日本企業への営業で決裁者だけを追わない|実質的なキーマンを見つける4つの視点

「決裁者に会えれば商談は動く」と考えて、役職の高い人だけを追っていないでしょうか。BtoBの意思決定では、肩書き上の決裁者と、実際に採用・導入へ強い影響を与える人が一致しないことがあります。
この記事では、私自身の医薬品営業での経験も交えながら、案件ごとの意思決定構造を読み解き、実質的なキーマンを見つける4つの視点と、受注後まで含めた「答え合わせ」の方法を解説します。
肩書きではなく意思決定構造を見る視点
営業でよくあるのが、「部長が決裁者だから、部長に会えれば前に進む」という考え方です。もちろん最終承認者を把握することは重要です。ただし、最終的に判を押す人と、採用の方向性を実質的に決めている人は、同じとは限りません。
案件によっては、現場で実際に使う人の評価が強く効くこともあれば、専門知識を持つ人の意見が決定打になることもあります。さらに、購買や財務など、予算・調達の観点から可否を左右する部門が入る場合もあります。
ここがポイント「誰が決裁者か」だけではなく、「誰の意見が、どの段階で、何に対して強く効くのか」まで分けて考えると、商談の見え方が変わります。
実質的なキーマンを探す4つの視点
私は、意思決定に関わる人物を考えるとき、少なくとも次の4つの視点に分けて整理すると分かりやすいと考えています。
- 現場・利用の視点:実際に製品やサービスを使い、使い勝手や実務上の価値を評価する人
- 専門性・影響力の視点:特定領域に詳しく、周囲が判断を頼る人
- 調達・予算の視点:価格、契約、予算、購買条件を確認する部門や担当者
- 最終承認・経営の視点:組織全体の方針や投資判断から最終的に採否を決める人
大切なのは、最初から一人に決めつけないことです。案件ごとに「この4つを誰が担っているか」を仮説として置き、商談の中で少しずつ更新していきます。
医薬品採用に見る「決裁者≠実質決定者」
医薬品の採用では、ある診療科の教授や部長が採用を決める可能性は大いにあります。しかし、実際にはそれだけではありません。
若手医師や、特定疾患のエキスパートが実質的に強い影響力を持っていることがあります。疾患ごとにキーマンが分かれていて、教授や部長は各担当者の意見を踏まえて最終承認を行うだけ、というケースもあります。
さらに、採用に関わるのは該当診療科の中だけとは限りません。関係する別の診療科、検査部や輸血部などの関連部門、用度係や購買といった調達部門が鍵を握ることもあります。
製品や医療機器の収益性、病院経営への影響が大きい場合には、病院長、病院長補佐、副院長などの経営層が導入に強い関心を持ち、トップダウンで方針が決まることもあります。
病院ごとに構造は異なります。だからこそ、ターゲットとなる診療科へ注力しつつも、「この案件には別の意思決定ルートがないか」という視点を持ち続ける必要があります。
社内合意の流れを質問と資料から読む方法
キーマンを見つけるには、人だけを見るのではなく、社内でどのように検討が進むかを見ることも有効です。社内検討用の資料が作られる案件では、そこに「何を比較しているのか」「誰の懸念を解消する必要があるのか」「どの条件が合意事項になっているのか」が表れます。
もちろん、社内資料は機密情報を含むことがあるため、営業側が当然のように見せてもらえるものではありません。商談中は、資料そのものを求めるよりも、次のような質問から意思決定の流れを確認します。
- 「最終的な承認の前に、どなたの意見が重要になりますか?」
- 「導入に慎重な意見が出るとすれば、どの部署からでしょうか?」
- 「社内では、どのような観点で比較・検討されますか?」
- 「検討内容は、どのような資料や会議で整理されますか?」
質問の目的は、決裁者の名前を聞き出すことではありません。意思決定に関わる人と論点を整理し、自社の提案に足りない材料を見つけることです。
受注後の「答え合わせ」を次の案件へ残す習慣
営業力を高めるうえで、私が特に重要だと考えるのが受注後の答え合わせです。商談中は見えなかった社内の動きも、採用や発注が決まった後なら確認できることがあります。
たとえば、次のように聞くことができます。
確認の言い方「今回のご期待にしっかり応えるためにも、差し障りのない範囲で、社内ではどのような点を重視して検討されたのか教えていただけますか?」
もし共有可能な社内資料があれば、相手の許可を得たうえで見せてもらう方法もあります。ただし、機密資料の提供を求めたり、開示を前提に話を進めたりしてはいけません。資料が難しければ、検討の流れや重視されたポイントを口頭で聞くだけでも十分です。
一つの案件で得た気づきを、「この業界では誰が関わりやすいか」「どの論点で止まりやすいか」「どの段階で誰の意見が強くなるか」という形で残しておく。これを積み重ねると、次の案件で立てる仮説の精度が上がっていきます。

次の商談で意思決定マップを1枚作る
次の案件では、商談前に「現場・利用」「専門性・影響力」「調達・予算」「最終承認・経営」の4つを書き出し、それぞれに誰が当てはまりそうかを仮置きしてみてください。空欄があれば、そこが次に確認すべきポイントです。
決裁者に会うこと自体が目的ではありません。お客様の組織の中で、意思決定がどのように進むのかを理解し、その流れに必要な情報を届けること。それが、複数の関係者が関わるBtoB営業を前に進める鍵になります。
「決裁者には会えているのに商談が進まない」「誰に、どの順番で提案すべきか整理できていない」といったお悩みがあれば、ぜひトレテクにご相談ください。案件ごとの意思決定構造を一緒に整理し、次の商談で確認すべきポイントと、提案を前に進める具体策を考えます。
