが、今日のテーマです。

結論:反対者を「説得する」のはかなりリスキー

まず、結論から言います。

反対者を説得するという行為は、もうかなりリスキーである。

これが、今日最もお伝えしたいことなんですけれども、なぜリスキーなのかということを、今日は紐解いてお話をしたいと思います。

「認知的不協和」という心の動き

まず、認知的不協和という、人の心の動きについて説明します。

これは心理学の用語で、人は、矛盾するモヤモヤした思いがあった時に、このモヤモヤという状況を抱えるわけなんですけど、これを認知的不協和というふうに言います。

例:提案に対するモヤモヤ

例えば、あるベンダーから提案を受けている。別に悪くないと思うんだけど、でもこれを導入したいと思わない自分がいる。

モヤモヤしますよね。

例えば、提案において、お客様の組織の中に、こういう感じのモヤモヤを抱えた方がいらっしゃるとします。

「自分自身は、そんな悪くないと思う。でも、なんか導入したくない」「導入するのをためらう自分がいる」

これは、営業の提案する側からすると、ぜひともこの提案の魅力を伝えて、ぜひやる気になってもらいたい、となりがちです。

認知的不協和を解消する人間の心理

この認知的不協和というのは、どういうような作用、心の動きになりやすいかというと、その認知的不協和っていうのを抱え続けた状態っていうのが、人にとっては非常に重いわけです。

「提案は悪くないんだけど、でも導入どうなんだろう」

このモヤモヤをずーっと抱えた状態っていうのは、人にとって不快なわけです。

ということで、スッキリしたいですよね。

人は「自分を正当化する」形でスッキリする

このスッキリする時に、人はどういうふうになりやすいかというと、ある種、自分を正当化するような形でスッキリしやすいという動きがあります。

さて、自分を正当化するってどういうことかなんですけれども、あるベンダーから提案を受けていて、即やろうとなってないということは、迷っているとか、反対していると。反対者の心理ってそんな感じですよね。

でそうなった時、自分を正当化するっていうのは、要するに、そのベンダーは「やれ」と言ってるらしいが、自分はなんかそんなに素直に賛同できないな、というふうになると、ある意味、対立しているわけじゃないですか。

そのために自分を正当化させるということは、「このベンダーは、うちの会社のことをよくわかってないだろう」。これが、一番簡単な落とし所のつけ方なんですよね。

反対者が最も楽に選ぶ選択肢

となると、その反対者の人の心としては、「なんか、やれって言ってきたらしいけど、なんか、うちのこと、よくわかってないじゃん」というふうに片をつける方が、最も楽で安全なわけです。

この楽で安全な選択肢が、反対者の目の前に残ったままで、むやみやたらに説得しに行っても、撃沈して終わってしまうということです。

解決策:認知的不協和の「構造」を変える

では、どうしたら良いのかという話です。

まず、この認知的不協和の構造を変えていきたいんですよね。

となると、まず、ベンダーの提案がどうなのかというふうに入ると、それはさっきのモヤモヤの解消の構造で行きやすいので、一旦それを脇に置いておく

まず、その反対者の方がどういうことを考えているのか、出発点として立ち戻る必要があるんですよね。

2つのケース:対案がある場合、ない場合

ここで、反対者の方に、対案(要するに別の案)があるのかないのかによって、ちょっと場合が分かれます。

ケース1:対案がない場合

まず、ない場合からいきましょう。

ない場合っていうのは、結局のところ、そんなに大した別のアイデアがあるわけじゃないんだけれども、なんとなく、このまま進むのが嫌だ、こういう感じですよね。

解決策:じっくり耳を傾け、「理解者」になる

ですから、まず、そのモヤモヤの中にある、なんとなく抱えているものということに、じっくりと耳を傾ける必要があります。

で、目の前にいるベンダーというのは、何か自社に対して提案しに来たベンダーだという立場ではなく、何か自分に対する理解者が目の前にいるという構造になっていただくわけですね。

自分に対する理解者が目の前にいるという構造にするわけです。

さっきの認知的不協和の構造を、ちょっと違う構造に変えるということですね。

目の前に理解者がいる。で、目の前に理解者がいるというのがあったら、理解者がいて、そして自分の状態があったら、「なんか、その理解者の人に対して、嫌な思いをさせたくないな」と。

そしたら、「この人に」気持ちよくまで言ったら言い過ぎですけれども、「嫌な思いをさせない」という感じで言うと、「この人が何か提案してくるらしいんだけれども、別に悪くなければ、自分も賛同しようか」と。

まず、対案がないケースは、じっくり耳を傾けるということで、理解者になるというポジションを取るわけですね。

ケース2:対案がある場合

次に、対案を、この反対者の方が持っているケースです。

ちょっと、難易度が若干高いです。というのが、別の案があるわけですからね。

ステップ1:対案が何なのかを聞く

そしたら、まず、その別の案が何なのかということを聞くわけですね。

ここは、さっきの対案がないケースと同様です。

ステップ2:当社の提案の方が「楽で安全」だと示す

次に、最終的な落とし所として、当社の提案でも、その反対者の方にとって、やりたいことが実現ができるというポイントを満たしていく必要があります。

反対者の方があらかじめ持っていた対案よりも、当社の提案の方が楽で安全だというところまで持っていかなくちゃいけないわけですね。

ステップ3:フィードバックをもらい、素早く改善する

となると、その反対者の方に対して、当社の提案を提示した後に、フィードバックをもらうということが必要になります。

フィードバックをもらうというのは、今の対案よりももっと上回ったクオリティの提案にする必要がありますからね。

そこでフィードバックをもらって、フィードバックをしてよかったなと思っていただけるような展開に持っていくわけですね。

それは、一言で言うと、素早い改善ということになります。

ですから、その反対者の方に、当社の提案に対してフィードバックをもらい、そこに対して鮮やかで素早い改善があれば、「なんか、こっちの方に期待をかけた方が、自分のやりたいことができるんじゃないか」と、こういうふうに思っていただく展開を狙っていくということですね。

まとめ:説得は危険、理解者になることが鍵

ということで、対案がある方が、ちょっと難易度高いですけれども、反対者の方が対案を持っていらっしゃらない場合、持つ場合、ということで場合分けをしました。

いずれにしても、繰り返しになりますが、説得しに行くのはリスキーです。

目の前の人物が、何かいきなり違うことを言ってきたとか、なんか自分が素直にイエスと言えないことを強引にやらせてきた、となったら、「なんか、この会社は、うちのことわかってないな」っていうふうに片をつけるのが、最も楽で安全なわけです。

ですから、この最も楽で安全の選択肢に行かないようにしましょうということです。

そのためには、いきなり説得しに行くのは危険ですよ、というのが今日のお話でありました。

実践のための3つのステップ

ここまでの話をまとめると、反対者を味方に変えるためのステップは、以下の3つになります。

ステップ1:まず「理解者」になる

提案の話をする前に、まず反対者の方の話をじっくり聞きます。

  • 「なぜ、反対されているんですか?」
  • 「どんなところが気になっていますか?」
  • 「何か懸念されていることはありますか?」

このように、相手の気持ちに寄り添い、理解者としてのポジションを確立します。

ステップ2:対案があるか確認し、対応を変える

反対者に対案があるかどうかを確認します。

対案がない場合: 理解者としての立場を維持し、相手のモヤモヤに寄り添い続けます。

対案がある場合: その対案の内容を詳しく聞き、「それも良いですね」と一旦受け止めた上で、当社の提案でも同じことが実現できることを示します。

ステップ3:フィードバックをもらい、素早く改善する(対案がある場合)

対案がある場合は、当社の提案に対してフィードバックをもらいます。

そして、そのフィードバックに対して、24時間以内に改善案を提示します。

この「素早い改善」により、「この会社に任せた方が、自分のやりたいことができそうだ」という信頼を勝ち取ります。

まずは「なぜ反対されているのか」を聞いてみよう

この記事を読んで、何か気づきを得られたでしょうか?

法人営業で反対者に直面したとき、説得しようとするのは逆効果です。むしろ、理解者になり、相手の認知的不協和の構造を変えることが重要なのです。

とはいえ、いきなり全てを完璧にやるのは難しいかもしれません。でしたら、まずは小さな一歩から始めてみませんか?

次に反対者に会ったら、提案の話をする前に、「なぜ反対されているんですか?」と、聞いてみてください。

そして、相手の話をじっくり聞く。たったこれだけで、相手の態度が変わり始めます。説得しようとしていた時とは全く違う反応が返ってきます。そして、受注への道が開けていくのです。

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トレテク代表 久保埜 実(くぼの みのる)
セールスパーソン戦力化コンサルタント
【著者プロフィール】

医療系企業の営業職として従事しながら、“セールスパーソン戦力化コンサルタント”として、東京都八王子市と日野市を中心に事業を展開。
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